恋の住み処
やがてくる、あの恐怖におののいて、私は今日も一人、この誰も来ないであろう一室に静かに身を潜める。
遠くの方からはサイレン。
窓の外は闇。
ゆっくりではあるがそのサイレンが、どうも近づいてきているように感じる。
私は気づかれないように足元にあった鉄パイプを握り、最悪の事態に備えた。
これからくる明日という日が、遠い夢のように感じる。早く朝になってほしい。
と、そこに物音。
階段をゆっくりと何かが上がってくる。
靴の音。軋む床。
私は身を縮込ませて、神に祈った。
一方で神など信じず、自分の身は自分で守ろうとする強い自分もこの時感じた。
足音が止まった。
見つかってしまったのか。
私は鉄パイプをギュッと握り直し、その時を待つ。
次の瞬間、大きな音がした。
一瞬何かが光ったようにも見えた。
何かがドアを貫通し、また部屋には静寂が戻った。
私は腹部に熱を感じた。
異変。
そこに手を当てると生温い何かが流れ出ている。
わからない。
わからない。
そのまま目の前が真っ白になり、力が抜け私は倒れた。
とうとう恐れていた、最悪に出会ってしまったようだ。
【今回のお題】
苦しみのアパート
最後までお読み頂けた方、
今後の行方が気になる方は、
評価、ブックマークをお願いいたします!
また明日も投稿します!