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第14話 side ロン

「ふぉふぉふぉ、あそこに見えるチェリーボーイの下に人間どもの欲望をみたす屋敷があるのじゃな」

「あぁ、聞いた話では一本桜の木の近くに娼館しょうかんがある。それとタンちゃん、チェリーブロッサムな」


 オレはタンヤオの発言を訂正しつつ東へ進み、娼館へと歩いていった。


「主よ。あそこの尿管にょうかんで、どのような女子おなごを助ければいいのじゃ?」

「嫌がっている子だな。生活のために働いているのは無理に助けなくていい」

「ほう」

「建物の中に入ったら、女の子の希望を確認して指示を出すから、逆らうような従業員がいたら眠らせてくれ」

「わかったぞよ。魂を抜き取り永眠させればいいんじゃな」


 オレは娼館の近くで馬車にかれそうだった猫を拾い上げ、タンヤオに渡す。すると猫はタンヤオに抱かれ、ミイラになっていった。


「なにしてくれてんの?」

「ん? 見ての通り永眠させたのじゃ」

「はぁ。オレの指示があるまで眠らせるな」

「いちいち面倒くさいのう。勝手に魂を抜き取ってもいいじゃろ」


 娼館の入り口には屈強くっきょうな男が三人いた。そのうちの一人に声をかけられる。


「おっ、お客さんかい?」

「まぁ、そんなところだ」

「そうか、じゃあ受付に行って、帳簿に書いてくれ」

「わかった」


 声をかけてきた男が従業員用のピザを頼んでいるのが聞こえてくると、別の男から悲鳴があがる。


「うぁぁぁぁぁぁ」


 その男はミイラになっていく。それを見て他の男達はタンヤオを恐れ、立ちすくんでいた。


「バカやろう! 指示があるまでやるなって言っただろ」

「主。わらわは野郎ではない。野郎はこいつらじゃ」


 オレはタンヤオに何を言っても無駄だと諦めて、娼館に入り、受付へと向かった。後ろにはタンヤオがついてくる。


「い、いらっしゃいませ。お客様、当館のご利用は初めてですか?」

「あぁ、そうだ」

「では、こちらの受付簿に必要事項を記入してください」


(こんな感じかな)


<氏名:ツモ  出身地:天界   職業:無職>

<氏名:ピンフ 出身地:海底神殿 職業:スナイパー>


「お客様、じょうがいる部屋に御案内いたしますので、ついてきてください」

(いいのか? あれで? どうみてもウソだろ)


 オレは女を吟味ぎんみする部屋に通され、そこにいたヤツ全員を脅す。


「おい。てめえら、よく聞け。こいつは魔族だ。殺されたくなかったら、オレの指示に従いな」

「ふぉふぉふぉ、全員の魂を貰い受けるぞよ」


「なんだお前?」


 そう言ってタンヤオに近づいた従業員はもちろんミイラになる。それを見て、悲鳴をあげる者、腰を抜かす者など、明らかにタンヤオに対して怯えていた。


「じゃあ、女ども全員一列に並べ。並ばないヤツはわかっているだろうな」


 オレがそう言うと、あわてて女どもは動き、すぐに一列に並ぶ。


「で、なんでお前が先頭なんだ?」

「ん? わらわは女じゃ。並べと言ったのは主じゃろ」


 オレはタンヤオを蹴り飛ばして、女を一人ずつ何でここで働いているのかを聞いていく。そして、娼館から抜け出したいヤツと働きたいヤツにグループ分けをしていった。

 もう少しで女全員から希望を聴き終わるというところでタンヤオに声をかけられた。


「主。スライムはどうするのじゃ?」

「スライム?」

「あっちの池のところにいる」

(たぶん池じゃなくて風呂だな)


 そんなこともありつつ、聴き取りを終え、ここにいる者達に告げる。


「じゃ、オレが指示するまで全員待機な」


 従業員も含め、娼館にいる全員をこの場で待たせ、その後タンヤオにスライムのいる所まで連れていってもらった。

 すると風呂場で紺色の髪の少年に会い、オレは聞く。


「お前、スライムか?」

「そうです。なにか?」

「何で、こんなところにいるんだ?」

「怖いおじさんに火であぶると脅され、働いているんです」


 オレがスライムと話していると、タンヤオが横から入ってきた。


「具体的に何をしているのじゃ?」

「この風呂を掃除しています」

「そうじ?」

「はい。若い人間が入るとシンチン代謝たいしゃが活発なせいなのか、すぐに汚れるんです」

「ほほう、ち〇ち〇体操(たいそう)が活発とな。汚れはどこじゃ?」

「ここら辺です」


 スライムは汚れたところに触れ、汚れを吸収していく。

(スゲーな、こいつ)


 オレがスライムの働きぶりを感心して見ていると。タンヤオが言ってくる。


「主。スライムを王のところまで連れていってはどうじゃ?」

「おっ! それいいじゃん!! こいつ使えそうだしな」


 タンヤオとスライムと共に嬢のいる部屋に戻る。そしてオレは待機させているヤツのうち、ここから抜け出したいヤツを解放した。


「じゃあ、お前らは帰っていいぞ。残りのヤツはオレの話をよーく聞け」


 嬢達には嫌がる子がいたら逃がしてやるようにしろと言い、屈強な男どもおよび従業員には、街にいる女をさらうなと脅した。


「じゃ、スライムいくぞ!」

「えっ」

「ここで怯えながら働かなくていいんだ。ついてくるだろ?」

「えーっと」


 スライムが悩んでいるところにタンヤオはこう告げた。


「わらわは上位魔族、五天王のタンヤオじゃ。主の命令に従うのじゃ!!」

「はっ!! はい!!」


 娼館をあとにする。こうしてオレ達に新しい仲間が加わったのであった。


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