episode0-3 逃走
リメルを救出し、入り口まで戻ってきたところ。
「・・・だからお前もここに侵入してるだろ!その時点で立派な犯罪なんだよ!」
「まあまあ、これもお買い得だから」
モルコスフィアが監獄長と思われる男と何かやっていた。
「・・・何やってんの、ファーレンス君」
「あの商売気質誰にでもだったのか。よくわからん奴だぜ」
「それよりもあの人はクロスケーションのラドン監獄長ですよ!あの方は大丈夫でしょうか・・・?」
どちらにしても、前に進まなければ外には出れない。諦めてモルコスフィアと監獄長と見られる男に近づいた。
「まだ侵入者がいたのか。・・・ん?シェリルにリメリアもいるじゃねえか。随分と豪快な脱獄作戦だな」
「何度言えばいいの。私は冤罪よ。ふざけるのも大概にして」
何度言ったかわからない台詞をシェリルは口にする。しかし、このラドンという男は聞く耳を持たなかった。
「お前こそ何を言ってるんだ。お前は我が国の国宝次元石を破壊したんだ。魔硝石の情報は全ての国共通で伏せられている重要国家機密だ。それなのにも関わらずお前はこの石の情報を手に入れ破壊した!これは重罪だぞ!」
ここでファルクが、一つ疑問を覚える。
「待てよ。魔硝石ってなんだ?」
何故か丁寧にラドンは答える。
「魔硝石は魔力を持ち、人に魔術の行使を可能とさせる石だ。人智を超えたもの故、悪人に渡ると大変なことになる。」
「魔術・・・?」
そう言い、ファルクはリメルを助ける直前にシェリルが放ったどうやって出したかわからなかった火球のことを思い出す。しかし、頭を振りながらそれを否定する。というか、信じたくないと彼をよく知る人には映ったであろう。
「いや、俺は信じないぞ。そんなもんあるわけがない。物理法則に反してる。」
「いえ、だからこそ魔硝石と魔術という言葉は封印されたんです。人智を超えているから、物理法則に反しているから。」
話の腰を折られた形となったシェリルが、話を元に戻す。
「で、ちゃんと調べたの?いつだかなんて私はもちろん知らないわよ。今を除いて生まれてからコールから出たことなんて一度もないもの。・・・それに私が持ってる魔硝石は磁界石よ。その犯人様が使った魔硝石は確か暗黒石じゃなかったっけ?」
これも何度も聞く言葉をラドンに浴びせられる。
「悪いが現場からはお前の指紋も出たし、髪の毛のDNAも一致した。犯人はお前以外あり得ないんだよ。・・・しかもお前、魔硝石持ってやがるのかよ。回収させてもらうぞ。」
しかし、もうここまでやったのだ。今更後に引くわけにはいかない。何をどう言われようが、やってないものはやってないのだ。
「・・・そう。なら、ここで脱獄するまでの話よ。勝手に処刑されちゃたまったもんじゃない」
「・・・なら、俺はここでお前を処刑する。スズには後で報告すればいいだろう。お前が持ってる魔硝石もここで奪い取らせてもらう。」
そういうとラドンは手に持った斧を振り上げ、真空波を巻き起こし四人にぶつける。鈍重そうな見た目に反した、予想外の動きの素早さだった。先に戦った看守達とは、格が違う。ボウガンには矢があまり残っていない。シェリルが戦うためには、魔術が必要だ。
だが、問題は詠唱時間だ。先程のは低級の魔術だったためそこまで時間がかからなかったが、ここまで体力のある男を倒すにはそれなりに強力な魔術を用いなければならない。しかしそれにはより長い詠唱時間が必要なためラドンの素早さを考えるとそんなに長い時間詠唱するのは自殺行為も甚だしかった。
かと言って、何もしないわけにはいかない。ファルクの持っているライフルには弾が込められているとはいえ何発も撃ってれば弾は切れるのだ。
(ん?連発?)
何発も撃つという言葉に閃いた。一回貯めるのに時間がかかるのならば、一瞬で唱えられる魔術を連発して確実にダメージを与えていけば良いのだ。火球を次々と作り出し、全てをラドンにぶつけていく。
「火の魔術・・・!?何故だ、火炎石はスキンが持っている。今の世界に魔硝石無しで魔術を使える奴など・・・!!」
「・・・信じたくなかったがやっぱりか。シェリル、それが魔術だな。お前に火が出るもの渡した記憶ねぇからな。二度もやられちゃ、嫌でも信じざるを得まい。」
そういうとファルクがすぐさま反撃に転じる。先ほどの看守達と同じ、足を狙い動きを止める作戦だ。
「なめるな!」
ラドンはそれを避ける。すぐさまファルクに近づき、斧による重い一撃を与える。すんでのところで回避し大事には至らなかったが、砕けた床石がファルクの利き手を襲う。
「痛ぇっ!・・・クソッ!これじゃ銃は使えねぇ・・・シェリル、手前で何とかしろ!」
「無責任ねぇ・・・んじゃ本気出すわよ。もっと重いのをくれてやるわ・・・!!」
そう言うとシェリルの手から赤い炎が上がる。赤かったのも束の間、高すぎる熱量でその炎は青く光る。シェリルがその青い炎をラドンに向けて放つ。今度は避けることも叶わず、小さいながらも尋常でない熱量を持った火球をモロに浴びたラドンはのたうち回る。
「ぐああああ!!熱ぃ!!」
「熱いんなら火傷の手当てしてあげるわ・・・手当てになるかはわからないけどね!!」
そう言って次は全てを凍てつかせんとするばかりの強力な吹雪を放つ。極度の高熱と、それを受けてからの極端な冷却。ラドンは、シェリルの魔術の前に膝をつく。そしてそのまま、斧を使って杖のようにしながら外へ向かっていった。
「・・・割に合わねぇ。こいつらと戦ったら今月分の給料超える仕事しちまう。やる気が起きるわけねえな。それにこいつらがこんなにしぶといだなんて聞いてなかったぜ。クロムの野郎ふざけやがって・・・腹立ってきたな。」
ふらふら歩いて出ていくラドンを見届け、ファルクが物理法則に反してると言った魔術を簡単に使いこなして見せたシェリルは、後ろに向きなおる。
「・・・ファルク、リメル、そういうことよ。このこと、黙っててね」
「シェリルさん、どこでそんなことができるようになったんですか?魔術の使い方なんて教える人今はいないしいてはいけないんですが・・・?」
それは、シェリルにもわからない。物心ついた時にはシェリルは魔術を使え、それを祖母に『外では絶対に使うな』と強く言われていたのだ。
「それが・・・わからないのよね。私は記憶があるときにはもう使えたんだもの。魔硝石に関してもおばあさんがくれたときにこれが磁界石だって教えてくれたの。魔力は感じるけど使い方はいまいちわからないし」
「お嬢さん方、そんなところで駄弁ってる場合じゃねぇぞ。ここが出口だ。マルクセングまで急いで行く。案内は任せとけ。」
そして話を切り上げた三人は、マルクセングへと向かった。