本・・・
露店で道のりを確認したので、今度は無事に雑貨屋へ到着する事が出来た。
雑貨屋には本当色々な物が置いてあったが、お目当ての漫画や小説は無かった。
妹達はそれでも、可愛い髪飾りや、アクセサリーにはしゃいでいる。
やっぱり女の子だなぁ、あぁ言うのホンットに好きだよなぁ。
買ってあげたかったが、小物がだいたい2リクス〜なので、残金7リクス9000ルクスの俺には、可愛い妹達の為とはいえ、一瞬躊躇してしまった。
が、キラッキラした目で俺を見つめながら、欲しい髪飾りを手にしているアニーナと、ブローチを手にしているレニーナの姿にすぐに落ちてしまい、買ってあげることにした。
アニーナの髪飾りが3リクス5000ルクス、レニーナのブローチが3リクス2000ルクスだ。
残り1リクス2000ルクス・・・どうしよう、もう完全に本買えないな。
あとで、モンスター狩って肉を売ってみるかな。
と思い雑貨屋のおばさんに、自分達の前世には色々な種類の本があったが、この世界にもあるのか聞いた。
おばさんは転生者の両親を持つ、この世界生まれの人だったらしく、俺が言うところの小説にあたる本はわかるが、この世界の紙は非常に高く小説は獣人が住まう街々には無く、人族か龍族の住まう王都に行かなければ手に入らないとの事だった。
また獣人族と龍族は仲が良く交流があるとの事で、交流があまりない人族の王都に行くよりは龍族の王都に行った方が安全だとも教えてくれた。
おばさんにお礼を言い店を出て、一旦家に戻ることにした。
帰る道中に妹達にも本がこの辺りにはなく、王都という大きな街に行かなければいけないこと、本はすごく高いので今王都に行っても買うことは出来ないことを伝えた。
すごくガッカリしてはいたが、ラルドの作ってくれているボードゲームも楽しみなようで、とりあえずはラルドの作るゲームで遊んだり母さんとコスプレ楽しんだり、あとはまだ街中にも見てみたいお店があると言うことで家族の誰かしらと街を見て回ったりしてるから、カルにぃ頑張って本買ってきてね(にっこり)って満面の笑顔で言われてしまった。
可愛い妹達の為にも、まずは金稼ぎだな。
後は、王都までの道のりを知ってる人を探して教えてもらって、それから距離によっては旅になるだろうし場合によっては旅支度も必要かぁ・・・。
考えただけで、めんどくせぇ!!
妹達の為じゃなかったら、俺無理だわコレ。
はぁ〜、異世界でも半引きこもりでアニメ観まくってたかったなぁ。
家に帰ると、ラルドが満面の笑みで妹達を出迎え、2人に出来上がったボードゲームを見せると、2人を俺から奪うようにゲームを3人ではじめた。
チラっと見た感じ、木を削って盤と駒を作ったようだ。
盤には、木炭のようなもので描いたようだ。
黒い煤っぽいものがややついたそれは、兄さんの絵心と相まって独特の絵本のような世界観がある。
ちょっと面白そうだ。
妹達は嬉しそうにゲームをはじめたし、兄さんは今まで妹達を独占していた俺を仲間にいれてはくれそうもないし、ちょっと隣へ行ってミーファさんに金稼ぎについて聞いてこよう。
トントントン
ドアについた金具を鳴らす。
と、中からミーファさんの「はいはい〜、今行きま〜す」と元気な声が聞こえてきた。
すぐにミーファさんが顔を出す。
「カルドさん?今日は約束してないですよね?どうしましたか?」
キョトンとした顔で尋ねてくる。
「連日おじゃましてすみません。今日は聞きたいことがあって」
「?、聞きたいこと?私にわかることならお教えしますよぉ」
「お金の稼ぎ方についてなんですけど、えっと龍族の王都まで本を買いに行きたいんでずが、本はとても高いと聞きまして、それに王都までどのくらいかかるのかもわからないので、旅支度が必要ならその代金も稼ぎたくて、手っ取り早く稼げる何かって無いですかねぇ?」
ミーファさんは俺の話を聞き、目を見開きかなり驚いている様子だ、あれ?俺、変な事言ったか?
「本って、あの本ですよねぇ?相当というか、目がとび出る高さですよ?買うって本気ですか?」
「え?そんな高いの???」
「えぇ、紙が1枚500リクス程度します。本となればそれが50枚前後で綴じられているので、それだけで単純に2ラクス5000リクスです。そこに特性の炭で作った紙に書くものを使い書き込んだあと、書いた物が消えてしまいまわないように魔法でコーティングするので、完成品はだいたい4ラクス5000リクスくらいになってしまうんです。」
ちょっと待て!今日買ってやった妹達のアクセサリーがだいたい150個くらい買える金額?いやもっとか?それでやっと紙1枚って事か???
無理ゲーじゃね?本買う金集めるのに何年かかるんだよ(滝汗
「・・・どうしますか?高くても金策して買うのであれば、お金の効率良い稼ぎ方お教えしますけども、でも常に危険がつきものな稼ぎ方になりますのでよくよく考えて下さいね。」
「わかりました。とりあえず、1晩どうするか考えて見たいと思います。考えがまとまったら明日また訪ねるので、よろしくお願いします」
家に帰り自室に篭もり考える。
本は欲しい、誰かの書いた作品は読んでみたい。
でも頑張って頑張ってやっと手にしたとしても、読んでしまったら終わる、また次が欲しくなってもすぐには買えず、1から稼いで稼いで数年かけてやっとまた手に入るの繰り返しだ。
そんなに見れない期間が続くなんて考えられない、考えたくない!
でも読みたい!あぁぁぁー、どうしろってんだよー!!
夕飯で家族が揃ったところで、今日聞いた話をみんなにする。
各々反応はやや違うが、だがやはり皆絶望の面持ちだった。
父さんなら「俺ならある程度モンスター倒せるだろうし、俺が先だってモンスターを倒しながら金策しよう!」くらい言うと思ったのだが、どうやら今日母さんは出来上がったコスプレ衣装をすぐに着て、広場でお披露目をしたようなのだが、この姿ってのもありめちゃくちゃ可愛いかったようで、街の人達が母さんをアイドルのように扱ったらしい。
それで心配で心配で、しばらくは母さんから離れるという選択肢が今の父さんにはないようだ。
兄さんや妹達も、そんなに手に入りづらい物ならば、他のものだったり自作ゲームや自作グッズで我慢しよう的な考えが出てきたようで、最初に俺の話を聞いた時の絶望顔からは変わり、前向きにじゃぁこんなのを作ってみるのはどうだろう?とか相談しあっている。
諦めきれないのは俺だけかぁ・・・。
月明かりが差し込む部屋で1人考え、眠れない夜を過ごすのであった。