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極寒の島グラキエース  作者: めび
8/15

一方そのころ(VSグラキベア)

ダルタス達が風穴内に潜ってしばらく経った頃。

「この荷物、何が入ってるのかな?」

「まあ、食料だと思うけど、他人の荷物を探る気はないわよ。」

リズが笑いながら、リュックを見つめる。

「ですよね。」

リャオもそう言って笑う。

「それにしても、風の音がすごいですね。」

「え?」

「ほら、風穴からビュービューって音がしてますよ。」

人の耳より、上に付いているリャオの耳が、ぴくぴくと動いている。

「私にはよく聞こえないわ。流石ね。」

リズが耳に手を当てて風の音を聞こうとするが、風の音は聞き取ることが出来なかった。

「私、耳はいいので。」

可愛らしくにこりと笑うリャオ。しかし、その表情が強張る。

その表情を見逃さなかったリズは、リャオに問いかける。

「どうしたの?」

「風の音に混じって、何かおかしな音が・・・。」

「おかしな音?」

リズが真剣な顔で聞き返す。

「ゆっくりと、がさがさと近づいてくる何かが・・・。」

奇妙な音を捉えたリャオが、目を閉じてさらに周囲の音を探る。

「リズさん、戦いの準備を・・・。おかしな足音が聞こえます。」

「どうしたの?」

目を閉じて、耳に神経を集中するリャオ。

「どしんどしんと、揺れるような音が聞こえます・・・。」

「揺れるような音?」

怪訝そうな顔をするリズに、リャオは自分の聞いた音から得た情報を知らせる。

「多分、大きな生き物です。あの蛇と同じぐらいの・・・。」

「何体ぐらい居るの?」

「1匹だけで、4足歩行だと思います・・・。かなり重い動きをしているようです。」

リャオの情報を聞いて、リズがふと思いつく。

「重くて、4足歩行・・・。あいつかしら・・・?」

「あいつ?」

目を開けて、リズを見つめるリャオ。

そんなリズは、少し見晴らしのいい場所で、自分の荷物から設置型のボウガンを組み立てながら答える。

「グラキベア、ここの島に居る雑食性の動物よ。」

「それは、そんなに大きいんですか?」

「この島で一番大きな動物・・・だったわね。」

「だった?」

リズの言葉に引っかかりを覚えるリャオ。

「あの蛇の方が大きいもの。」

「あぁ・・・なるほど。」

しかし、次の一言ですべて納得がいった。

「あれより大きい生物、居るんですかね?」

「そりゃ、居ると思うわよ。あそこにもね。」

リズがドラゴンの来た山を指さす。

「ドラゴンですか。」

リャオの言葉に、リズが頷く。

「相手は、したくないですね。」

そんな会話をしている間にも、リズは戦闘準備が整ったようだった。

「さて、リャオちゃん。安全な場所に隠れてて。」

「は、はい。」

リャオが周囲を見回して、安全な場所を探す。しかし、そう都合のいい場所は見当たらない。

「ど、どこに・・・。」

「この木の上に行ける?」

右往左往するリャオを見て、アドバイスを出すリズ。

「や、やってみます。」

リズの指定した木によじ登るリャオ。何とか太い枝に登ることが出来た。

「あ・・・そうか。」

枝に上ったリャオの耳がぴくぴくと動く。音がいつもより多く聞こえた。

「リズさん、ここならサポートできそうです。」

周囲の状況が解るようになったリャオが、リズに提案する。それを受けたリズは、笑顔で頷いた。

「じゃあ早速、今どんな状況?」

「はい、警戒しているようで、あれからあまり近づいてきてません。」

リズの問いかけに、リャオが今の状況を答える。

「そのまま、離れてくれればいいんだけど。」

ボウガンに矢をセットしながら呟く。

