観察日記 9
「トウヤくん、一緒にやろう?」
「えっ? ああ! いいですよ♪」
ユキネさんが持ってきたのは人生ゲェム、というボードゲームだった。
昨日は二日酔いでダウンしていたユキネさんだが、今日は調子が戻ったみたいで、朝から自分の部屋の片付けをしてたみたいだが……
「私これやった事ないの! 実家にあったんだけど、私……友達少ないから……」
ユキネさん! 何だか聞いてたら悲しくなってくるからやめて!
「大丈夫です! 俺ならいくらでも付き合うんでやりましょう!」
「トウヤくん……ありがとう、嬉しい♪」
「それじゃあ早速やりますか!」
「おー♪」
そして準備をして早速スタート!
ユキネさんからのスタートになったのでユキネさんがルーレットを回す。
「いっくよ~♪ えい! ……3! いち、に、さん…… やった! お金がもらえた♪」
そしてユキネさんが止まったマスに書かれていた金額をユキネさんに渡す。
「どうぞユキネさん」
「はわっ! ふっふっふ♪ 私お金持ち!」
人生ゲェムって 100万単位とかでもらえたりするからお金持ちになった気分になるよな~!
「トウヤくん、欲しいものがあったら買ってあげるよ♪ なんせ私はお金持ち……ふふふ!」
「考えておきますよ…… じゃあ次は俺……4か~! あっ! 泥棒に入られてお金が無くなる……うわぁ、最初からツイてないな~」
「トウヤくん!? 大丈夫!? ケガはない?」
「えっ!?」
「お金だけでよかったね、生きていれば良いことあるよ♪ お金貸してあげようか? なんならあげるよ?」
「いや、大丈夫ですよ? 次、ユキネさんの番ですよ」
ユキネさん…… 人生ゲェムの世界に入り込んでるな~! 早くも現実とゴッチャに……
「うぅ~! 可哀想なトウヤくん…… って1!? 私にも泥棒が! トウヤくんの仇~! えいえいえ~い!!」
ブンブンとその場で腕を振るユキネさん。
あ~、今ユキネさんの中では泥棒と戦ってるんだろうな~。
「ふぅ~♪ 私の手にかかれば泥棒なんてちゅるちゅるっていう間にノックアウトよ!」
ユキネさんは泥棒をやっつけたんだな~、ってかちゅるちゅるって何?
「はい♪ トウヤくんのお金、取り返したよ♪」
「いや、これ人生ゲェムなんで……」
「ふふ♪ 気にしないで! 私はかすり傷1つおってないから♪」
何か否定するのも面倒になってきたから黙って受け取っておこう、何よりユキネさんが楽しそうにしてるからいいじゃないか!
「いち、に、さん、よん…… あっ就職だって! じゃあ私は……弁護士!」
「弁護士ですか~! カッコいいですね♪」
「ふふ~ん! もし困った事があったら私が弁護してあげるからね~♪」
「ええ……お願いします」
もうすっかり弁護士気分になってるよ。
どこから出したんだかメガネなんてかけちゃって…… ただユキネさん、メガネが似合うな~!
「さて……じゃあ俺は…… おっ! 結婚しました……みんなからお祝いをもらう、か!」
そして車型のコマに女の人のピンを刺そうとしたら……
「結婚!? トウヤくん、やったね♪」
とユキネさんが使ってた車型のコマからピンを抜き、俺の車へ刺すユキネさん……
「えっ!? ユキネさん、一体何を?」
「えっ!? だって私達、結婚したから同じ車に…… もしかしてイヤなの?」
「いや! そういう訳では……ただそれならゲームが……」
「交代でルーレット回そう? じゃあ先に回していいよ♪」
「はい…… 子供が生まれた、みんなからお祝い……」
「え~! もう! トウヤくんったら~♪」
そう言ってバシバシと俺の肩を叩くユキネさん、それにお腹をサスサス……入り込みすぎだ!
「じゃあ次は私…… 子供が生まれた…… もうパパったら~♪」
やっぱりバシバシのサスサス…… いや、これゲームですからね? ユキネさん?
……ダメだ、完全にトリップしてる…… ユキネさんの周りに2人の子供の幻が見える……
「……回しますよ、……あっ! 浮気がバレて離婚する…… ひっ!」
「……浮気者! どこの誰!? その泥棒猫は! トウヤくんの女ったらし!」
ポカポカと俺を叩くユキネさん、心なしか幻の子供達にも睨まれているような……
「実家に帰らせてもらいます! 慰謝料と養育費、払ってね! 裁判しても負けないんだから!」
……ゲーム、ですよね? ユキネさんが本気すぎて何かものすごく悪い事したような気が……
ここにきて弁護士設定が強く出てきたな……
「早く回しなさいよ! この浮気者!」
うぅ……ユキネさんが恐い! 良い子のみんな絶対浮気ダメ!
「……2か…… 誤解が解けて再婚する…… こんな都合のいいマスがあるの?」
「私は信じてた! トウヤくんが浮気する訳ないって!」
え~!? さっき散々浮気者とか言って冷たかったのに? 急に手のひら返したよ!
幻の子供達も俺に駆け寄ってきた…… ように感じる。
いよいよ俺もユキネワールドに飲み込まれ始めたか?
そして……
「いち、に、さん、よん……ご! やった!」
「ゴールですね!」
「うん! 色々あったけど私幸せだったよ♪」
「そうですか……よかった……です」
あれから、良いことがあれば2人で喜び、悪い事があれば、めちゃくちゃ怒られる……
非常に疲れた……
「それじゃあ……最後に勝負の行方は……」
「えっ!? これ勝負だったんですか?」
「もちろん! 残りのお金が多い方が勝ちね?」
「えっ! それなら……」
「勝負の結果、私の圧勝!!」
そりゃそうだよ…… 収入があれば2人で折半、悪い事が起きた時の支払いは俺だもんな……
まあゲームだし、いいか……
「これで私の4連勝! 日本一! 優勝商品は……」
「……」
「何でも言うこときく券♪」
「へっ!?」
「それじゃあ早速使うね♪ 私は……」
その後ユキネさんが言った内容に俺は……
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