第四話 奪う者と始末
少し前の出来事…
「……あんなにギャーギャーわめき散らしてたのに、あっさり敗北するとは情けない。」
リュウがトンスを倒した直後の事、倒れた二人の元に一人の男が現れた。男は身長は170程、髪は黒で長く腰まで延びている。
「!」
男がリュウに何かをしようとするが、こちらに何者かが近付いてる事に気付く。
「二人…いや三人か?彼の仲間か?僕らの仲間ではないなら…」男は呟くとトンスの元に行き、小さい木の実のような物を取り出し割った。
「ここは退くとしましょうか、こいつにけじめを着けさせなきゃいけねぇーし。」
そう言うと男は割れた木の実の中から出てきた煙と共に消えてしまった……
「いた!」
「倒れてるぞ!」
「待て!回りに敵はいないか?」
アーヴ達は倒れているリュウを見付け、急いで彼が寝泊まりしている場所へと運んだ。
そしてアーヴがリュウと話している頃、村から少し離れた場所に彼らはいた。
「いつまで寝てんですか、トンスさん。」
「あ、アルバシスか…お前が助けてくれたのか?」
アルバシスと呼ばれた男は少し呆れた顔をしながら、横になっていたトンスに近付く。
「助けた?そもそもてめぇーがあのガキを確保も始末もできねぇから、わざわざ僕が出向いてここまで連れてきたんですよ!」
アルバシスは弱っているトンスに怒鳴り、起き上がったトンスは少し驚きながらも弁明し出した。
「ち、違うんだよアルバシス。あいつが何をしてくるかわからなかったから慎重に攻めたんだよ、でもあいつが…」
「はぁ?この期に及んで言い訳ですか?」
「うぐっ…」
「もういいんですよ。てめぇーの素行が悪いのも、素質があるから見逃したり便宜を図ってきましたが、もういいんですよ。」
「……アルバシス、お前も端くれとはいえ戦闘員だろ。お前は戦わないのか?」
トンスは言い訳を止め、いつになく真面目な口調で返した。
「そうですねー、たしかに僕も戦えないわけじゃーないんですが…。例えば」
アルバシスは言い終えるよりも早く、トンスと間合いを詰め眉間に指を二本入れた!
「!?」
次の瞬間、アルバシスは再び離れたがトンスはとても気分が悪くなっていた。
「て、てめぇ…な、なにを…?」
「こーやって、もう利用価値がなさそうな奴の能力を奪う事なら喜んでやりますとも、ケケケッ!」
トンスは立っていられなくなったが、アルバシスを睨んでいた。するとアルバシスは先程は持っていなかった、カードのような物を持っていた。
「最期に見せてあげますよ、僕の能力を。僕の能力は…」
アルバシスはそういうと持っていたカードを自分の頭の中に入れ始めた!
「僕の能力は、相手の能力を奪う能力なんですよ。気付いてますか、トンスさん。てめぇー、ほとんど気が無いことに。」
トンスは近付いてくるアルバシスに攻撃しようと拳に気をまとわせようとするが、気がまとえない。それどころか自分から気がなくなっていた!
「な、なんでだ!?な、なんで…」
「この世のあらゆる物に気は宿ってます、そして我々はその気を操れる。能力、何てものは気の塊みたいなもんなんですよ。僕はそれをカード形にして奪える、つまりてめぇーの気のほとんどは僕がカードにして奪っちまったんですよ。」
アルバシスはそう言いながら、自分の拳に気をまとわせる。
「いやー、でも残念ですよー。てめぇみたいに利用しやすいのはそうそういませんからねぇー」
「お、俺は…」
「でもしょーがねぇーんですよ、だってあんた、任務に失敗したあげくあんなガキに負けちまったんですから。」
「俺は…」
アルバシスは動けないトンスに近付き…
「それで、ここから突き落とせばいいんですね。」
アルバシスは全身を石にしたトンスを崖から突き落とし…
「さてと…次は…」
アルバシスは一度カードを引き抜き、違うカードを入れ右手をおでこに当てて目を瞑った。
『もしもし?ガムードさん?』
『なんだ、アルバシス?任務は終わったのか?』
『それがですねー、トンスが敗北しました。』
アルバシスはガムードという人物にリュウを連れて行こうとして返討にあった事、失敗したので始末した事を包み隠さず報告した。
『それで、そいつはもう保護されたのか?』
『まだ移動はしてないみたいです。どうします?このまま新手を出すか、それとも僕は戻るか。』
『……トール王国なら二、三日で着いちまう。その村の近くに確か俺達の仲間がいたはずだ、そいつらを貸してやる。トール王国に着くまでに仕掛けろ。』
『御意。ところで…トール王国への攻撃はまだしないんですか?』
『そうだな…。あそこは能力の研究に力を入れてるだけあって、俺達の動向も探っているのがどうにも目障りだ。まぁ近いうちには仕掛けるかもな…』