「どちらから来そうかな?」

「あっちの方角ですね。」

リャオが山の方角を指さす。リズはその方角にボウガンを向け、身構えた。

周囲の音が、リズにも聞き取れるようになるほどの静寂と緊張感に包まれる。

そして、その静寂が、何者かの足音で破られる。

その足音はリャオが指示した通りの方角から聞こえた。

「もうすぐ、です。」

リャオとリズが木に囲まれた茂みを息を殺して見据える。

茂みがざわつき始め、巨体が茂みをゆっくりとかき分けて2人の前に現れる。

「やっぱり・・・。」

元は目の覚める白い体毛なのだろうが、すっかり土で汚れてしまっている。

「あれが、グラキベアですか。」

「ええ、相当苦労してるみたいね。でも・・・。」

苦労している割には、その巨体は全く変わりがない。むしろいつもより大きいぐらいだ。

「あんなに大きいんですか?!」

リャオが叫びに近い声を上げる。しかし、リズは涼しい顔でグラキベアを見つめている。

「そうね、今まで見た中では一番大きいかな。」

そう言って、リズはボウガンに手をかける。

「可哀そうだけど、相手はやる気のようね。」

グラキベアがゆっくりと立ち上がり、自らの巨体をリズに誇示する。

威嚇行動だが、リズは全く怯む様子はない。

リズは立ち上がったグラキベアに向けて、ボウガンの照準を合わせ、トリガーを引く。

発射されたボウガンの矢は、グラキベアの胴体に深々と突き刺さり、その衝撃で、グラキベアがバランスを崩し、後ろに倒れた。

「リズさん・・・。」

「まだ降りちゃだめよ。」

リズの言う通り、グラキベアはすぐに4つ足で起き上がる。そして、リズをにらみつける。

「次で楽にしてあげる。」

ボウガンの矢をセットするリズ。しかし、その途中で邪魔が入る。

「くっ!!」

間一髪でグラキベアの爪を避けるリズ。その爪はボウガンに当たり、設置していたボウガンが根元から倒れる。

「下手に怪我をさせたのは、失敗だったわね。」

一度グラキベアから距離を取るリズ。

「リズさん!!」

リャオが叫ぶ、その声にグラキベアが気付き、木の上のリャオを見上げる。

「リャオ!!ダメよ!!」

リズがリャオより大きな声でグラキベアの気を引く。リズの思惑通り、グラキベアがリズの方を向きなおす。

次の瞬間、グラキベアがリズに向かって走り出してきたが、リズは冷静に躱す。

「手負いのあいつは逃がせないわね。」

リズは倒れたボウガンと、グラキベアの位置を確認する。

「リャオ、そこから動かないでね!」

バックパックを探りながら、グラキベアとの間合いを測る。

「ほら!」

リズがグラキベアの目の前に固形食糧を放り投げる。

リズの動作に。グラキベアは一瞬怯むが、地面に落ちた固形食糧を見て、鼻を近づけて警戒する。

その隙に、リズはグラキベアを刺激しないように倒れたボウガンに近づき、ボウガンを設置しなおす。

「これで仕留めるわ。」

再び矢をセットし、グラキベアに狙いをつける。グラキベアはリズの投げた固形食糧を口に運んでいた。

リズは、そのグラキベアの無防備な頭に狙いをつけ、矢を発射する。

「え?!」

リズは驚きの声を上げる。グラキベアに当たると思われていた矢がグラキベアの頭をかすめた。倒れた時に、照準が狂っていたのだろう。

異変に気付いたグラキベアは、再びリズの方を向き直り、再び駆け寄って来る。

今度は、そのまま体当たりでボウガンを押し倒す。リズも再び避けたが、押し倒されたボウガンが体に引っかかり、バランスを崩した。

「ヤバ・・・。」

グラキベアの目線はリズを捉えている。そして、リズに向けて飛び掛かる。

「ぐ・・・・」

衝撃と共に、体に痛みが走る。グラキベアは押し倒したリズの体に、爪を突き立てようとする!

