episode19-2 対峙
セイバーに救出され、7人は宇宙軍事基地に来ていた。
「何つー奴らだ。惑星エレベーター半壊させたらしいな。」
「主原因は大体ナディアだけどな。」
「はぁ、キレた時のナディアが出たのか。」
ナディアも、時間が経って流石に頭が冷えたのか黙っている。
「んでよ、ニア。お前らエスカと戦おうってんだろ?」
「そうだな。」
「よし、じゃあ俺様も戦ってやろう。感謝しな。」
「ほんとですか!?」
黙ってたナディアの目の色が変わる。戦力的にも、彼の存在は大きいだろう。
「それでニア、エスカの野郎がどこにいるかは知ってるか?」
「保安部だろ?そこしかねえだろ」
「半分正解だけど半分不正解だな。あいつは保安船ジャスティーって船でお前らを追う準備をしてたんだ。」
「じゃすてぃー?」
聞き慣れない船名に、ニアとルーアが疑問符を浮かべる。アストラも協力してないらしく、一行の中で知ってる人間は誰もいなかった。
「成程な、誰も知らねえってことはジャスティーはエスカが極秘に作ってたみたいだな。しかしガバガバだな、軍部には建造時点でウィルから情報が入ってたぜ。んで、勿論トランスポーターはお前が言ってた通り惑星保安部にある。まぁ保安部の管轄なんだから当たり前だな。」
「わかった、保安部に向かおう・・・っていきたいところだがちょっと待っててくれ。」
ニアは、アストラを連れて宇宙軍事基地から出ていった。
ここはアストラの事務所。アストラは泊りがけで仕事をすることも多く、ここには泊まれる部屋もあるとニアは聞いていた。
「アストラ、ここで布団にでも包まって隠れててくれ。・・・戦えなくてもハッタリ位にはなるだろ、小型銃も貸してやる。」
そう言うと、アストラを置いてニアは出ていこうとする。
「ニア!僕も行くよ!」
「ダメだ。今度ばかりは守ってやれない。・・・絶対、生きて戻ってくる。だから待っててくれ!」
そう言ってニアは出て行く。アストラは信じて待つしかなかった。彼の言う通りなのだから。
「・・・僕は・・・戦えないから・・・。」
仕方なく、宿泊用の部屋に厳重に鍵をかけ隠れた。
「待たせたな、セイバー、皆。」
「アストラちゃんは?」
「事務所に隠れてもらった。流石に連れて行けないからな。・・・俺が死んでも、アイツだけは生きててもらいたいからな。」
ニアは、そう語る。刺し違えてでもエスカを倒そうという、不退転の決意だった。
「何を言っているのだ、ニア!・・・エスカを倒して、生きて戻る!それがアストラの希望だ!」
「そうよ!あんたが死んだらお姉ちゃんやルーアちゃんはどうなるのよ!」
ナディアとゼフィリアが、口々にニアを諭す。
「皆、ありがとう。・・・そうだ。絶対、全員生きて帰るぞ!誰も死なせねえ!エスカを絶対に倒すんだ!!」
そうして、全員決意を改め。ジャスティーに乗り込んだ。
宇宙船ジャスティー。エレデアスの宇宙船の技術が余すことなく入り、高速移動ももちろん可能だった。しかし、専門職の人間を入れてないだけあり、セラフィスノ等に比べると若干あらのある内部だった。
「・・・セキュリティが甘いな、やっぱり。」
「そりゃそうだ。アストラちゃんを建造に入れてねえからな。セキュリティは甘くもなるだろ。・・・スイッチも全部入れれば進めるな。」
そう言いつつ、7人は進む。内部のセキュリティが弱いこともあり、エスカの元まで辿り着くのはそれ程時間はかからなかった。
「エスカァァァ!!」
「ニアか。」
「エスカ!思考制御システムを今すぐ止めろ!」
「馬鹿を言うな。そんなことをすればまた殺し合いが起きる。思考を制御している限り、アレファスリは私欲のために争わない。この方法だけが人々を幸せにする。・・・真の平和だ。」
それに、ナディアが静かに反論をする。アストラだったらどう言うかを、考えて。
「そーね。それでしか平和をもたらせないってそこまで人が信用できないってなら皆機械にしちゃえば良いんじゃない?自分の言う通りに人間を動かしたい。それで争いをなくしたい・・・。それって人間を機械にしてるのと変わらないわよ。だったら人間なんて要らないじゃない。」
「ククク・・・お前もヴェバートと同じことを言うか。」
「少なくともお姉ちゃんならこういうと思うけどね。」
「成程・・・お前達姉妹もあのイカれたキノコ頭と同じ・・・機械を知ってる人間と言うのはこんなものか。」
「イカれてるのは、貴方。」
ルーアが次に口を開く。思考制御が解除されたからか、徐々に自分の思ってることを言えるようになってきたらしい。・・・実験以前に戻ったとは到底言えないが。
「貴方は、人間を操り人形だと思ってる。でも人間は貴方の操り人形じゃない。」
「何時の時代も大衆と言うのは一部の人間に操られてきた。それを正しい方向に導いてやってるだけだ。感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いはないな。」
「ハッ、それで洗脳して操って銀河の皆で仲良くしましょうってか?そんな理想郷願い下げだよボケ。人間を奴隷かなんかと勘違いしてんじゃねえのか?」
「誰も嘘をつかないし、誰も私欲のために動かない。素晴らしいことではないか。」
フェクトやシェリル、ゼフィリアも口を開く。他惑星の元締めとそれに近い立場の人間として、思うところはたくさんあるのだろう。
「理解できねえな。」
「それで私達ガイアはビッグクランチで宇宙のチリにってわけ?冗談じゃないわ、私達を何だと思ってるのよ。」
「そのような理由でナルグドも・・・許せぬ!」
「エスカ。あんたの過去に何があったかは知っている。あんなことをされたら誰も信じられなくなるかもしれない。・・・でもな!人間の感情ってのはあんたの玩具じゃねえんだ!皆がそれぞれ考えを持ってるから世界ってのは成り立ってるんだろ!間違ってたらぶん殴ってでも辞めさせりゃあいい!・・・それを機械で一つの考えに絞っちまおうなんてバカじゃねえか!!」
そして、エスカは剣を抜く。剣を抜いたエスカから滲み出る闘気は冷たく、そして重い。
「・・・バカでいいさ。この星を救えるのならな。」




