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銀河騒乱   作者: 村山龍香
第二章 銀河編
44/63

episode15-3 墜落

宇宙船セラフィスノに無事全員乗り込み、アラフォース達が自己紹介をする。

「さて、発進はしましたがこれから早急に今後の事を考えねばなりませんね。まぁ少しは安心できる状況になったので自己紹介をしましょう。私はアラフォース=レクイエル。ネクロマンサー・・・いわゆる屍術師です。」

「私はシェリル=コンスタンティウス。MZBの二代目の社長よ。よろしく、ニア君。」

「俺はクレイバーだ。シェリルの下で陸軍元帥を務めている。ガイア存亡の危機とかでな、微力ながら協力させてもらう。」

赤髪の女と軍服を着た男もそれぞれ名乗る。ナディアは二人とも聞き覚えがあるようで、興味を示した。

「安全が完全に確保できたらお二人に聞きたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

「勿論。これからしばらく旅を共にするんですもの、なんでも答えてあげるわ。」

「とりあえずエスカフローラのことを説明するのが先ですね。ナディアでしたっけ、貴女もいろいろ知ってるのではないですか?」

「まぁ、そうね。エレデアスで一番の技術を持ってる人の妹だからね。色々知ってたわ。お姉ちゃん、コックピットで説明しよっか。」

その案内の元、トランスポートにいたメンバーもコックピットに移動する。色々説明するためだ。

「はい、必要な人はみんな揃ったわね。ゼフィリアとアラフォースさんとお姉ちゃんとニアとフェクトと・・・これだけいれば十分ね。」

「で、これはどういうことなのだ?」

ゼフィリアが聞く。どうやら一連の流れで、アストラに若干の不信感を抱いてしまったようだ。

「お姉ちゃんは言いづらいだろうから。私とアラフォースさんで答えていくわね。」

「アラフォース、で構いませんよ。」

「そう。まずニアとルーアに施されていた実験はエスカが思考のや思想を制御して記憶や感情の統制を行うための実験だったのね。因みに例外的に操作を離れてる人間がいて、それが私とウィルとセイバー元帥、それとお姉ちゃん。この人たちを制御してしまうとシステムが壊れちゃった時どうにもならなくなったり困ることが色々あるからね。・・・私だけはお姉ちゃんの私的感情みたいなものだけれど。」

「なぜ、それを他人に言わなかったのだ?」

「ちょっと考えればわかることよ。貴方も一つの星を治めてたのだからわかるでしょう。・・・星民全員を人質に取られてるに等しい状況で、そんなこと口にできると思う?そもそも操られてる人たちにあんた達は操られてますよーなんて言ったところで誰が信じるものですか。」

と言った思考制御システムについての概要をナディアが説明し、その後を継ぎアラフォースが続きを説明する。なぜ自分たちが戦っているのか、といったことだ。

「そしてエスカフローラは私達ガイアも支配下に置こうとしました。思考の制御で、です。ナルグドもフェクトが言っていた通り彼は支配する気でしょう。」

「もっと言えば銀河全てを操作したいみたいね。何を考えてるかはわからないけれど・・・。」

そこで、純粋な疑問が浮かぶ。アストラとは関係なく、だ。

「そこまでしてエスカは何をしたいのだ?何故思考の統一に拘るのだ?」

「そうでもしねえと、エレデアスを助けられねえからだとよ。」

「?」

「ガイアに発展されると、エレデアスは大変困るのですよ。」

「簡単に言うとな、エレデアスってのは次元を超えたガイア、つまりガイアが発展し続けた姿がエレデアスなんだ。アレファスリがヒューマンのほぼ上位互換になってるのは細胞の研究やらなんやらが今あるガイアよりずっと進んでるから。・・・これくらいしか言えねえや、アラフォース、続き頼む。」