しかし、リズは体をよじらせてその爪を躱す。

何とかリズは逃げ出そうともがくが、巨体が覆いかぶさっている為に動けない。

グラキベアは、組み伏したリズに向けて鋭い牙の見える口を大きく開け、その牙をリズの首に突き立てようと顔を近づける。

その時だ、奇妙な笛の音が戦場に響き渡る。

「な・・・に?」

グラキベアもその音に気付いたのか、顔を音のする方に向ける。

力の緩んだ隙を見て、リズがグラキベアの拘束から逃れる。

しかし、グラキベアは獲物が逃げた事は気にもかけていない様子で、音のする方をジッと見つめていた。

何が起こっているのか全く理解が出来ないリズだが、この隙に再度ボウガンを起こし、矢をセットする。

「もう、外さない。」

そう言って、リズはグラキベアに矢を打ち込んだ。

今度は、胴体に打ち込むが、矢が当たってもグラキベアは微動だにしない。

リズはさらに矢をセットし、グラキベアに何度も打ち込む。

そのうちの一本が、グラキベアの頭部を貫いて止まる。そのまま地面に倒れこんだグラキベアは、動く事は無かった。

「リズさん!!」

その光景を呆然と見ていたリズは、リャオの声で我に返る。

「・・・さっきのは一体?」

リャオが立ち尽くしているリズに飛びつく。いつの間にか笛の音が止まっていた。

「リャオちゃん?あの音はあなたが?」

「は、はい。ここまでうまくいくとは思いませんでしたが。」

「何をしたの?」

少し上がっている息を整えるリャオに、リズが問いかける。

「獣の、特に今回は熊の興味を引き付ける曲です。」

それを聞いたリズは、リャオの職業を思い出す。

「吟遊詩人・・・そんなことが出来たの?」

「グラキベアに効くかどうか不安だったのですが、効いてよかったです。」

ホッとした笑顔を見せるリャオ。

「リャオちゃんに、そんな特技があったなんて、もっと早く教えてほしかったな。」

「すみません、不確実な事はあまりしたくなかったので。」

少し俯いて答えるリャオだが、リズは笑顔で頷く。

「いいのよ、リャオちゃんの考えだもの、仕方ないわ。こっちこそ、心配かけちゃってごめんね。」

「それより、右腕、大丈夫ですか?」

「右腕?」

リズはそう言われて、自分の右腕を見た。

「あら、少し痛むと思ったら。」

右腕の服が赤く染まっている。グラキベアの爪が食い込んだのだろう。

「応急処置しておかないとね。」

特に驚く様子を見せないリズを見て、リャオは呆気に取られていた。

「あの、大丈夫なんですか?」

「狩りをしてると、こんなことは日常茶飯事だから、慣れちゃってたわね。」

深くまで爪が食い込んでいたのだが、淡々と傷口を処理するリズ。それを見て、痛そうな顔をするリャオ。どちらが怪我をしているのか判らない感じだ。

「さてと、これで良し。」

右腕に白い包帯を巻きつけたリズは、その腕を軽く回して、問題ないことを確認する。

「後は、あれなんだけど、これを一人で解体するのは骨が折れるわね。」

リズがグラキベアを見つめながら、苦笑いを浮かべる。

「ここで、解体するんですか?」

「うーん、ここだとちょっと難しいけどね。」

腕を組んで、リャオの質問に答えるリズ。

「こういう時、どうするんですか?」

「そうね、持てる分だけ切り分けて、後は放置かな。寒かったときは、次の日に取りに来ても大丈夫だったんだけどね。」

「天然の冷蔵庫ですか。」

「そういう事。」

そう言って、リズは道具袋からナイフを取り出し、解体の準備を始める。

「あの、思ったんですが、フィクラスさん居ますよね?」

「えぇ、居るわね。」

「また、次元球を貸してもらえば、丸ごと持ち帰れるのでは?」

あまりに単純な事に気付かなかったリズは、目を丸くさせる。

「そ、そうよね。すっかり考えから抜けてたわ。」

リズが思わず早口でリャオに話す。照れ隠しのようだ。

「じゃあ、少し休みませんか?幸いなことに、周囲に怪しい音はしませんから。」

リャオがそう言ってリズに微笑みかける。

「そうね、そうしましょうか。」

リズとリャオは、荷物をまとめて置いてある木の陰に座りこんだ。

それからしばらくの後、ドギーが風穴から顔を出し、驚きを声を上げるのだった。


