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転生公爵令嬢改め、乙女剣士参ります!  作者: 星里有乃
第1章

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第23話 時を超える女神像


「このコカトリスは僕に任せて君達は、早く洞窟内で仮契約を済ませるんだ! 僕の魔法力を信じて欲しい。だてにギルドマスターなんか、名乗っていないさ。泉が湧く場所に儀式可能な魔法陣があるっ」

「そっ……そんな! でも、万が一ヒストリア王子が石化したら……」

「おい、紗奈子急ぐぞ! ヒストリアが足示している間に、オレたちは乙女剣士の仮契約を済ませるんだ。そっちの方が勝算がある。ヒストリア、無理するなよ!」


 よく物語に出てくる『ここはオレに任せて、お前たちは先に行け』と強敵と1人で戦うシーンは、もはや『乙女ゲーム』ではなくどこかの『ファンタジーRPG』だ。すでに、他のゲーム世界のシナリオに、片足突っ込んでいる状態だと考えた方が良いだろう。

 いや、もしかすると……ガーネット嬢が隣国と言う名の『他のゲーム世界から断罪の魔物』にやられる世界線が私達のいるルートの基本設定だとしたら、他のゲームシナリオとクロスオーバーする方法でしか、彼女を救い出せないのかも知れない。


(あれっ……でもそうすると、本物のガーネット嬢は、石化した後しばらくは動けない筈だ。ヒストリア王子は賢者だから石像の抜け殻を残して、自力脱出出来るだろうけど。ガーネット嬢は……?)


 後ろ髪ひかれる思いとふと浮かんだ疑問を胸に……。私は、アルサルに手を引っぱられて半ば無理矢理、洞窟内部へと連れて行かれるのであった。


「はぁ……はぁ……ダメ、もう走れない。はぁ……でも、頑張らないとヒストリア王子が……」

「はぁ……あの青白い光、魔法陣じゃないか? 多分、あの場所が仮契約を行う場所だろう。頑張れ、紗奈子。あと少しだ」

「う、うん!」


 薄暗い洞窟内部をしばらく走ると、青白い光とともに煌々と輝く魔法陣。それを見守るようにそびえ立つ美しい女神像、清らかな水が溢れ出す澄んだ泉があった。


「この女神像のある泉が、儀式を行う場所ということなの?」

「ああ、多分な。オレにはタイムリープの記憶がほとんど無いし、たまに後味の悪い悪夢を見る程度だからなんとも言えないが。儀式がやれそうな場所なんて、ここしかないだろう」


 ヒストリア王子と違ってアルサルはそれほど、タイムリープに詳しくないらしい。儀式の場所が、ここで正しいかは消去法で考えるしかない。


 ふと、女神像を見上げると泉の上に設置された台座の上で、神に祈るポーズで私達を見つめている。頭には聖母マリア像のようにヴェールを被っており、顔はよく見えないが……どこか既視感がある。


「ねぇ……アルサル。あの女神像って、誰かに似ていると思わない? 頭にヴェールを被っているから、顔はよく見えないけれど。まるで、あの女性は……」


 女神像はシュッと尖った顎に小さく整った口元、スッと通った鼻すじ、伏し目がちであるが大きな瞳、整った眉のいわゆる美人さんだ。全身灰色の石像ということ、頭にヴェールを被っていることが原因で髪の毛の色は分からない。

 けれど、その女神像に心の中で色を加えていき、色白の肌、血色の良い微笑む、薄いピンク色の唇。そして、赤い髪の毛を塗っていくと……まさしく、『ガーネット・ブランローズ嬢』その人になってしまう。私よりも僅かに大人びたその表情からは、儚い哀しみが窺われた。


「あぁ……オレの目が幻を見ているのでなければあれは、『公爵令嬢ガーネット・ブランローズ嬢』にそっくりだ。確か、中庭の天使像はヒストリア王子が石化した際の抜け殻かも知れないんだよな。今、この場にはガーネット嬢にそっくりな紗奈子がいるし……じゃあこの女神像は抜け殻か?」


 普通に考えれば、ここにガーネット・ブランローズ嬢として生きている『早乙女紗奈子』が存在しているわけだから、あの石像は中身は空だと思いたいけれど。


「でも、あの女神像……内側から光り輝いていて……。まるで、生きているみたいなオーラだわ。もしかすると、石化にはタイムリープが効かないと仮定して、本物のガーネット・ブランローズ嬢なんじゃないかしら?」


 昨夜中庭で見た天使像達とは違い、この女神像には内側に魂が宿っているように感じられた。おそらく、この女神像こそが断罪イベントで石化した本物のガーネット嬢であることに違いないだろう。


「あぁ! なるほど、タイムリープ前の断罪イベントで石化したガーネット嬢が、こんなところに……。って、ちょっと待てよ。じゃあ、今この場にいる『早乙女紗奈子の魂であるガーネット・ブランローズ嬢』は一体どういう流れで出てきた人物なんだ?」

「あれっ……そういえば。私って……一体、どういうことなの?」


 突然、突きつけられた自分という存在の是非を問われて、頭を抱える。私達の疑問に答えるように、石像から美しい女性の声が響いてくる。



 * * *



 そして、時を同じくしてコカトリスと対峙するヒストリア王子も決定的な違和感に気づく。


「断罪の魔物コカトリス、こいつとは何度かやり合った気がする……。もしかすると、このモンスターがタイムリープのスタート地点にいる魔物なのか?」


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* 2023年04月30日、連載完結しました。 * 主人公紗奈子が異世界に留まるか地球へ戻るかが不明瞭だった当作品ですが、結論を出してからのエンディングとなっております。 * ここまでお読みくださった読者様、ありがとうございました! 小説家になろう 勝手にランキング  i907577
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