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観察日記 3

 今日はユキネさんとルームシェアを始めて1ヶ月になる。


 今日はそれを記念して焼肉パーティーをするとユキネさんが言い出した。


 俺は仕事帰りにお酒を買って帰る。

 ユキネさんは肉や野菜を買ってきてくれるみたいだ。


 俺が家に帰ると、まだユキネさんは帰っていなかったので、ホットプレートや取り皿などを先に用意しておく。


 このホットプレートは俺がこの家で暮らすために買った物だったが、やっと出番がきた。

 そうしてる内にカギが開く音が聞こえてきた。


「ただいま」


「おかえりなさい! 持ちますよ!」


 両手に荷物を持ったユキネさんに慌てて駆け寄り荷物を受け取る。


「……ありがと」


 一瞬驚いたような顔したユキネさんだったがすぐにいつもの表情に戻り、とりあえず自分の部屋に入っていった。


 部屋着に着替え出てきたユキネさんはエプロンをして、早速野菜などを切り始めた。


「どうしたのトウヤくん?」


「い、いえ、何でもないです!」


 エプロン姿のユキネさん。

 この1ヶ月で見慣れたけど、こうしてるとなんか恋人同士で同棲してるみたいな……


 駄目だ! ユキネさんの優しさで一緒に住ませてもらってるのにそんな事考えるなんて!


 そんな俺の様子を不思議そうに見るユキネさんと目が合い、思わず顔が赤くなる。


「トウヤくん、もしかして……」


「な、何ですか!?」


「もしかして…… もうお酒飲んだの? 顔赤いしさっきからフラフラしてるよ?」


「まだ飲んでないですよ!」


「ふーん、そう……」


 首をかしげ少し考えたような顔をしたユキネさんだが、すぐにまた野菜を切り出した。


 ユキネさんって鋭いようで、どこか抜けてるんだよな~


 そうこうしている内に焼肉の準備が出来て、2人のルームシェア1ヶ月記念パーティーを始めた。


「「乾杯!」」


 2人で乾杯をしてビールを飲む。


 は~っ! 美味い!


 ふとユキネさんを見るとグビグビとビールを煽り、そして……


「トウヤくん、もう一本!」


「ユキネさん、大丈夫ですか? そんなハイペースで……」


「大丈夫! だって家だもん、それに今日は記念パーティー、だから無礼講!」


「はぁ…… それでもほどほどにしといて下さいよ?」


「は~い」



 そして……



「トウヤく~ん、ぜ~んぜん飲んでないよぉ?」


「俺はそんな酒が強くないんで……」


「なにぃ? それじゃあ~私の酒が飲めないって事~?」


「そんな事は…… ユキネさん、飲み過ぎですよ?」


 案の定ハイペースで飲むから、ユキネさんはベロベロに酔っぱらい、俺に絡んでくる。


「だって~! 仕事の飲み会じゃあんまり楽しくないし~、家なら気兼ねなく飲めるでしょ~?」


「そうかも知れないですけど…… それでもユキネさん! これでもう終わりです!」


「トウヤくんのケチ! そんなトウヤくんには…… えいえいえ~い!!」


 ユキネさんは俺の胸をペチペチと叩く。


 叩くというより…… 猫の爪とぎみたい……


 するとユキネさんはビックリした顔をして


「まさか! ……トウヤくんには私の……」


 そう言ったユキネさんはふらっと俺の方に倒れ込んできた。


「ユキネさん! 大丈夫ですか!?」


「……くぅ……くぅ……」


 ……寝ちゃったよ


 俺に寄りかかり眠るユキネさんにドキドキしながらも、俺の部屋から毛布を持ってきて、ユキネさんに掛けてあげて、俺は1人、後片付けをして自分の部屋で眠った。


(ユキネさんの部屋で寝かせてあげようかと思ったがルールを破る事になると思いやめた)



 朝、今日もユキネさんは俺が起きる前に仕事に出ていなかった。

 ユキネさん、最近朝早いよな……仕事忙しいのかな? 朝ご飯はラップして置いてあるけど、なんか悪いな……


 そして、ユキネさんの部屋の前にはやはり例のノートが落ちてた。


 ここんところなかったけど、久しぶりに落ちてたな。

 

 ―5月 △日―


 頭が痛い……飲み過ぎた。


 昨日はトウヤくんと同棲1ヶ月記念パーティーをした。


 つい楽しくて、いっぱい飲んじゃった。


 それにしてもトウヤくん……


 昨日買い物をして帰ってきたら玄関に走ってきてビックリ。


 何だか家で飼ってた猫みたいで面白かった。


 野菜を切ってる時もこっちをチラチラ見て。


 家にいた猫も台所でママが何かしてるとソワソワしてたから、トウヤくんを見たら思い出しちゃった。


 そしてトウヤくん、私のにゃんこ拳を受けても平気そうな顔をしてた。


 まだまだ私も修行が足りない……


 気が付いたら寝てたみたいだけど、トウヤくんが毛布掛けてくれたのかな? それともお化けさん?


 とにかくトウヤくんが焼肉を美味しそうに食べてて良かった。


 やっぱり焼肉が大好きなんだね、だって……


 いっつも英語で焼肉って書いたTシャツ着てるもんね♪




 ユキネさん……


 俺の行動が猫に似てました?


 まあ面白かったならいいですけど……


 それよりも、にゃんこ拳なんていつ使ってたんですか!?


 ……もしかして、あの胸をペチペチ……爪とぎじゃなかったんだ……

 にゃんこ拳……謎だ……


 それにお化けはいません!


 そしてTシャツ……


 なんかデザインが気に入ってまとめ買いしちゃったけど、あれって英語で焼肉って書いてあったんですね……


 メッチャ恥ずかしい! どうりで外国の人とすれ違うとクスクス笑われる訳だ!


 もうあのTシャツ着れないよ……


 ユキネさん……そういう事は面と向かって言ってください!!

 

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