Last episode 2 ナルグドとガイア
ここはナルグドの中枢都市、ナルス大聖都市。ゼフィリアとトキファは二人で、久々に帰って来た。
「久しぶりだな、トキファ!ここに戻るのは!」
「はい!・・・でも猊下、僕はニルティーネに戻らないといけないんです。一旦別れないと・・・。」
「・・・そうか。では用が終わったら入口で落ち合おう。」
そう言うと、ゼフィリアはすぐさま大聖堂に向かう。ゼフィリアは失踪したと信じられティミセカは死に、ドラゴンは敗れたと伝わりナルス教が崩壊した現在のナルグドでは大聖堂の権威はすっかり薄れ、一部の熱狂的な信徒以外は参拝にも来なくなっていた。
「ここでも・・・多くの争いがあった。だからこそ意味がある場所だ。いつまでも残さねばなるまい。」
そうして、ゼフィリアはある部屋に歩みを進める。その部屋にいる二人が、ゼフィリアにとって一番信用できるナルグディだった。
「ヒース!アーシィ!」
「ひあああっ」
「猊下!?猊下ではありませんか!お久しぶりです、よくぞご無事でいられました!」
「うむ、久しぶりである!・・・ところで現在のナルグドの様子を聞くために我は来たのだが。今、どうなっているのだ?」
そう聞くと、アーシィもヒースも肩を落とす。ナルス教がナルグドの民の求心力となっていた時に宮仕えを始めた二人にとってはやはり今の大聖堂の現状はあまりに寂しいのだろう。
「・・・やはりドラゴンが敗れたのを皆が知ったと共に大聖堂の権威は没落しました。エスカフローラが亡くなり代替の統治者もいなくなってしまったので現在、聖堂都市は混乱しています。」
「・・・そうか。そうだろうな。」
「我々は、もう必要ないのでしょうか?」
「ナルスの教えを我々は守り、それを正義だと思ってきた。そしてその教えこそが、民の求心力だった。・・・確かに教えは間違いであり、同時にナルスの教えは民の求心力ではなくなった。」
「・・・我々のしてきたことは、過ちだったということです。これからはどうすれば・・・。」
そうアーシィが肩を落とすと、ゼフィリアはアーシィとヒースの肩に手をのせる。
「・・・我はあの後、様々な場所を見て回った。どこでも過ちを犯した人間はたくさんいた。我々だけの話ではないのだ。反省は確かに必要だ。しかし、もっと必要なのは改善ではないか?今までの教えが間違いであったのならば、それを正していけばよいのだ。勿論、それは簡単な話ではないだろう。だが、考えてみると良い。世界の流れに対応し、変わろうとした者は何人もいるのだ。」
「・・・どのようにすればよいのですか?」
「未来を見据えるのだ。詳細は分からなくとも、未来を大局的に見ることは、十分に可能だ。今後、我々はエレデアスを追うことになるだろう。それはつまり、エレデアスを見ればナルグドの未来を凡そは見れるはずだ。・・・それをお前たちができるかはわからない。しかし、できなければ他の民が努力してできるようにするだろう。・・・それが今、ナルグドで必要なことなのだからな。」
そう言葉を切ると、ゼフィリアはアーシィの部屋を出て行こうとする。
「猊下!どちらへ?ここに戻られるのではないのですか?」
「すまないな、アーシィ、ヒース。我はまだ、ここで足を落ち着けるわけにはいかぬのだ」
そして一方、トキファの生まれ故郷ニルティーネ。
エレデアスと比較するとお世辞にも発展してるとは言えないナルグドだが、その中でもここは特に発展が遅れていた。事実、ナルス教が崩壊したと知る人間も殆どおらず未だに熱心にナルスの教えを守り生活してる人が多く見られた。
トキファが行きたかったのは、実家だった。
「ただいま!」
「おお、トキファか。・・・英雄になるのではなかったのか?」
「うん、そのつもりだったんだけど・・・色々あってね。で、僕家宝を受け継ぐことにしたんだ。・・・全部終わってからだけど。それを言いに来たんだ。」
そうすると、トキファはすぐに家をまた出てしまう。
「トキファ、どこに行くんだい!?」
「ごめんね!まだやらないといけないことがあるんだ!」
一方、セラフィスノ。
