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観察日記 1

「なんだ……これ?」


 俺が見つけてしまったのは同居人のユキネさんの日記……かな?


―4月△日―


 トウヤくんと同居を始めた。


 ドキドキ、男の子と同居する事になるなんて……


 これから大丈夫かな?




 俺とユキネさんは訳あって同居する事になってしまったのだが、この日付は同居の初日の事だな……


 ユキネさんと同居するようになって1週間。

 別に恋人同士でも、友達だった訳でもない。


 1週間前に初めて出会ったのだが……


「じゃあこれからよろしく……」


「はいユキネさん…… でも本当に大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫、ただ……」


「はい! ルールは守りますよ!」


「うん、よろしくね」



 俺達が住んでいるのは2LDKのアパートで、ルームシェアという形なのだが、お互いで一部屋ずつを使い、リビングやキッチンなどは共同、お互いの部屋には入らないというルールを決めて住んでいた。


 そして1週間、何事もなく順調に過ごしていたのだが……


 ユキネさんの部屋の入り口に一冊のノートが落ちているのを発見した。


「あれ? ユキネさん、忘れていったのかな?」


 ユキネさんは今日は仕事なので、家には俺しかいなかった。


 ユキネさんの物を勝手に触っても怒られるし、見なかった事にしようとしたのだが、そのノートのページがパラっとめくれてしまった。


 そして思わず中に書かれていたのを読んでしまったんだが……



 ―4月○日―


 トウヤくんは私に気を使い、遅くにお風呂に入ってるみたい。

 別に気を使わなくていいのに。


 ―4月×日―


 トウヤくんと一緒にご飯を食べた。


 どうせ1人分も2人分も変わらないからと、ご飯を作ってあげると喜んで食べてた。


 リスみたいにほっぺた膨らませて食べてて面白かった。





 悪いと思ったが、自分の名前が書かれていたので読んでしまった。

 それにしても、ユキネさんは無表情というか、ポーカーフェイスなので笑ったりしているのを見た事がない。


 まあ、1週間前に初めて出会った人にそこまで打ち解けてないというのもあるだろうけど。


 そして……昨日の日付の日記。



 ―4月△○日―


 トウヤくんはだらしない。


 私の洗濯物の中にトウヤくんのパンツが入ってた!


 まあ、同居の記念にもらっておこう。


 それにトイレの使い方。


 便座は下げておいて欲しい。


 夜中にトイレに行ってお尻が嵌まってしまった。


 トウヤくんが立ってしてるのを見た事あるけど、今度から座ってして欲しい。


 お願い!




 ……ちょっと待て。


 洗濯物は俺が悪い、ユキネさんに申し訳ない事をしてしまった。


 2人の洗濯かごは別々に置いてあるのだが、俺が間違えたんだろう。


 だけど記念にパンツをもらっておこう、て何!?

 マズイでしょ!? パンツなんて持っていってどうするの!?


 あと……


 トイレの事も悪いと思う。


 女性に対して気遣いがなかった。


 でも……


 立ってしてるのを見た、って!


 覗いたの!? ユキネさん、ねぇ!?


 とにかく便座は気を付けよう……


 そして俺はノートを元に戻し、自分の部屋に戻った。



 次の日、俺も今日は仕事があるので、作業着を着てリビングに出てきた。


「おはようございます!」


「……おは……よ」


 同居人のユキネさんは朝が弱いみたいだ。


 だけど朝早く家を出なきゃいけない俺のために、ここ2日ぐらい早起きしてご飯を作ってくれている。


「すいません、朝ご飯作ってもらって」


「大……丈夫……ついで……だから……クゥ~……」


 まだ眠いんじゃ……


 近くにあったブランケットをユキネさんの肩にかけ、俺は朝ご飯をいただく。


 和食で簡単なものが並べられているが、作りたての温かいご飯はやっぱり嬉しい。


 テーブルに突っ伏し寝ているユキネさんを横目に俺は朝ご飯を食べ、そして仕事に行く。


「……ごちそうさまでした、いってきます」


 寝ているユキネさんを起こさないよう小さな声でそういうと、突然ユキネさんはガバッと目を覚まし、そして……


「トウヤくん、いって…………らっしゃい……」


 焦点が合ってない目で俺を見て、そう言うユキネさんが面白くて、少し笑いながら仕事に向かった。




 そして仕事が終わり家に帰ると、まだユキネさんは帰っていなかった。


 そして……


「また落ちてる」


 ユキネさんの部屋の前にまたあのノートがあった。


 さすがにまた見たら悪いよな……


 しかしまた自分の事が書かれてたら……


 悪いとは思ったが、どうも気になってしまいまたノートを見てしまった。




 ―4月×○日―


 2日前からトウヤくんの朝ご飯も作っている。


 それにしても…… トウヤくんの作業着姿……


 とても良い、早起きは三文の徳。


 朝は苦手だが、どうしても見たい。


 見たいったら見たい。


 ただ、私は気が付いたらテーブルで寝てたみたい。


 ブランケットがかけてあったけど、トウヤくんかな? もしかしてお化け!? ……恐い。


 そしてトウヤくんのいってきますの声が聞こえたと思って起きたら……


 トウヤくんのズボンのチャックが開いててビックリ! ……あれもファッションなのかな?




 ツッコミどころ満載だよユキネさん!


 まず、作業着姿が見たくて朝ご飯作ってくれてたの!? 作業着がそんなに良いかな?


 次に、お化けはいません!


 俺がかけたんだから! ……恩を売ろうとは思ってないが、お化けはないんじゃ……


 そして最後に……


 チャック開いてたなら言って下さいよ!


 トイレに行くまで気付かなかったじゃないですか!


 朝から全開で出社…… 恥ずかしい!


 決してファッションじゃありませんから!



 それにしても……


 ユキネさんは普段はクールで無口なのに、日記では、色々書いてるんだな~。


 ここ何日か分は俺の事ばっかりだけど……


 そしてノートを元に戻し、自分の部屋へ……


 


 そんな同居生活だが、これはまだ序の口……


 ユキネさんはまだ……




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