「という訳で、私はリャオちゃんに助けられた訳よ。」

リズがリャオを後ろから抱きしめる。突然の事にリャオの体がビクッと震え、その後顔が赤くなっていく。

「そ、そんな、大したことないです。」

真っ赤になった顔を俯かせながら、リャオは小声で呟いた。

「でも、それで助かったのは事実なんだから、感謝してるわよ。」

さらにリャオをぎゅっと抱きしめるリズ。

「リズさん、苦しいですよ。」

「ごめんごめん。」

笑いながら、リャオを開放するリズ。

「そう言えば、リャオさんは吟遊詩人でしたね。」

マスターが腕を組んで少し考え事をする。

「リャオさん、相談があるんですが。」

考えが纏まったのか、マスターがリャオに話しかける。

「えっと、何でしょうか?」

「リャオさんに、お仕事の依頼したいんです。」

「私にですか?」

リャオが驚いた表情でマスターに問いかける。

「ええ。酒場営業時間に、ここで唄を歌ってほしいんです。」

「え?」

突然の申し出に、驚きの声を出すリャオ。

「そ、それはもちろん断りませんが、私でいいんですか?」

「ええ。いつもは、お客さんの話声でにぎやかな店内なんですけど、雰囲気を変えたいと思いまして。」

ほほ笑んで理由を話すマスター。

「でも、一応、ギルドですよね?そんな場所で歌うなんて、初めてです。」

戸惑いながらも、嬉しそうなリャオ。早速周囲を見渡して、落ち着いて歌えそうな場所を見繕っている。

そんな時、マスターがリャオに不思議な提案をする。

「そうそう、リャオさん。報酬はコップ一杯でどうですか?」

その提案を聞いて、リャオの耳と背筋と尻尾がピンと伸びた。

「い、良いんですか?!」

2人の会話に、全くついて行けない狩人と学者たち。

そんな中で、ダルタスがマスターに問いかける。

「報酬がコップ一杯?酒でも奢るのか?」

どうやら、ダルタスの答えは見当違いだったようで、マスターが思わず苦笑する。

「いえいえ、これは、酒場と吟遊詩人のような旅芸人達の間の取り決めですよ。」

そう言って、マスターがいつも水を出すサイズのコップをカウンターに置いた。

「これ一杯の銅貨が、コップ一杯です。これを保障するというのが、今回の取り決めになりますね。」

「コップ一杯の銅貨か・・・考えた事もなかったな。」

ドギーが物珍しそうにコップを眺める。

「もちろん、リャオさんが個別に貰うチップは全てリャオさんの物です。」

「私、報酬を貰って歌うなんて久しぶりです。」

嬉しそうに耳をピクピクとさせながら話すリャオに、ダルタスが問いかける。

「いつもは違うのか?」

「はい、いつもは私が酒場で歌わせてもらうので、場所代として支払ってるんです。」

「なるほどな。」

その答えに納得したダルタスだが、リズが次の質問を投げかける。

「そう言えば、いつもはどれくらい稼いでいるの?」

「いつもですか?そうですね・・・人が多い場所で、コップ四杯ぐらいです。」

「そんなにですか。コップ一杯は失礼でしたかね。」

リャオの答えに驚くマスター。それを見て、リャオは申し訳なさそうに首を横に何度も振る。

「いえいえ、そんな事はないです。報酬がもらえるだけでもありがたいですし。」

謙遜するリャオを見て、ダルタスとドギーがからかうようにリャオに話しかける。

「よし、今晩はリャオの歌でも聞きに来るか。」

「グラキベアをおとなしくさせた歌には、興味あるからな。」

「そう言われると、恥ずかしいです。」

照れくさそうに俯くリャオ。それを見て、その場にいた全員が笑い声をあげた。

その夜のマスターの酒場は、いつもよりも客の入りが多かった。

狩人の3人が宣伝して回ったためだ。

「こんなに人が多いのは、祭りの時ぐらいだな。」

ほぼ満席の酒場を見て、ドギーが呟く。

「いつもは、人の声だけでにぎやかなんだけど、歌があるとまた違うわね。」

ドギーの感想に、リズも同意する。

リャオはリュートを弾きながら、島の外の冒険譚を歌っている。

その珍しく胸躍る話を、客は酒を飲みながら静かに聴いていた。

「専属になってもらいたいぐらいですね。」

カウンター越しに、マスターがドギーとリズに話しかける。

「売り上げのため?」

リズが意地悪そうにマスターに問いかける。

