第一話 能力と刺客
「…」
とある片田舎の村に、どこにでもいるような一人の青年。彼は今日も村の外れにある林の中で考え事をしていた。
「……これ、ほんとに能力なのかなぁ。」
彼の右手には小さな石を握られているが、石には数字の『2』が浮かび上がっている。
「でも能力だとして、なんの役に立つんだが…」
彼はそういうと石を投げ捨てた、次の瞬間
ボン!
小規模ではあるが、石は爆発して破片が少し飛び散る。
「あー、こんなんじゃなくて金を産み出せる能力とかが良かったのにー」
青年はそう言いながら、そろそろ村に戻ろうとした。
『その村にいるはずなんですけどねぇ~』
「うるせぇーな!てめぇの通信方法は頭の中に響いて嫌いなんだよ!」
その頃村の入り口の近くには、独り言を言う男がおり何やら怒鳴り気味だった。
『……終わったらまた連絡しますよ。』
「けっ!くだらねぇ使いさせやがって。」
男は文句を言いながら村へと入って行った。
村人達はよそ者が入ってきたことに少し驚くが、それ以上に男が機嫌の悪そうな顔で辺りを威嚇する様にしているのが気になっていた。
(それらしいやつはどこにもいねぇじゃねぇかよ!あいつ、嘘教えたんじゃーねぇだろうなぁ。)
『もしもし?トンスさん?この村の東側、今歩いてる道をどんどん右に行ってください。村の少し外れに気を感じます。』
「うるせぇーんだよぉ!そういう事は最初に言いやがれ!」
村人は怒鳴る男にビクつきながらも、決して誰も目を合わせようとせず彼が通る先にいるなら自ら道を空けた。
「……あいつか、確かに気を感じるな。」
村の東側の畑の区画に入ってすぐ、奥の林から一人の青年が歩いてくるのを確認した男は、うつ向きながら考え事をしている青年に近付いた。
「…てめぇ、能力持ってんだろ?」
「え?」
バキッ!
「ガハッ…!」
いきなり男に声をかけられたかと思えば、男は青年の顔を右手で殴った!青年は突然だったので、少し吹っ飛ばされ倒れた。
「な、何を…?」
「質問してんのはこっちだ!だーれがテメェの質問を許したんだよ!」
「おやおや、トンスさんは相変わらず乱暴ですねぇ。」
そんな二人のやり取りを、少し遠くから見ている男がいた。彼の手には書類が一枚握られており、双眼鏡を覗き込みながら書類にも目を通していた。
「リュウ、19歳。この村には知り合いの仕事の手伝いで来てるだけ。能力に目覚めたのは最近で、まだ詳細は不明…。ま、どんな能力を持ってよーが、仲間に引き込むか、それができなきゃ壊しちまえばいいんですよ。頼みましたよ、トンスさん…」
「いてて…、え…?」
殴られた青年、リュウは殴られた左頬を手で触るが、頬は固く、と言うよりも石になっていた!
「な、殴られた箇所が、い、石になってる!?」
「そうさ、それが俺の能力よ!気を込めて殴った場所を石にしちまう、人間だろうと建物だろうとなぁ~」
殴ってきた男、トンスは得意気な顔をして近付いてくる。
「でもテメェ、殴った箇所が石になってるのに気付いたってこたー、能力もってんだろ。」
(こ、こいつ、僕が能力を持ってる事をなんで知ってるんだ!まだ誰にも話してないのに!)
「なぁ、テメェには二つの選択肢をやるよ。一つは俺に大人しく着いてく、もう一つは…」
トンスは倒れてるリュウの目の前で足を止める。そして…
「俺様にボコボコにされて死ぬかのどっちかだぁ!!」
トンスは倒れてるリュウを踏み向けようとした!
ボン!
「!?」
が、次の瞬間、トンスの足元で小規模な爆発が起きてトンスは驚きバランスを崩して後ろへと倒れた!
「いってぇな!」
あまりのことに無防備に後ろへと倒れたため、トンスは後頭部を少し打った。リュウはその隙にトンスから少し距離を取り立ち上がった。
(た、助かった…。殴られて吹っ飛ばされた時、右手で地面を殴って爆弾を仕掛けておいた…。油断しきってたから今の手を使えたが、さすがに二度は通じないだろう……)
トンスは後頭部を押さえながら立ち上がり、リュウに怒りを向けていた。
(こいつに着いて行った所で、この状況が変わるとは思えない…。能力があるから利用されるのがオチだ…、それなら…)
「テメェ…テメェの能力か今のは!テメェがその気ならやってやるぜ、全身を石にしてたけぇ所から落として粉々にして殺してやるぜ!」
(やるしかない!こいつを、やられる前にやるんだ!)