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PARANOIA in WONDERLAND

ダダドゥディエダガドダダディス

作者: Y

 世界に人をベースにした兵器は数あれど、あれほど醜悪なものを私は見たことがない。


「ダダドゥディエダガドダダディス!」


 その一、人の言葉を話さない。訂正、話せない。


「グジュ、グチュチュグブギギグウグ」


 そのニ、積極的に人を喰う。生き死にに関わらず。今も人間一匹を半分ほど喰った。他にも喰い漁られた死体がいくつか。どれもつい先程、そいつが殺した者たち。


「ンガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! グビュグギュグジュジュ」


 その三、人であれば骨、肉、皮など関係なくエネルギーに変換可能。つまり、喰う対象がいる限り永続的に稼働できるということ。もちろん、破壊された場合を除くが。すごいな……妊婦の腹の成長を早回しで見せられてるみたいだ、ドンドン膨らんでいきやがる。


「もういいだろう。あれに見つかったら終わりだぞ?」

「ええっ、お願いします。もう少しだけ観察させてください! ほら、見てください! まだ食べますよ!」

「あれは大戦兵器の中でも()()()()()たちが悪い。敵を殺したらすぐ次を探すように作られてるからな! 俺はあんなのに食われたくねぇ。先にキャンプまで戻るぞ」


 私達が四輪車ではなく、二台の二輪車で移動するのはこうした時のためだ。ほれ、帰れ帰れ。キャンプ以外にどこに戻るってんだよちくしょう。いつもいつもいちいち説明したがるのは、軍学校で厳しく躾けられたからか?


「私が死んだら後は頼みますってラヴクラインに伝えといてください!」

「俺は相棒を変えてもらうように掛け合っておくよ」


 観察データはリアルタイムで飛ばしている。私が死んでも大した問題にはならない。ああ、双眼鏡から手が離れない、今回のはなかなかの上物だぞ。ははっ、きたきた生贄が。どこの誰かさんか知らんが、それに挑むには装備が安物すぎるんじゃあないか?


「ダドガヅゥダッダアアアアア!」


 ああ、怪物よ。君は何故戦う。本能か? それとも悪意により創られたプログラムのせいか? 教えてくれ、その無駄に作りの良い顔を歪ませて人を屠るのは何故だ!


「グブギィイイ! シシシシシシシ」


 ああ、本当はそんなことどうでもいい。どうでもいい、どうでもいいこと極まりない。私はただ見たいのだ、戦闘に特化されたその異様を。世界は滅亡したと多くの権力者を嘆かせた、大戦兵器の有様を! さあ、見せてくれ。与えられた性能を謳歌する姿を!


「グア!」

「あっ……なんてことを!」


 ちくしょうちくしょうちくしょう! たらふく人なんて喰うから動きが悪くなるんだよ。そんな腹してたら攻撃を避けれないにきまってるじゃねぇか! 思考能力が破損しているの? 劣化? それとも実は最初からその程度の兵器? はぁ、なんにせよ君はもうだめだ。


「萎えた……帰りますか」


 私が求めているのは、大戦という兵器開発に多額の予算が割かれていた黄金時代の優れた製品だ。ただの製品じゃない。優れた製品の優れた性能が見たいんだ。あのラブクラインが嫉妬のあまり製品名を言ってはならぬと禁止リストを作ったほどのっ……はぁ、残念だ。はぁ、はぁ、はぁ。ため息をわざと続けたくなるくらい残念だ。リスト品でも、あんなに弱体化してるんじゃ稼働記録を撮る必要なんてない。自慢の双眼鏡カメラのメモリーを使うに値しない! 値しない! 値しないぃいいいい!


「きぃいいいい! 悔しい! ムカつく! はぁ、馬鹿らし。回収班に連絡してかーえろ………………んあっ!?」


 帰る前にもう一度だけ。別れの挨拶代わりに双眼鏡を覗いた自分を、私は瞬間的に高く高く高く評価した。高く! 高く! 高く高く高く! ああ、昂ぶる! 昂ぶるなぁ!


「糞しやがった! ははっ!  あはは! すごいすごい! 噛みつきやがった! 糞して噛みつきやがった!」


 強い速い強い! 腹の中身を一気に出してまた喰いつきやがった! 糞のジェット噴射かよ! しかも今度は生きてる人間をガブリだ! ゾンビ映画か? なぁ? いやいやいやゾンビにしちゃぁ速すぎる!  ん? ああ、改めて見るとすごい量だな……一回であんなに出せるのか……。


「ははは! 君はもはや昆虫だな! 昆虫の糞のしかたなんて知らねぇけど! ん?」


 なぜ嘔吐じゃない? なぜ糞にした? もしかして……この短時間で消化したのか? 消化してエネルギーにしたってのか?


「ディガダダヅァ! シシシシシシ」


 あれに白兵戦で勝てる兵器が出てくるのは、あと何年先だ。ラブクラインがそれを開発する時に、あれはどれだけ参考になる? すごいぞ、すごいぞやっちまえ! ははっ歯が強ぇ! 武装服ごと噛み切るのかよ!


「ダダドゥディエダガドダダディス!」


 化物がまた、そう言った。小さな少女みたいな姿で獣のように。ああ、もしかしてあれはただ叫んでいるのではなく、意味がある言葉なのかもしれないな。いや、間違いない。動物的な鳴き声とは別の響きがあれにはある! 私が今そう確信して、そう決めた! 根拠は勘! カンカンカン!


「ダダドゥディエダガドダダディス!」


 私は思わず、糞娘の真似をする。ほれ見ろほれ見ろ、戦闘やめて私の方を見ただろ? あ、ああ、あああああ走ってきた走ってきた、きたきたきたきた! さてさてこれは仲間意識か? それとも敵対意識か? ああ、ゾクゾクするなぁ。


「クゥイインクゥイイン」

「はははっ、よしよし」


 よし! 私正解! 天才! 可愛い子ゲット!


「おい! そいつから離れろ! 貴様はなんだ! どこの人間だ!」

「まさか……そいつをおまえが……? くそっ! てめぇのせいでビルはっ!」


 ああ、うっるせぇなぁ。

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