追放&復讐編Story7:悪夢
わたしは夢を見た。十数年前のあの忌々しい過去の・・・。
私は、魔導学校に帰るといつものように父から暴力を振るわれた。
理由は様々だが、今回は運悪く学校の筆記テストで満点をとれなかったからだ。
「この出来損ないの娘が!!!」
「やめて・・・お父さん・・・もうやめてよう・・・。」
私は、父がなぜ暴力をふるうのかは何となく心当たりがある。
私の父の父・・・つまり私の祖父は、魔導学校一の大賢者だった。だが、それが息子である父にとっては重圧でしかなかった。
それに、村のみんなからの期待からくるプレッシャーや魔導学校でのいじめが重なり、父は校内でいじめの主犯格であった同級生を半殺しにしてしまった。
貴族としてではなく特待生として入学していた父は、半殺しにされた同級生の父親によって死刑囚として牢獄に入れられたが、大賢者であった祖父の働きによって何とか特別に死刑は免れて釈放されたのだが、当然村のみんなからの視線は期待の目から憎悪の目となりより彼を苦しめた。
最初こそまじめに生きようと努力した結果、幼馴染でずっと寄り添ってくれた母と結婚して私を儲けた。ここまでは、母や父から何度も自慢話で聞いてきたことだ。
だが、村人たちによる嫌がらせは日に日にひどさを増していき、さらに元々病弱だったお母さんの死が重なり、悲しみと憎しみから逃れるように酒を浴びるようになった結果、徐々に荒んだ生活を送るようになり今に至る。
「アークソォ・・・ひっく、酒が切れちまったぜ。おい!!」
「グスッ・・・なんでしょうかお父さん。」
「酒が切れた。おまえ、買ってこい!」
「・・・。」
それを差し引いても私は、もう我慢の限界だと言わんばかりに父をにらみつけた。もう、ここで半殺しにされても構わない。いや、むしろ殺されて母の後を追うとさえ思っていた。
多分、素面に戻った父も責任感から私たちの後を追うだろう。そう言った自分でも吐き気がするどす黒い期待が私を包んでいた。
「ふー・・・。わかった!今までのお詫びに後でいいものを食わせてやる。」
以外にも父の言葉から出たのは、久しぶりに聞く優しい言葉だった。
「え、ほんと!?いいの?」
「ああ、俺もちとやり過ぎたからな。」
そう言って父は、自分からポケットマネーを差し出した。普段は私が自腹で払っているので思わず飛び跳ねそうになった。
「わかりました!すぐ買ってきます!!」
私はこの後、目の前の男を父と呼ぶには忌々しくなるほどの仕打ちを受けることになる。
「買ってきました!」
「よーし!じゃあご褒美だ。」
父・・・いや、この中年オヤジはあろうことか実の娘の前で、ズボンと下着を下ろして穢れたエクスカリバーをむき出しにした。
「お、お父さん?」
「どうした?早く食え!!」
「い、いや・・・。」
「なんだと!!親の好意を無下にしやがって!!」
私は頭を両手で押さえつけられた。
「やめてお父さん!やめてエエエエエ!!!!!」
私はそこで目が覚めた。周りをゆっくりと見渡すと、高く積まれた本に埋もれた机でうたた寝していたようだ。窓からは、すでに日の光が差し込んでいて小鳥がチュンチュン鳴いていた。
「ウッ!」
その直後に吐き気がやってきて急いで近くの洗面台へ向かった。
私は、早くこの気持ち悪さをどうにかしたい思いで部屋を飛び出した。幸い、万が一のためにトイレの位置は確認済みだ。
「お、お客様?」
ボーイに話しかけられた気がしたが、応対できる余裕はなかった。
「ウウッ・・・ゲホッ!ゲッ!!ガハッ!」
まだ、何も食べてないせいか酸っぱい液体しか出なかった。
私は、あれは単なる悪夢だと言い聞かせて自分を落ち着かせた。
「あれは悪夢だ。あれは悪夢だ。あれは悪夢だ!」
「お客様、大丈夫ですか?」
ボーイに心配かけまいと口の周りを水で洗い流し、精いっぱいの笑顔を振りまいた。
「心配かけてゴメン。私はもう大丈夫よ・・・それより、秋人を起こしてきて頂戴。」
「お連れの方ですね。かしこまりました。」
ボーイはそう言うと秋人の部屋へと向かった。
父親と幼き頃のセラフィーナのその後は、追放&復讐編の後に明らかになります。