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観察日記 13

「私、もうお嫁に行けない! 責任取って!」


「は、はいー!?」


 俺が目を覚ますと、横で毛布で身体を覆いこちらをキッと睨みつけるユキネさんがいた。


 ただ、少ししたら顔がヘニャっと笑ったようになり、それに気付いてまたキッと睨みつける。


 私怒ってるんです! アピールなんだなってのはユキネさんを見ていれば分かる。


 だがお嫁に行けない……って、俺が何かしたか? 一緒に寝てしまったのは悪いと思うが、決してやましい事はしていないと誓える。


「あの…… 俺何かしましたか?」


「私のとなりで寝てた!」


「それはすいません、でも酔っ払ったユキネさんが離してくれなくて……」


「言い訳しないで! 責任取って!」


「すいません、責任って?」


「結婚して!」


「けっ! 結婚!? 一緒に寝ただけで!?」


「当たり前でしょ! 赤ちゃんも出来ちゃったし!」


「あ、赤ちゃん!?」


「そうだよ! 男の人と一緒に寝たら赤ちゃん出来るんだよ!? 責任取って、一緒に子育てしてよ!」


「あ、あの~」


「知らんぷりするの!? かわいそう…… ひどいパパでちゅね~」


 そう言ってお腹をさするユキネさん。


 ウソだろ!? 子供って…… この年になってそれくらい知ってるんじゃ……


「ユキネさん? 落ち着いて?」


「認めて! 赤ちゃんがかわいそう! 2人の赤ちゃんなんだよ!?」


「あのですね…… 赤ちゃんって言うのは……」


「ひどい! 私と一緒に寝て責任取らないなんて…… トウヤくんがそんな人だとは思わなかった!」


 すると家のインターホンが鳴り、外から大家さんの声が


「ユキネちゃん? トウヤくん? おっきな声出してどうしたの~?」


 するとユキネさんは玄関に走っていき、大家さんを家に上げ、リビングへ連れてきた。


「ユキネちゃん、どうしたの?」


「トウヤくんが赤ちゃん出来たのに責任取ってくれない!」


「えぇ~!? 赤ちゃん!? ……それじゃあ2人は……」


 顔を真っ赤にしながらもユキネさんの説明を聞いているうちに、あれ? と思った大家さんは、聞き終えた後にユキネさんの部屋に2人で入っていってしまった。


 リビングに残された俺は、寝起きで突然迫られ、少し混乱していたのでコーヒーを飲みながら自分を落ち着かせていた。


 するとしばらくしてユキネさんの部屋から、困った顔をした大家さんと、しょんぼりしたユキネさんが出てきた。


「トウヤくん…… 勘違いしてました、すいません……」


「じゃあ後は2人でよく話し合ってね?」


 そう言って帰っていった大家さんを見送り、リビングに2人きりになった俺達、そしてユキネさんが口を開く。


「私、男の人と一緒に寝たら赤ちゃん出来るんだと思ってた、勘違いしてた……」


「ビックリしましたよ」


「迷惑かけてごめんなさい……」


「いえ、大丈夫ですよ」


「どうしよう…… 起きてすぐママに連絡しちゃった……」


「えっ!? それじゃあ勘違いだったって連絡しないと!」


「ヤダ! 恥ずかしくて言えない!」


「それじゃあどうするんですか?」


「……大家さんに赤ちゃんの作り方聞いた」


「へっ?」


「本当の赤ちゃんの作り方聞いたの! だから……」


「ちょ、ユキネさん!?」


「そうしないと……ダメなの! トウヤくんとの赤ちゃん……」


「何でそうなるんですか!?」


「そうしないと……トウヤくんが出ていっちゃう! 私のそばからいなくなっちゃう!」


「ユキネさん……」


「2ヶ月…… 2ヶ月だけどトウヤくんと一緒に暮らして……楽しくて、面白くて…… そして幸せなの! ずっとトウヤくんといたいけど……」


「……」


「このままだとトウヤくん出ていっちゃう! だから……となりで寝てた時は嬉しかった! 赤ちゃん出来たらずっと一緒だって…… でも間違いだったから、それなら本当に!」


 ユキネさん…… 


「ユキネさん、そんな事しなくてもいなくならないですよ?」


「トウヤくん?」


「俺もこの2ヶ月とても幸せでした、そしてこれからも一緒に暮らしていきたいと思ってました」


「それじゃあ……」


「そうですね…… あの~、その~、……」


「トウヤくん!」


「はい! これからはルームシェアじゃなくて恋人として一緒に暮らしていけたら嬉しいです」


「恋人ならダメ!」


「えぇっ!?」


「恋人なら別れがくるかも…… そんな不安なのイヤ!」


「それじゃあ……結婚を前提としたお付き合いを…… まだ仕事も落ち着いてないので……」


「むぅ~!」


「分かりました! ユキネさん! 結婚して下さい!」


「トウヤくん! 嬉しい♪」


「ユキネさん」


 俺に抱きついてくるユキネさんを受け止め、俺も恐る恐る抱き締める。


 色んな過程を飛ばし、結婚するとまで言ってしまったが後悔はない。


 ルームシェアする事になったあの日から運命は決まっていたのかもしれない……なぜなら……




 ―4月 ◎日―


 今日、新しい家に引っ越してきた。


 そしたらなんと私と同じ部屋に引っ越し予定の男の子が!


 よく聞いたらこの男の子もこの部屋を契約したみたい。


 不動産屋さんの手違い? こんな事ってある?


 ……でもこの男の子を見て、運命を感じた。


 だから自分でもビックリしたが、ルームシェアをしようと言ってしまった。


 落ち着いてから考えると何故あんな事言ったんだろうと思ったが……


 トウヤくん……その名前を、声を、仕草を、そして笑った顔を見た瞬間、すべてを理解した。


 この人は私の運命の人だと……


 すべての行動、表情が愛おしい……


 自分で書いてても恥ずかしいが、それがすべて。


 だから私は……





 この日記を見た時には俺の運命は決まっていたんだ。


 この人は俺と同じ事を感じてると……



 日に日に増えていく、俺の観察日記。


 そのページは今日も増えていく。



    ―完―


















 『たいへんよくできました!』

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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