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空を飛びたいペンギンくん

作者: 名録史郎


 あるところにペンギンがいました。


 泳ぎが得意な、普通のペンギンです。


 ただ、いつも上ばかり見上げて他の鳥ばかりみています。


「僕も鳥らしいんだけど、空飛べないかなぁ」


 ペンギンは、空を飛ぶことを夢見ていました。

 

 ペンギンは、いいことを思いつきました。


「そうだ。空とぶ鳥さんに聞いてみよう」


 ペンギンは、他の鳥さんに聞いてみることにしました。


 山のてっぺんまで登ると、岩場でやすんでいた鷲に話しかけました。


「ねぇねぇ、鷲さん」


「ん? なんだ?」


「空ってどうやって飛べばいいのかな?」


 鷲は、わらいながら言いました。


「ああ、そんなの簡単さ。頑張って羽ばたけばいいのさ」


「そうなんだね。やってみるね」


 ペンギンは、さっそく羽ばたいてみました。


 パタパタパタパタ。


 ですが、いっこうに飛ぶことはできません。


 ペンギンは、もう一度鷲に聞きます。


「これから、どうすればいいのかな?」


「そんなもん、空気を掴めるようになるまで、羽ばたけばいいのさ」


 鷲さんは、そういうと笑いながら、どこかに行ってしまいました。


 ペンギンは、それからしばらく羽ばたきました。


「水なら、ちゃんと掴めるんだけどなぁ」


 羽ばたいても羽ばたいても、全然飛べるようにならなかったペンギンは、しょんぼりしました。


 今度はちょうど風に乗って飛んできた鷹さんに聞いてみることにしました。


「ねぇねぇ、鷹さん、空を飛ぶにはどうしたらいいのかな?」


 鷹はクスクス笑いながら言いました。


「そんなもん。風の流れを読めばいいのさ」


「そうなんだね。やってみるね」


 ペンギンは、じっと空中を眺めました。


「鷹さん、これからどうすればいいのかな?」


「そんなもん、流れが見えるようになるまで、見ればいいのさ」


 鷹さんは、そういうと笑いながらどこかに行ってしまいました。


 ペンギンは、それからしばらくじっと空中を眺めました。


 ですが、いっこうに風を読めるようにはなりません。


「水の流れなら読めるんだけどなぁ」


 ペンギンは、しょんぼりしょんぼりしました。


 テクテク、海岸の自分の家に帰ると、カモメが自分の家の前にいました。


「やあ、ペンギンくん。ちょっといいかな?」


「なんだい、カモメくん?」


「君は、海の中を自在に泳げるだろう?」


「そうだね」


「僕も君ぐらいの速さで泳ぎたいから、教えて欲しいんだ」


「うーん」


 水の中での翼の動かし方、水の流れの見方、いつも自然にしているので、口で説明できません。


「ごめんね。いつも自然に泳いでるから、うまく教えられないや」


「そっか」


 カモメは、残念そうです。

 今度は、ペンギンが聞きました。


「実は、僕は空が飛びたいんだ。なにかヒント教えてくれない」


「うーん」


 カモメも真剣に考えてくれます。


「僕も自然に飛んでるから、教えられないや」


「そうなんだね」


 ペンギンはガッカリしました。


 そんなペンギンにカモメは言いました。


「でも、僕たち似たもの同士だね。お互い頑張ろうね」


「うん!」


 カモメに元気をもらったペンギンは、また空を飛ぶのを頑張ることにしました。


 そして、ペンギンは、くる日も、くる日も空を飛ぶことを考え続けました。


 そして、ある日のことです。


「そうだぁ!思いついた!」


 ペンギンは、大きな声を上げました。

 それからブツブツと言い始めます。


 「水を電気分解し、水素と酸素に分離して、水素をボンベに詰めて、それに火をつけ……」


 道具と材料を準備して、作り始めます。


 トンテンカン、トンテンカン。


 そして、ついにペンギンは、ロケットエンジンを作りました。


「できたぞ!」


 さっそく、ロケットエンジンを背負って、飛び始めます。


 ズゴゴゴゴゴゴ。


 なんと、ペンギンは、空を飛ぶのに成功しました。


 ロケットエンジンのおかげでグングン飛んでいきます。羽ばたいてもいませんし、空気の流れも読めませんが、しっかり空を飛んでいます。


「わぁ! これが空を飛ぶ感じかぁ」


 ペンギンは、感動で胸がいっぱいになりました。


 ふと見ると、以前飛び方を教えてくれた鷲さんがいました。さっそくペンギンは、声をかけました。


「やあ、鷲さん、僕も飛べるようになったよ」


「ペンギン!?」


 こんなところにペンギンがいるとは思っていない鷲は、ものすごく驚きました。


「どうだい。このロケットエンジン。水素を爆発させた推進力で……」


「訳わからないこというな! そんなの空の飛び方じゃない!」


 なぜか怒り出した鷲さんに翼で叩かれました。


 バシッ!


 鷲さんは、いってしまいました。


「いたた。なんなんだよ。どうして怒ったんだろう?」


 ペンギンは、嬉しさを報告しただけでしたのに、なぜ鷲が怒ったのかわかりません。


 今度は、鷹さんが飛んでいました。

 同じように、ペンギンは、声をかけました。


「やあ、鷹さん、僕も空飛べるようになったんだ」


「ペンギン!?」


 鷹は、鷲と同じように驚きました。


「どうかっこいいだろう?」


 ペンギンは、自慢のロケットエンジンを鷹に見せました。


「そんなもの使って飛ぶなんて、俺はみとめない」


 鷹は、鋭い嘴で、ロケットエンジンを攻撃してきました。


 バスン!


 ロケットエンジンは、大きな音をたてると煙を上げました。


「わぁああああ」


 推進力を失ったペンギンは、墜落し始めました。


「パ、パラシュートモードオン」


 ペンギンは、慌ててパラシュートを開くと、自分の家の近くに不時着しました。


「あたたた」


 ペンギンは、起き上がりました。


「鷲さんも、鷹さんも、なんで怒ったんだろう?」


 ペンギンは、一緒に飛びたかっただけなのに、散々文句を言われました。


「もしかして、鷲さんも鷹さんも僕なんかに空を飛んでほしくなかったのかな?」


 そう思い至ったペンギンの目から涙が一つこぼれました。

 

 しばらくぼんやりしていると、空からカモメくんが飛んできました。


「おーい。ペンギンくん!」


「ああ、カモメくん。どうしたんだい?」


「これを見てくれよ」


 カモメくんは、なにやら羽根のついた回転する道具をペンギンに見せました。


「これは?」


「スクリュープロペラって言うんだ。これを回転させて、水の中を前に進むんだよ」


「わぁ、スゴい!」


 ペンギンは、カモメの発明を自分のことのように喜びます


「えっへへ、いいでしょ」


「あっ、ちょっと待ってて」


 ペンギンは、水を電気分解して余っていた酸素ボンベをカモメくんにあげました。


「これは?」


「これを口につけてると、長い間水の中に潜っていられるんだぁ」


「わぁ、ありがとう。ペンギンくんの背中の道具もかっこいいね。僕の作ったプロペラ付けてあげるよ」


「わあ、ありがとう」


 ペンギンとカモメは、お互い作った道具を交換して、パワーアップさせました。


 その後、二人は仲良く、空を飛んだり、海を泳いだりして遊びましたとさ。


 おしまい。




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