シェリルとクレイバーは、部屋にいた。セイバーに流石にガイアは遠すぎて今から一週間で往復するのは無理だと言われ、この二人はセラフィスノに居残っていた。
「・・・一応電話は渡されてるのよね。」
そうして、セイバーに渡された電話をかける。・・・かける相手はセレンだ。
「もしもし?セレン、いる?」
『シェリル!?今どこにいるのよ!もう半年も帰ってこないで!スズと私で手分けして貴女の分の仕事もしてるけど限度があるわよ!』
透明感のある、綺麗な女性の声だった。その人がスキン公国で国家総司令官を務めているセレンであることはガイアでは知れ渡っている。
「ごめんなさいね。・・・ところでガイアは今どうなってるかしら?」
『別に大きな事件は起きてないわよ。至って平和って感じね。ようやくコインの敗戦処理で暴落してた価値も戻ったからバランスは元に戻ったって感じね。にしても何?アルゴンは実はエスカフローラって別の惑星の人間でどうたらこうたらとか言ってたけどそれはまだ片付いてないの?』
「ああ、アルゴン・・・じゃなかった。エスカフローラの件は解決したんだけど別の問題が起きちゃってね。アラフォースが裏切って倒さないといけなくなったの。」
『ほっといて帰ってきちゃえばいい・・・って言いたいけどほっとくと何か問題が起きるから帰れないのよね。』
「ええ。どうやら宇宙を消滅させるのが目的みたいで、倒さないとガイアも消滅してしまうわ。」
『仕方ないわね、終わったら大至急帰って来なさいよ!貴女がサインしないとどうにもならない書類とかたっぷり溜まってるのよ!貴女がいないと債務者もろくに支払いに来やしないわ!』
電話はそうして切れる。・・・ガイアは至って平和のようだ。
「ガイアは平和みたいね。安心したわ。・・・しかし、アラフォースね。そんなことのために私を造って魔硝石を集めさせてたなんて。」
「セレンとかガイアのために魔硝石は磁界石と銀河石以外は置いていくって言った時若干難色を見せやがったのも納得行ったな。・・・宇宙原理主義だか何だか知らねえが許せる話じゃねえよな。」
そして、セラフィスノのトランスポーターの前。セイバーはニアとゼフィリアから連絡を受け、そこで軍部の三人とサーヴィルの二人で待っていた。
「・・・遅えぞ!てめえら!」
アストラを連れたニアと、ゼフィリアとトキファが戻ってきた。
「悪い悪い。・・・行こうか、ブラックホールに。」
「セイバー元帥。僕もアラフォースの打倒、お手伝いします。ウィルとともに技術面でのサポートをさせていただきます。」
アストラが名乗り出てきた。しかし以前のように、セイバーがアストラに対して何か下心を見せるようなことを言うことはない。
「そうか。技術面でのサポーターがウィルだけじゃ手不足だと思ってたからありがてえ。」
そう言った後に、ニアの耳元に口を近づけ囁く。
「ニア。アストラちゃん泣かしたらマジでぶっ殺すからな。絶対に幸せにさせろよ。」
アストラが自分のことを好いていたことをいつ気づいたのかはニアにはわからないが、結構な威圧感を込めて言っていたのでニアは頷くしかなかった。
そしてセラフィスノのコックピットに、セラフィスノの乗組員が全員集められる。セイバーによって、だ。
「恐らく、アラフォースはこの時を待っていたんだろう。エスカが倒れるこの時をな。俺様もエスカには恨みがあったのは確かだ。姉貴、ハーヴァ=アスタリスク元元帥が殺されたからな。だが俺様達がエスカを倒そうと思っていたのはそれ以上にエレデアスや銀河を奴の手から取り返すためだ。野郎は俺様達の考えの範疇を超えてた。破壊のため、エレデアス滅亡のためにエスカを殺したんだ。・・・恐らくエスカさえ殺しちまえば残りは雑魚しかいねえとでも思ってたんだろう。舐めた野郎だぜ。・・・あの舐め腐った野郎に、一泡吹かせてやろうじゃねえか、手前ら!!行くぞ!!」
全員の気持ちは一つになった。セラフィスノは、アラフォースの作り出したブラックホールへと突き進む。
エレデアスのために、ガイアのために、ナルグドのために、サーヴィルのために、一行はアラフォースを倒す。
この銀河を、守るために。




