母さんはアイドル2
そういえば熱狂的で母さんを誘拐しようとしたくらいなのに、何で誰も強行突破で家に突入してこないんだろ?
みんな庭にすら入らず、家の中を覗き込んでいるだけで、プレゼントとかも投げ込んだりしないのは何故なんだろう。
「なぁ兄さん、何で外のヤツら強行突破してこねーの?」
「ん?一時はやばかったんだけどな、昨日1番に母さんのファンになって言う魔法を少し使えるって言う人が、家の周りに結界を張ってくれた」
ハルドがそう教えてくれると、それに続きラルドが珍しく饒舌に話す。
「そうそう結界は5日間くらいもつって話しだ。んで結界魔法は媒介アイテムが高い上に、この街には売ってないらしくて次は張れないとも言ってたから、それまでにどうにかしないといけない。
だけど、入って来られないのと同時に俺らも出ることが出来ないから、動きようがないんだけどな…。
声は聞こえるから、誰か協力者にお願いしてどうにかするかだが、今の時点じゃ家を囲うように人が居るから、どうにもならない。」
「なんだよそれ、積んでんじゃん」
その後一晩中兄さん達と話し合ったが結論は出ず、家の周りにいる人らも夜中はやや減ったが、0になる事は無かった。
朝になって外から「おーい、カルド君〜」とミーファさんの声が聞こえてきた。
その声を聞くやいなや、俺が呼ばれたのに兄さんがサッサと身支度を見直し外に出ていった。
大丈夫かよ?って思ったのも束の間、昨日の帰宅時の俺状態だ。
母さんのファンが急に騒ぎ出し、兄さんに母さんに合わせてくれと懇願しているようだった。
妹達はその声で目覚め、また不安そうな顔をしたので、「ハルドが外の皆の話を聞きに行ってくれたんだ。きっとみんなと仲良く出来る方法を見つけて来てくれるから大丈夫だよ」と、不安にならないように伝えた。こんな時の嘘は許して欲しい、嘘も方便だ。
それから、10分ほどして兄さんが戻ってきた。
ミーファさんに事情を話したら、3日間でなんとかするから、それまで家から出られないけど我慢しててと言われたらしい。
ミーファさんならきっと良い解決方法を見つけてくれそうだ。
だけど本当に3日間でどうにかなるんだろうか?
家族全員で居間に集まり、ミーファさんと話した事を兄さんが伝える。
ミーファさんを信じて待つって事でみんな納得した。
食料は、俺が作った保存食いっぱいあるし、飽きてきたとはいえ、この状況だし仕方ないな。
それからの3日間は、家族全員が一切外にもでず、窓も全てカーテンを閉め、外からは家の中の様子がわからないようにして過ごした。
妹達の為に、ラルドが家にあった木材で木彫りの人形を作ってやったり、俺が記憶にある漫画のストーリーを話し聞かせたり、ハルドがブラッシングしまくって過ごしたりした。
家族全員が引きこもる事に関しては、特に不便を感じない引きこもりオタク気質で良かったよ!
その日の夕方になって、ミーファさんがやってきて、外からハルドを呼ぶ。
今度は俺じゃなく、最初から自分が呼ばれた事に、ご機嫌で「ちょっと話し聞いてくるわ」と、兄さんはミーファさんの元へと行った。
そしてすぐにミーファさんと一緒に戻ってきた。
「ミーファさん?!どうやって結界の中に入ったの??」
「これです」
ミーファさんは紅い宝石のようなものを見せてくれた。
「「きれぃ〜」」
妹達が、ほぅ〜っと見惚れて呟く。
「なんですか?それ」
「魔石よ、これを持っていれば、結界の出入りは可能よ。ただし1つの魔石で1人しか効果はないし、無限に使用できるわけでもないの、だから使い所はよく考えなきゃよ」
「でも魔石って高いんじゃ・・・ミーファさんいくつ用意してくれたんですか?」
「私が今使ったのも含めて2個しか用意出来なかったわ。魔石は買えば高いけど自力GETしたらタダだから、ドロップするモンスターを倒しにこの3日間狩場に篭ってたのよ」
「3日間篭っても2個・・・大変な狩りありがとうございます」
「いいのよ、で今後だけども!」
ミーファさんは、そこで何かを取り出した。