追放&復讐編Story3:決意
俺は、訳も分からず召喚された後に魔法もスキルも使えない能無しと言われてひどく落ち込んでいた。
周りには近衛兵が取り囲んでいて、俺を哀れな小動物を見るかのような目で見ていた。
「はあ、これからどうしよう。魔王を倒しても王宮を追放された身じゃ意味ないよ。」
すると、周りの近衛兵より少しばかりぎらついた装飾が多い人が話しかけてきた。
「セラフィーナさんが君を召喚したんだろ?だったら、彼女に相談すればいいじゃないか。」
「でも、彼女のいる場所がわかりませんよ。」
「彼女のいる部屋に案内してやる。恐らく、まだここを出る支度は終わっていないはずだから、そこまで案内してやる。お前らも行くぞ!」
「応!」
捨てる神あれば拾う神ありとはこのことかと俺は安堵した。何でも愚痴ってみるもんだな。
「ついたぞ。」
レッドカーペットが敷いてある長い廊下は、ろうそくの明かりがあるものの薄暗く、まるで今の自分の気持ちを表しているようだった。しばらく歩くと、木でできた縁が金色の両開きの扉があった。
「ここが、セラフィーナさんの部屋だ。覚悟はいいか?」
「ハイ。」
その意味を解っている俺は気を引き締めた。
俺に話しかけてきた近衛兵がドアを叩いた。
「誰?」
扉の向こうからくぐもった女性の涙声が聞こえてきた。
「近衛兵団団長のリエト・エウスタキオ・ベラルディーノです。」
「用がないなら帰ってよ!」
やはり、追放されたショックであれているようだ。正直、入りたくはないが帰るためだ。致し方ない。
「い、いえ。同じく追放された彼があなたに会いたいと・・・。」
「・・・入って。」
「失礼します!」
中に入ると、すでに荷物がまとめられた後であり、彼女の私物らしきものは見当たらなかった。そして、そんな部屋に大荷物の横で半泣きの彼女がうつむき加減で座っていた。
目は腫れぼったく、表情もこの世のすべての絶望を混ぜたような感じだった。
正直かける言葉が見つからない。
「ど、どうも・・・。」
先程とのあまりの変わりように、俺はそれしか言葉がでなかった。
「・・・。」
返事はなく、うるんだ空虚な瞳が俺を見つめていた。
今にも、俺と心中しそうな勢いだった。
〈やめて!そんな目で俺を見ないで!〉
「で、では我々はこの辺で・・・ご検討をお祈りしています!」
彼らは、直立で右手の甲をおでこに当てるこの国独自の者であろう敬礼をして去っていった。
二人の沈黙が部屋の空気を一層悪くした。
「・・・で、私に何の用?一緒に死にたいのなら手助けしてあげるけど・・・。」
言えるか!この状況でー!俺はおうちに帰りたいので、あなたの召喚魔法で帰らせてください・・・なんていったら確実にお土に帰らされる!!
「あー、いやそうじゃないんです。ただ、一緒に冒険の手助けをしてほしいんです!ほら、追放されたと言っても、要はこれから来ちゃいけない場所は王宮だけなんでしょう?」
セラフィーナは、表情を変えずに俺をじっと見つめた。
彼女のうるんだ瞳と、部屋のフローラルな香りが俺の心を奮い立たせた。
「・・・俺は、君がこの場所にどんな思い入れがあるかわかりません。ですが、これだけは言えます!一緒に魔王を倒して、あの皇子と副団長をギャフンと言わせてやりましょう!」
彼女は、頬を赤くして少し口角を上げて笑いながら涙をぬぐった。
「フフ、そうね。ぎゃふんと言わせましょう。ぎゃふんと!」
気が付くと俺も顔が熱くなっていた。
先程の言葉が気に入ったのか、小さな声で『ぎゃふんと』と両肘をたたんで握りこぶしを作りながら連発していた。
そのたびに、栗色の短髪がサラサラと揺れていてとても可愛かった。
俺の可愛い小動物を見る視線に気づいたセラフィーナは、慌てて手を膝の上に戻して咳ばらいすると真剣な顔で俺の本心を聞いてきた。
「でも、本当によかったの?魔力が戻れば、あなたを今すぐにでも送り返せるわよ。」
俺は、首を横に振って彼女と一緒に冒険することを改めて伝えた。
「じゃあ、これからよろしくね。私は、セラフィーナ・チェチーリア・デルヴェッキオ。セラフィーナでいいわ。」
俺は、彼女の可愛らしい笑顔に顔を赤くした。
「諸星秋人です。秋人と呼んでください!よ、よろしくお願いします!」
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