狩りに行こう
街の外は草原だった。
道だと思われる箇所は、馬車か何かの車輪の後だけ草が生えておらず、そこが道だとわかる感じだ。
遠くには、森だろうか?木々が鬱蒼としているのが見える。
その森の方角へ歩きつつ、辺りを観察する。
(本当にラノベやゲームなんかの世界観そのものなんだなぁ)
声には出さず、キョロキョロしていると
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。ごめんなさい、ずっと自分の話ばかりしていたのに、名前伝えてなかったの」
お隣さんが、話しだした。
「私は、ミィーファ。名前はこっちに来たばかりの時に知り合った私より少しまえに転生してきたって人が付けてくれたの。この名前は、この世界で違和感のない発音らしいの。私も今の貴方達のように色々とここでの生活をその彼女から学んだのよ」
「じゃぁ、俺達家族の名前は、ミィーファさんが付けてくれるのか?」
兄がそう聞くと、少し困った顔で
「そうねぇ、そうしたいのだけど、7人・・・多いのよ貴方達、考えるこっちの身にもなって欲しいわ。でも、名前は必要よね。よし、この狩りが終わるまでに決めて、帰ったら発表よ!」
そんなこんなで、名前はミィーファさんがつけてくれることになった。
そうこうしているうちに、やや木々が多く草の丈も大きくなってきていた。
「俺ちゃんと狩りできるか不安だ、こえぇ…」
森に近づいてきている雰囲気で思わずボロっとでた俺の言に父と兄が反応した。
「お前も母さんとコスプレする為に、しっかり筋トレしておけば、見た目もカッコよくイザって時にも動ける父さんみたいになれたのにな!!」
父さんが豪快に笑って言う。
ゲームキャラのコスプレを母さんとしたい一心で筋トレをはじめて、格闘キャラの技も繰り出し舞う姿も写真におさめたいって母さんの一言で各種格闘技を習った父さんには、モヤシっ子な俺の怖さ不安さなんてわからないだろう。
「馬鹿か?お前は!異世界だぞ?俺TUEEEEできるに決まってるじゃん?そんでミィーファちゃんは俺にメロメロになるんだよ!たぶん」
ラノベ脳の兄は、異世界=俺TUEEEEを信じているようだ。
そんな上手くいわけがない!
そして、ミィーファさんが、メロメロって何?って顔で兄を見たせいで、兄は自分に好意があって見つめていると絶対勘違いしているぽいし、うちの家族って…、うん、俺も楽しもう。
楽しんでいかなきゃ、異世界に来ちゃったんだしな、でもやっぱりモンスターとか怖い、かも。
俺ヘタレだなぁ。
そんな風に思っていると、ミィーファさんが突然警戒しだした。
「そろそろなの!ヤツら見えないから私のそばから離れないで」
シュッ
何かが居る。
俺たちの周りを凄い速さで移動しているようだ。
動く度に草がガササっと音を立てたり風圧がある。
「そこだ!」
ミィーファさんが、大きく跳ね叩きつけるように上からグーパンし、砂埃が上がった。
何もない所に、叩きつけたように見えたが、砂埃がおさまるとそこには、前世でいうなればゾウくらいはありそうな大きな何かがそこに倒れていた。
俺「デカっ、なにコレ」
父「おーーー凄いなぁ、ミィーファさんはスレンダーなのに、パワフルですねぇ」
兄「きゃー、ミィーファちゃん惚れる///」
三者三様の反応をしたが、実に語彙力が無い。
ミ「3人とも出来ると思うの。はじめはコツもあるし見本として実戦見てもらった方がいいかなって倒しちゃったけど、こいつは弱い方なの、ただ見え無いから音を頼りに場所を探るのが慣れるまで大変かも、でもねこいつバカだから豪快に音立ててくれるから、すぐに慣れて倒せるようになると思うよ!でも、こいつも倒されたくないから、逃げるし攻撃も勿論してくるから慣れるまでは15分くらいかかるかもね。あ、急所は私が叩いたこの上のここの所ね。」
倒したそのモンスターの上に乗り、急所を教えてくれる。
そしてそのまま、何か袋みたいな物を取り出したと思ったら、モンスターに袋をあてた。
その瞬間、あんなに大きかったモンスターが袋の中に消えていった。
俺「なにそれ、すごい。」
父「この筋力で引きずって行くのかと期待したら、そんな便利な物があるんですねぇ。」
兄「わぉ!この世界に来れてラッキー、おもしれぇ!ミィーファちゃん戦う時のさぁ、あのジャンプ力とパンチ力はミィーファちゃんだから?俺らもできる?」
ミ「出来ますよ。ジャンプからの叩き落としは、私たち種族みんなが使える技で、前世がどうであれ、全員一定の威力があります。最初から一定以上の威力を持ってる人も、訓練を重ねて強くなる人も居ますが、今まで一定以下だった人はいないそうなの」
ガササ ガササ
ミ「それじゃぁ、次はお父さん行ってみましょうか!」
父「おう、任せとけ!! 音を聞いて法則を把握してジャンプからの〜叩き落とし!」
ズドン!