「いやいや、それもありますが、長らく島の外に行ってませんからね。もう少し話を聞きたいというところです。」

そう言って、マスターがリズの注文した酒を出す。

「私も、島の外は知らないから、確かに興味深いわ。」

リズがその酒を一息に飲み干し、大きく息を吐く。

「外には、もっとおいしいお酒があるかもしれないしね」

そう言って、リズがマスターに酒のおかわりを要求する。笑いながら、その要求に応じるマスター。

「確かに、島の外にはもっとたくさんの種類のお酒がありますね。」

「すごく魅力的なお誘いね・・・全く。」

グラスの中に注がれた酒を眺めながら、リズが呟く。

「あの、マスター、お水貰えますか?」

リャオが申し訳なさそうに2人の会話に割って入る。

「リャオさん、お水でいいんですか?」

「ええ、仕事中ですから。」

マスターがコップを準備して、レモンの浮いているピッチャーから水を注ぐ。

「はい、どうぞ。」

「マスター、ありがとう。」

そう言って、水を受け取るリャオ。水を少し口に含み、乾いた口を潤す。

「さて、また歌ってきますね。」

「ゆっくりすればいいのに。」

「皆さん、私の歌を待っていらっしゃるようなので。」

リャオの言葉を聞いて、リズは周囲を見渡す。いつもは騒がしい酒場が、リャオの戻りを待つかのように穏やかに談笑している。

「確かに、今日の主役はリャオちゃんのようね。私も楽しみにしてるわ。」

手を振ってリャオを送り出すリズ。リャオは笑顔で答え、コップを手に再び定位置に戻っていった。

「グラキベアをおとなしくさせたってのは、嘘じゃないみたいだな。」

ドギーとダルタスがカウンターにやって来て、リズの両隣に立つ。

「信じてなかったんだ。」

少しむくれるリズに、ダルタスが笑いながら答える。

「悪いが、全部は信じられなかった。でも、この光景を見ると、詩人というのは中々すごいのかもしれんな。」

「まあ、確かに、私も実際に見たから言えるんだけど、話を聞いただけだったらまず疑うわね。」

そう言って、リズが苦笑する。

「吟遊詩人か、世界は広いな。」

ドギーが歌うリャオを見ながらつぶやいた。

「さて、そろそろ、次の調査の話をしておかないとな。」

ダルタスが2人に切り出す。

「次?どこを調べるの?」

「最大の目的地、ドラゴンの降りた山だ。」

ダルタスの言葉に、2人が頷いた。

「やっぱり、そこになるわよね。」

「あぁ。この島の環境変化といい、巨大生物の出現といい、あのドラゴンが原因なのは明白だからな。」

カウンターに今までのメモを広げて説明するダルタス。

「しかし、これは流石に危険すぎる。策はあるのか?」

ドギーの指摘を受けて、ダルタスが答える。

「これと言った策は無いな。それに、今回の調査はドラゴンの縄張りの範囲だ。」

「縄張り?」

「ドラゴンなんて、勝ち目が無いからな。下手に刺激するより、縄張りを調べ上げて、それ以上近寄らないようにするんだ。」

「お前の言う通りなんだが、策がないのはいただけないな。」

「大怪我しそうね。」

ダルタスの言葉に、2人が予想通りの答えを返す。それを聞いたダルタスは、真面目な顔で話を続けた。

「あぁ、だから、今回は自由参加だ。」

ダルタスが2人を見る。

「答えの決まってる質問だな。」

「そうね。」

「ありがたい。」

2人は、その先の言葉を言わなかったが、ダルタスには伝わった。

「あの2人はどうするの?」

「流石に、連れてはいけないだろう。フィクラスは、縄張りの範囲が判れば自分で調査に行くだろうし、リャオは・・・。」

今までの行動を考えるダルタス、リャオを連れていくにはリスクが高すぎると判断する。

「少し、力不足だな。」

ダルタスの判断に、2人が頷く。

「決まりね。」

「じゃあ、出発は明後日の早朝で。」

「マスター、そういう訳で、明後日はギルドの仕事お願いするよ。」

今までの話を聞いていたマスターは、にこりと笑う。

「分かりました。皆さん、気を付けてくださいね。」

そして、マスターは3人に酒を差し出した。

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