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追放&復讐編Story2:追放

俺が『ティーヌ』と唱えたにもかかわらず、水晶玉には何も表示されなかった。


 「あれ?やり方を間違えたのでしょうか。」


 「そんなはずはない。じゃあ、次は属性魔法を調べてみろ!」


 皇子の態度がだんだん高圧的になってきたな。元老院の人やメイドたちからの視線も痛い。


 俺を召喚した魔導士は、どう見てもうろたえているように見えた。嫌な予感しかしない。


 「早くしろ!」


 「は、ハイ!」


 震える手で俺は、また水晶玉に手を置いた。


 しかし、何も出ない!何も反応がない!徐々に俺の手が汗ばんできた。


 「貴様、これはどういうことだ!」


 皇子は魔導士に対して顔を真っ赤にして怒った。


 「どう・・・と言われましても。」


 皇子は口ごもる彼女に詰め寄った。


 「話が違うぞ!なぜ奴は、魔力もないスキルもない能無しで召喚されたのだ!」


 「アルド、その辺にしておけ。」


 「父上は口を挟まないでください!」


 父親がなだめるも彼は、一向に怒りが収まる気配がない。


 だが、さすがに皇帝に対する態度ではなかったので、皇子はハゲで白髭の年長の議員から注意された。


 「おやめください!目上に対するその態度、栄えあるロムリア帝国の男子であるならば、そのような態度は改めるべきですぞ!!」


 「「そうだ!マヌエル宰相のいう通りだ!!」」


 再び、謁見の間が騒がしくなったところで皇帝が手を挙げてみんなを制止させた。


 「アルドよ、もしかしたら水晶玉が壊れているのかもしれん。試しにお前がやって見せよ!」


 「・・・わかりました父上。」


 皇子はめんどくさそうに水晶玉に手をかざした。すると、見る見るうちに水晶玉の中が濁りだし、真っ赤に染まっていった。


 皇子はしたり顔で周囲に両手を広げてアピールした。


 「見ろ!皆は知っているだろうが俺は火属性の魔法使いだ。この水晶玉がちゃんと証明している!こいつが壊れているわけじゃあない。」


 皇帝は、汗を流しながら魔導士の方を見た。視線に気づいた魔導士は小さくなって震えた。


 皇子は意地の悪そうな顔でセラフィーナに再び近づいた。


 「安心しろセラフィーナ、貴様の代わりの魔導士はすでに迎え入れてある。」


 セラフィーナは、皇子を指さす方を見て驚いた。そこには、ウエーブのかかったピンクの長髪の女性がいた。


 「ま、マリアーナ副団長!」


 「そうだ。」


 「副団長?・・・てことは。」


「お前は、知らんだろうから教えてやる。彼女は、マリアーナ・ミネルヴァ・フォルトゥナータ。フォルトゥナータ子爵家の長女だ。そして先ほどから、おびえた子犬のように震えている女が騎士団長だ。上司なのにあのありさまだ・・・笑えるだろ?」


〈性格わっる!〉


 マリアーナは、妖艶な笑みで皇子にくっついた後、わざと悲しそうな顔をセラフィーナに向けた。


 彼女は、宝石をちりばめたピンクと白のドレスに肘まである長い白手袋をしており、セラフィーナに負けず劣らずの美貌を持ち合わせているが、ドレスと同じ宝石のような輝きを放つ碧眼の底には黒い感情が渦巻いているように見えた。


 「セラフィーナ団長。学生の時は、あなたにあと一歩及ばずに何度悔しい思いをしたことか・・・。ここでもそう、皇子に見初められて魔導騎士団に入ったはいいものの、あと一歩のところであなたがいっつも私の魔導騎士団長への昇格の邪魔をしたわ。」


 「・・・・。」


 そして、表情を変えて今度は片眉を吊り上げて口角を上げて歯をむき出しにしながらセラフィーナに迫った。


 「でも、それも今日で終わり!あなたはそこの薄汚い小僧と一緒に追放されるのよ!元魔導騎士団長。」


 薄汚い小僧と言われて俺はむっとした。性格ブスとはこのことを言うのかと俺は一人納得した。


 「そう言うわけだ。さあ、荷物をまとめて今すぐこの王宮から出ていけ!」


 皇子の言葉を皮切りに出ていけコールが謁見の間に響き渡った。


 中には目をつぶったり、セラフィーナや俺から目をそらして黙っている者もいた。


 どうやら俺たちの味方はここにはいないようだ。いや、恐らくまだ一人だけいる・・・一番発言権がある人が・・・・。


 「へ、陛下・・・。」


 セラフィーナは今にも泣きそうな顔をして皇帝に訴えた。


 だが、皇帝は首を振って立ち上がり彼女の方をポンとたたいた。


 「すまん、セラフィーナ。長い間君を世話してきたが、このようなミスを犯す君を・・・宮廷内に置けんのだ。すまない・・・本当にすまない。」


 セラフィーナは、ショックで顔を歪ませながらよろけた。


 「・・・・いえ・・・グス・・・では、みなさんも今まで・・・お世話になりました!」


 セラフィーナは、すすり泣きながら俺の横を走り抜けて謁見の間を後にした。


 「君もだ!」


 アルドに言われて、俺もしぶしぶ近衛兵の指示に従って扉の所まで行き、扉の前で一礼して謁見の間を後にした。


 「さあ、召喚の儀式は終わりだ!各自、仕事に戻ってくれ。」


 アルドの合図とともに、ぞろぞろと元老院議員やメイドたちも謁見の間を去っていった。


 廊下を一緒に歩いていたマヌエル宰相とメイド長は、今回起きた出来事について話し合っていた。


 「まったく、期待はずれもいいところだ。」


 「本当ですね。でも、セラフィーナちゃんがこんなミスを犯すなんて・・・。」


 「ゴブリンも女を犯さない時がある。そう言うことわざがこの帝国にあるように、彼女は取り返しのつかないミスを犯してしまったのだよ。」


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