episode17-2 会合
「せらふぃすのノノリクミインダナ。キョカハデテイル、ハイッテイイゾ。・・・アト、カッカカラノセンベツダ。モラッテユケ。」
門番のサーヴィル兵から薬や食事の類を渡され、セラフィスノの乗組員の面々が入る。そこにいたのは、巨大な青い細胞だった。彼がサーヴィルの王、ノーベルジェヌン。他のサーヴィルの様に擬人化したような形はしておらず、一枚板と言った感じの見た目だった。フェクトが派手になったような見た目を想像していたニア達は、少々驚きを受ける。
「閣下。今戻りました。」
「フェクトか。ご苦労だった。」
「え、ノーベルジェヌンってこいつか?この板みたいなのが?」
「失礼な奴だな。」
機嫌を損ねたようだったが顔もないので顔色をうかがうことはできない。フェクトはすぐさまフォローに入る。
「閣下、この者達が以前お話しした対エスカフローラの協力者たちです。」
「うむ、それは理解している。だが、エスカフローラが相手となると簡単に倒せるとは思えない。勝算はあるのかね、アレファスリの諸君?」
それにニアが答えようとするが、ニアには理屈で答えられまいと人差し指を立てたナディアが答える。
「ノーベルジェヌン公。エスカフローラは人間の思考制御をして人を操っております。それは即ち、人を信用できていない、ということですね。エスカフローラは恐らく複数での戦いはしてこないかと思います。」
「それで?」
「我々がエレデアスに赴き、思考制御システムを破壊いたします。思考制御システムこそがエスカフローラの後ろ盾なのでそれさえ崩せば我々にも十二分に勝機はあると思います。」
しかし、現状ナディア達はエレデアスの反乱分子。直接エレデアスに行くなど、当然不可能であった。勿論それをノーベルジェヌンも考えておりまずは行き方の話になる。
「エレデアスにはどう近づくのだ?現状貴公らもエスカフローラには狙われているのだろう?その中でどう破壊するつもりなのだ?」
「ノーベルジェヌン公。我々はアレファスリです。エレデアスの侵入ルートは熟知しております。」
「成程な。ならばその件は貴公らに任せよう。あと、要件がもう一つある。ジェルの事だ。」
聞きなれない人名が出、ニアがウィルに尋ねる。
「ジェルって?」
「我々が捕虜として身柄を預かっている狐の様な姿をした細胞膜の硬質化したサーヴィルの事であります。ニアさんが確保したサーヴィルですね。」
「オッケイ。」
「ジェルですか。彼をどうすればよいのですか?」
「ジェル…というよりも相当数のサーヴィルを捕虜として確保しているだろう。ジェルを含め解放してもらいたい。それが完全停戦の条件だ。」
しかし、現状エレデアスに連絡を取ることはできない。それをナディアとウィルはよくわかっていた。
「現状、軍部と保安部は冷戦状態にあるであります。保安部に対抗するために彼らを解放したら正面衝突は避けられません。」
「それと現状我々はセイバー元帥と連絡を取るのが困難です。そのため、どちらにせよエスカフローラが打倒できない限りは解放は難しいと思います。」
二人の軍幹部の説明もあり、ノーベルジェヌンは了解をした。エスカフローラ打倒の協力をすること、停戦の引き換えに捕虜であるジェルをエスカフローラ打倒後に解放することという話で決着。一行はノーベルジェヌン邸を後にした。
「さて、侵入する方法を考えるのだ。一刻も早くエスカフローラを倒さねばなるまい。」
「エレデアスに行く方法は・・・ニア、エレデアスが目的があって使っている惑星は答えられる?」
「流石に馬鹿にしすぎだぜナディア。監獄惑星セフィロトだろ?俺はこれでも保安正だぜ。」
「これ答えれなかったら保安正にしたやつの頭疑うけどご名答。セフィロトに囚人を転送できるってことは転送元はエレデアスにあるってことだからね。お姉ちゃんに転送元を割り出してもらえばエレデアスに行けるはずなんだ。」