父さんすげー、一発目で倒してるよ。
しかも早い!音が聞こえてから法則を把握するまでにだいたい5分はかかってるのに、一撃で倒したから7分かかってないくらいか?
ミーファさんが慣れるまでは15分くらいかかるって言ってたのは何だったのか…父さん規格外すぎるぜ!
父「ふふふん、どうだ!俺の力!!!」
ミ「完璧でしたね!お父さんは最初から一定以上の力をもった人なのかもですよ」
その後、兄・俺と続きモンスターを倒した。
どうやら兄も俺も、一般的な力を持っていたようで、最初の数回こそ手こずったものの、すぐに覚えて狩りが出来るようになったのだった。
ミィーファさんが、今まで一定以下だった人は居ないとかとか言うから、俺が第1号になるフラグなのかとドキドキしたじゃないか、まったくもう!
俺「ふぅ、疲れた、さすがに兄ちゃんと俺が慣れるまで狩りしたから、かなり深くまで来ちゃったけど大丈夫?」
ミ「はい、帰還魔法がありますよ。みなさんも使えれるはずなの、帰れる場所は自宅のみだけどね」
「「「魔法?!」」」
さすがは異世界だ、やっぱり魔法もあったかー。
兄「ねぇねぇ、ミィーファちゃん、帰還魔法以外何か使える魔法ってあるの?」
ミ「いいえ、私たち種族は帰還魔法だけですねぇ、ただ学校に通って学べば他の魔法も少しは覚えられるらしいのですが、元々が近接攻撃、特に打撃系を得意する種族なので、魔法はあまり期待出来ないと思います。」
兄「そっかー、残念。俺、魔法剣士が良かったんだけど、打撃系かぁ、ゲームで言うとこのモンクとかそんな感じなのかなぁ」
俺「俺は、槍が得意な種族で回復系魔法も少し使えたら嬉しかったなぁ。」
父「父さんは、この種族で良かったぞ。拳に込めた力で倒すとか最高じゃないか!」
雑談に花が咲いているとミィーファさんが、
ちらりと空を確認してから
ミ「そろそろ暗くなってくるし帰ろうか? 帰還魔法は、こうやって右手の人差し指と中指を2本同時に右から左にズラしてそのまま上にいって右へ下へって感じに◽︎(四角)を作って、オープンと唱えると、こうやって四角の出来た範囲に選択ウィンドウが出るから、その中から帰還魔法を選ぶと帰れるの。このウィンドウの中身は自分にしか見えなくて、他の人のウィンドウは青白く見えるだけなんだよ。みんなが帰還したの確認したら最後に私も戻るね。戻ったらあなた達の家に行くから待っててね。」
そう言われて、同じようにやってみると、ウィンドウが出た。
魔法以外も何かあるようだが、とりあえず今は帰ろう。
帰還魔法を選ぶと、ふわっとした感覚の後、家の前にいた。
父さん兄ちゃんも無事に帰還したので、家に入りミィーファさんの来るのを待つとした。
今回は、前3話よりも長めにしてみました。
1話どのくらいが、読みやすいのかわからず、毎回長さに違いがあるかもです。
次話は、1月29日前後を予定しています。
すみません、間違いがあったので、訂正しました。
訂正箇所:ミィーファのセリフ
気配がない→見えない