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銀河騒乱   作者: 村山龍香
第二章 銀河編
56/63

episode19-4 正体

「殺す気か?俺はそこまで考えてなかったぞ。」

「ええ。」

アラフォースは鎌を依然としてエスカに向けながらニアにあっさりと答える。そのアラフォースに、エスカは反抗的な目を見せていた。しかし、重傷を負った彼は立ち上がることはできない。

「・・・くだら・・・ない・・・だと・・・?俺は・・・ただ・・・ガイアを・・・エレデアスの皆を・・・!」

しかし口答えをするエスカに、アラフォースは冷たい目を向けていた。

「ほう、貴方は自分自身をガイアを救った英雄だとでも思っているのですか。」

「・・・ああ。あの時・・・アインソフを止めなければ・・・大勢の民が・・・死んでいた!」

「確かに、アインソフのやり方は間違いでした。しかしそれはエスカフローラ、貴方のやり方を肯定することにはなりませんよ。」

「だから何だと言うのだ!俺がやらねば全てが終わっていた!」

そして、ニアの疑いの目を肯定するかのようにアラフォースはニア達にとっては身も蓋もない発言をする。最早、隠す気もないようだ。

「すべてが終わる?結構なことではないですか。エレデアスなど、ビッグクランチで滅んでしまえばよかったのですよ。」

「・・・やっぱりか。お前、そのために俺達とエスカフローラを倒そうなんて言ったんだな。」

「疑われていたようですね。」

「ああ。だからわざと連れて来なかったんだ。どういうつもりだ?」

「わかりませんかね?メイジェルの滅亡もサーヴィルとの戦争もナルグドの支配も。すべて次元移動を行ったエレデアスが原因なのですよ。」

エスカが、ニアに指示を出す。

「グッ・・・ニア!そいつを止めろ!手遅れになるぞ!」

「あんたの指示なんざ今更聞きたくもねえんだけどな。・・・しかしここは止めねえとまずそうだな。アラフォース、てめえの目的はエレデアスの壊滅か?」

「半分不正解で半分正解と言った所でしょうか。」

「・・・最初から私達を裏切る気だったみたいね。」

「全ては、ガイアをエレデアスから救うためですよ。」

そして、アラフォースはそのまま置かれていた思考制御システムの元となる機械に手を付ける。アラフォースの手に魔力が集まると、その機械を打ち砕いた。

「制御システムが・・・!」

「非常に時間がかかってしまいましたが・・・これでガイアの人々もナルグドの人々もエレデアスの思い通りに動くことはないでしょう。」

「アラフォース・・・!!ニア!お前のせいで・・・!エレデアスがこいつに滅ぼされるぞ・・・!」

そしてアラフォースは鎌を再びエスカに構えなおし、エスカを冷たく見下げる。

「違いますよエスカフローラ。貴方がニア達に負けたのが原因です。貴方はガイアの人民を救うと大口を叩いてハーヴァを殺しておきながら守れなかったのですよ。」

「・・・ッ!」

ハーヴァと言う名前にエスカは目を見開き涙を流す。

「今まで貴方を突き動かしてきたのはハーヴァ=アスタリスクと言う女性への罪悪感でしょうか。何れにせよ、そんなくだらないものに囚われ続けてきた人生、お疲れさまでした。」

そして、アラフォースの鎌はエスカの首に致死の為に十分な裂傷を刻み、エスカは動かなくなる。今までエレデアスを支配し続けた男の、あまりにも呆気ない最期だった。

「・・・で?どういうつもり?」

「わかりませんかね?エレデアスが滅びなければガイアの存続に悪影響を及ぼすのですよ。エレデアスが滅ぼした星のうちの一つ、メイジェル。その星は滅亡する前に、全ての魔力を9つの石に注ぎ込みました。この魔力を注ぎ込まれた石は魔硝石と呼ばれ、強大な魔力を保持しています。しかしエスカフローラはそれを隔離しました。使われることのないように。魔硝石はいわば、エレデアスに銀河を支配させてはならないというメイジェルの怒りの遺志です。ならば、私が今は亡きメイジェルの遺志を代弁するのみです。・・・未来から来たと称する者達に、未来を奪われた者達の怒りを。さて、もういいでしょう。・・・貴方方にも死んでもらいましょう・・・!」

「やめろおおおおおおお!!!!!!」

そしてアラフォースに飛びかかったニアの瞳は、血に染まったように赤く染まる。

「リストブレイク・・・?しかしエレデアスの人間に魔力など・・・!?」

そのニアに、アラフォースは驚きを隠せない。アレファスリが魔力を持ってるなど、ありえないからだ。しかし、ナディアの前で発動した時のようにニアの理性がなくなるなどと言うことはなかった。リストブレイクしている状態を、どういうわけか今のニアは制御できていた。

「・・・?」

「エレデアスは魔力や魔術を捨てたわけではない。統治のために使えなくしていただけ。代々グローレンス家は、大衆から魔力を吸い上げ、それを自分達に注入することで独占していた。魔力と言うのは、才能で左右されてしまう。だからグローレンス家は魔力を吸い上げ、才能に左右されない機械による社会を作り上げるために魔力を独占していた。そしてその魔力は私達にも当然受け継がれている。しかしその魔力は知覚されない為に特別な制御がされていた。魔力を使わせないために。」

そう、ルーアが述べる。思考制御システムが完全に破壊されたためか、魔力に関する知識を完全に思い出したようだ。

「グローレンス家、ですか。またしても、私の邪魔をしようと言うのですか・・・。」

「ということはこれは魔力ってことか・・・!!」

その隙に、連絡を受けたらしいナディアが基盤に打ち込みをする。

「なっ・・・船が発進している!?」

「伏せてっ、皆!!」

そうして、7人が伏せると・・・。


・・・転送された先は、セラフィスノだった。

「・・・あれ?」

「ウィルから連絡が入ってね。セラフィスノへ強制転送可能な距離にジャスティーを近付けるために発進させたんだ。」

ナディアは機械は使えないと思っていたニアは驚く。

「えっ?でも機械は専門じゃないんじゃ」

「あのねえ、私は軍部の大将よ?お姉ちゃんやウィルには全然及ばないけど戦艦を最低限動かすくらいはできるから。」

「お二方、そんな話をしている場合ではないではあります!・・・そう甘くはいかないようであります!」

そうして、ウィルがニアとナディアに宇宙用の望遠鏡を渡す。二人が見つめる先には、黒い点。

「あれは・・・。」

「ブラックホールだな。アラフォースの野郎、ビッグクランチをまた起こそうとしてるみたいだな。ジャスティーも吸い込まれたみてえだ。」

「でも、アラフォースはあそこにいる。・・・スケープ、あのブラックホールがビッグクランチを起こせるレベルまで成長する期間を見積もれるか?」

そうして、スケープが解析し、分析を行う。

「・・・あの規模だと自然成長であれば200年はかかるだろうな。しかし、アラフォースの魔力によって成長が早められていることを加味すれば三ヶ月もかからない危険性もある。少なくとも一ヶ月以内には対処せねば危険だろう。」

「・・・なら準備を整えよう。色々やることがあるはずだ。」

そう、ニアは言う。一ヶ月以内に準備を終え、ブラックホールに向かうことを決めた。

「まずはどこに行くんだ、ニア?」

「エレデアスとナルグドに一度行こう。」

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