割と原始的な手段ではあるが、原始的であるからこそ最も有用な手段であった。しかし、ゼフィリアは確実ではないのではないか、と述べる。
「道を壊される可能性はないのか?」
「保安部は囚人をセフィロトに送るのも仕事。セフィロトへの転送ルートを潰してしまうとそれができなくなるからそれはない。」
確実にエレデアスに繋がる道のある惑星がある。方針は、定まった。
「決まりだな。修理が終わったらセフィロトへ向かうぞ!」
その後、シェリルとニアはナディアの部屋に呼び出される。ナディアは二人を部屋に入れると、厳重に鍵をかけた。
「で、カメラはっと・・・ないわね。盗聴器の類もなし。よし、それじゃあ裏会議を始めましょうか。」
「こんな厳重に鍵をかけてなんだ?まさか俺を食う気か?」
「私を何だと思ってるの。そんな淫乱じゃないわ。それにそれならシェリルは呼ばないわよ。・・・私が話したいのは別の話。単刀直入に言いましょう、この船には恐らく裏切り者がいるわ。口が堅そうなシェリルと一応現状リーダー格のあんたを呼んだのはそれが理由。」
衝撃的な内容だった。ニアにはとても信じられず、ナディアを問いただす。
「おい、どういうことだ?何の根拠もなく言ってんだったら流石に怒るぞ。」
しかし、それにシェリルは同意する。
「ああ、ナディア貴女もなのね。私もあの女は怪しいと思うわ。まぁ私のは推測にすぎないけれど。貴女割と確信持ってそうだから聞かせてくれないかしら?」
シェリルはあっさりとナディアが疑いをかけている人物が女であると言った。ナディアは同じ人物かを確かめるためにシェリルに問う。
「性別は合ってるわね。んじゃ具体的な名前出してくれるかしら?そこまで完璧に合ってれば話は早いわね。」
「んじゃあ言いましょうか。貴女が疑いをかけている人物はナスカ=エレーヴォンでしょう?」
シェリルは両目をつむったあと、片方だけ瞼を上げその片目だけでナディアを見る。そのシェリルの目は、自らの答えを全く間違ってると思っていないと主張するかのように自信に満ち溢れていた。
「・・・ふーん、よくわかったわね。そうよ、私はナスカ・・・いや、アイラ=ディストニアを疑ってる。」
「アイラ?」
「こうなる前に色々と保安部に探りは入れてたのよ。セイバーさんじゃないけどあんたらと違って慎重派だからね。…そのせいで出遅れることもあるけど。で、話が脱線したけどナスカ=エレーヴォンってのは偽名であの女の本名はアイラ=ディストニア。元々は名前もないスラム街の出身みたいね。もちろん後ろ盾はエスカフローラ。エスカに戸籍と身分を与えられたあの女がエスカを裏切るはずがないわ。・・・それに私、聞いたのよ。」
時を遡ることペラルナ滞在三日目。
「あーあ、今日も修行つけてやるの疲れたなぁ。セイバーさんに会いたいなぁ・・・。」
などと言いながらナディアはシャワー室に向かう。服を脱ぎ、シャワーを浴びる。
「んん~やっぱりトレーニングした後汗流すの最高よね~」
などと言っていると、声が聞こえた。その声はか細く、聞こえるとまずいことを話していたのはわざわざ外を見ずともナディアにはすぐにわかった。シャワーを止め、彼女はすぐさま耳を聳てる。声は小さく、会話の内容は全ては聞こえなかった。しかし。
「・・・在・・・ルナに・・・時着・・・。は・・・で・・・監視を・・・。はい・・・エスカ様。」
その声の主は、間違いなくナスカ=エレーヴォンの声だった。
「成程な。でも、確定じゃないんだろ?」
「そうね。でも私と多分シェリルはあの女を信用はしていない。よって要監視だと思ってるわ。ニア、あんたも監視しておきなさい。」
「疑うってレベルなら、俺にも疑ってる奴いるけどな」




