episode2-2 侵入
シェリル達はスキンに乗り込むためスラン平原に向かった。磁界石はファルクが装備してた方がいいだろう、とアラフォースに言われたがシェリルはそれだけは頑なに拒んだ。確かに、魔硝石無しで魔力を操れ魔術を発動できるシェリルが魔硝石を持つ意味はほとんどない。しかし、磁界石は祖母の形見。事情が違うから、ということでファルク、アラフォースともに折れたのだった。
「まあいいか、ここの連中には苦労してねえしな」
まだ磁界石は自分で持ってた方がいいと言いたいのだろうか、ファルクはそう言った。
「魔硝石越しに魔術使った方が楽は楽だしいいじゃない。まあ、何言われてもこれはダメだけど」
ここまで、スキンの兵士の大半を魔術で倒してきているシェリルがそう言った。魔術をシェリル達が使えることはスキンの兵士はわかっているらしく、近接戦に持ち込もうとしている兵士が殆どだった。そこから魔術が使えることを看破されてると見抜いたシェリルは遠くからアイシクルレインなどの魔術をかけ気づかれないうちに勝負をつける戦法をとりはじめた。それが功を奏し、ファルクの所持弾丸をほとんど使わずに進むことに成功している。シェリルも魔硝石を適度に利用することで疲労を抑えつつ進み、日が西に傾く頃にはスラン平原の7割方を踏破していた。しかし、日が沈み始めたころ。スキンタウンの前ではラドンとクレイバーが対峙していた。
「クロスケーション幹部ラドン・・・!ここでお前を始末してやる。」
「なんだお前は。マルクセングからの使いらしいがスキンに何の恨みがある。」
「ルレノキングダム・・・この国の事は覚えているだろう?」
クレイバーが今は亡き自らの祖国の名前を出す。ラドンは怒りに震えるクレイバーを鼻で笑い、言い返す。
「ああ、あの滅んだ小さな島国か。皇帝の命令だったんだ。仕方ないだろ。」
「・・・!!許す気なんぞ最初からなかったが手前だけはこの場で始末してやる。」
「一人でどうする気だ?こっちには魔硝石だってあるんだぞ」
そういうラドンの手には、確かに火属性の魔硝石である火炎石が握られていた。どうやら、クレイバー達が魔硝石の事を知っているのはクロスケーションも把握しているらしく、始末することを最優先としているようだった。
「レ二ウムの入れ知恵か・・・スキンエンパイア・・・一体どこまで腐った国なんだ?」
いざ戦いが始まろうかという場面。シェリル達がそこに追いついた。
「ラドンか・・・魔硝石を持ってるみたいね。」
「魔硝石を彼らのような人間に持たせるべきではありません。一刻も早く回収するのです。」
そして後ろから出てきたファルクは、ラドンを無視しそそくさとスキンに入ろうとする。もちろん、ラドンが見逃すはずもない。
「おいお前!俺を無視して通ろうとするんじゃねえよ!」
「悪いが俺たちは忙しいんだよ。だからお前も俺たちの事を無視して通してくれ。」
ラドンからしてみれば本末転倒な話だった。シェリル達をスキンに入らせないためにスキンタウンの目の前で見張りをしているのに、そのシェリル達を無視して通せ、とファルクは言っているわけだ。
「どういう理屈だよ!俺がお前らを無視したらここで見張ってる意味がなくなるだろ!」
「・・・ラドンは魔硝石を持ってる。ここでどうにかしなきゃ、後々響くんじゃないかしら。」
冷静な判断にファルクは足を止め、銃を出しつつシェリル達の元に戻る。
「・・・そうだな。ここで取り上げといた方が戦力を下げるためには良い。」
完全にこの間の抜けたやり取りに気を抜かれたクレイバーが口を開く。
「シェリル、この男はなんなんだ?」
「そいつはファルクっていうの。とりあえず味方だから大丈夫。」
「わかった。奴らの魔硝石を奪い取るぞ。」
「魔硝石を奪うのはこっちだ!我が国に歯向かったことを後悔して死ね!」
その声と共に対象者の脳と筋肉に働きかけ、腕力を増大させるパワーブレイブを自らにかける。そうして振りぬかれた斧の威力は、桁違いに上がっていた。辛うじてクレイバーは避けたものの、その床板の石は一気にヒビが入る。こういう場合、クレイバーには頑張って足止めをしてもらう他はない。ラドンにとって近接武器を使って戦うクレイバーと、魔術や銃などで遠くから攻撃のできるファルクとシェリルでは圧倒的に後者の方がいやらしいのでこちらに攻撃がいかないようにするにはクレイバーが体を張って止めるしかない。かと言って、今の腕力が強化されたラドンと生身のままのクレイバーでは、どうなるかは明白であった。
(そうだ、そういえばアラフォースが別の応用の仕方ができるって言ってたわね。それって・・・)
そうして考えを巡らせたシェリルはラドンの使ったパワーブレイブの魔力の流れから想像し、それをクレイバーに放ってみた。
「なんだ・・・!?ウォラッ!!」
圧されていたクレイバーが、その魔術の効果かラドンを押し返した。瞬発的に出る力が上がったことでクレイバーとラドンが互角になり始めたのだ。
「ハァ!?アイツ人が使った魔術そのまま使えるのかよ!」
「相手は俺だ!」
ラドンがシェリルが自分の使ったパワーブレイブを使ったことに対して驚いている間に、クレイバーの一突きがラドンの脇腹を一閃する。そして磁界石により瞬時に放たれた磁力の魔術。周囲の磁界を操り、対象に一気に負荷をかけ圧迫させることにより大ダメージを与える魔術、マグネティックスプラクションを受けラドンは倒れた。
「クソッ、こいつ・・・!しかも魔硝石まで使えんのか・・・。」
倒れたラドンから火炎石を奪い取った。
「これが火炎石ね・・・ラーニングしたら、ファルクに渡すわ。で、アラフォース。これだけじゃないわよね。」
「ええ。スキンエンパイアのような国家が、これしか魔硝石を持っていないと考えるのは難しいでしょう。」
語気を荒げたままのクレイバーが、そのままラドンに問いかける。
「ラドン!これ以外にも魔硝石はあるのか!?」
「そんなことわざわざてめぇらに教えてやる義理はねえ!次会った時後悔させてやるからな!!」
語気を荒げ、ラドンは去った。
「腰抜けが・・・ところでシェリル、なんでスキンに入ってきたんだ?」
「説明したいけど・・・こんな所でちんたらしてるとまずいわよね。ファルク!安全な場所があるって言ってたわよね。」
「ああ、あるぜ。とりあえず入ればわかることだ。ついてこい。」
そう言い、ファルクは走っていく。
「シェリル、あいつは本当に信用していいのか?無駄に偉そうでどうも気に入らないんだが。」
「まぁ、確かに無駄に偉そうで腹立つかもしれないけど筋の通った行動もしてるしその辺は信用できると思うわ。・・・それを私に聞くってことは私のことは信じてくれてるのかしら?」
「まぁな。というかあの無駄に偉そうな眼鏡とそこの魔硝石知識者と比べればお前のほうが断然信用できるな。よくあんな連中と話してられるな。疲れないか?」
「ええ、疲れるわよ。・・・それよりもファルクについていかない?私指名手配されてるからこのままいて捕まったらたまらないわ。」