「わかりました。シェリルもお願いします。」

そうして、アラフォースとシェリルにより宇宙の話がされる。宇宙は無から誕生し、ある一定の期間をおいて再び無に帰る。それが宇宙の死、ビッグクランチ。

「それで二つ目の宇宙が誕生しました。同じ無から生まれるものは、必ず同値に収束する、という理論があります。ビッグバンもビッグクランチも化学現象ですからね。何度繰り返しても必ず同じものが生まれるのですよ。簡単に言えば料理ですね。卵と砂糖と牛乳と小麦粉と膨張剤を入れれば必ずホットケーキになるのと同じですよ。どう間違えても、それがすき焼きになったりはしないでしょう?それが宇宙についてもいえることで、何度同じビッグバンとビッグクランチか繰り返されようともガイアやナルグドと言った同じ惑星が誕生するのですよ。」

大体ゼフィリアも理解したらしい。実にわかりやすい解説だった。しかし、それはそれでゼフィリアにわからないことが生まれた。

「それでエスカは、なぜ思考の制御をするのだ?」

「フェクトが言った通り、当時のガイアにはビッグクランチを回避して次の宇宙に転送する、という技術が存在してました。それを行い、ガイアとそれにただ乗りしたサーヴィルは、今の宇宙、これを第二次宇宙とでも呼びましょうか。こちらに飛びました。さて、ここでエスカフローラが懸念してた問題が起きてしまいます。・・・ガイアが複数生まれてしまうことになりますね。これを繰り返していけば・・・ガイアが何個も何個もできてしまうことになります。これを阻止するために、エスカフローラは思考の制御を行いガイアの発展を阻止したのです。そうすれば、未来のガイア・・・今のエレデアスのみが永遠に存在できることになりますからね。」

「成程な。ところで全員、その操作システムからは外れているのか?」

一番重要な質問であった。

「・・・そもそも操作システムに引っかかってるのがニアとルーアしかいないからあまり意味のない質問だけどね。でももうエレデアスから60光年は離れているから大丈夫だよ。この宇宙船というかエレデアスの宇宙船は宇宙全体の時間経過の相対速度を落として短時間で長距離移動できるってシステムにしてるからね。仕組みも説明したいんだけどどうせウィルしかわかんないと思うからいいや。」

などと言っていると、セラフィスノが銃撃を受ける。衝撃が伝わり、ニアが無様に転倒する。

「何だ何だ!?何が起きた!?」

「保安部の船から銃撃されているであります!今逃げるためにシールドを展開しているであります!!」

慌てて対応してるウィルが答える。スケープが呑気にセラフィスノの状況を説明する。

「まずいなー実にまずい。シールドの出力が最大能力の八割まで落ちている。」

そして、回避のためにシールド出力を落としたところ。爆弾の乗ったミサイルを被弾してしまったらしい。爆発されると、セラフィスノは真っ二つに分断されてしまうらしい。

「・・・仕方ないね。近くの生存可能な惑星に不時着するよ!!皆何かに捕まって!!」

こうしてエンジンをかけて全速力で逃げ。

・・・保安部の船からの攻撃の回避には成功した。しかし、衝撃で燃料タンクが壊れ、発進ができなくなってしまったらしい。

「燃料タンクは直せるけど・・・。燃料がないんだよね・・・。」

「補給できないのか?」

「純正の燃料を使ってるからそのまま入れても動かないね・・・。」

「通常はこういう時救援要請するのでありますが、今回それはできないであります。・・・救援要請をエレデアスに出すということはエスカに自分たちはここにいる、ということを伝えるということになりますので。」

手詰まりな状況に、フェクトが口を開く。

「・・・仕方ねえな。俺がノーベルジェヌン閣下に救援要請を出そう。事情が事情だ。」

「そのシャベルなんとかって誰だ?」

「掠ってもねえよ!ノーベルジェヌン閣下だ!!あとなんだとはなんだ!!最高指導者だぞ!!・・・まあ俺が話し通せば大丈夫だろ。・・・今回だけだからな。」


ノーベルジェヌン官邸。一本の緊急回線が入ってきた。

『こちらフェクト。閣下、応答願います。』

「フェクトか、どうした?」

『現状作戦は失敗。エレデアスの戦艦セラフィスノにて脱出を図りましたが、惑星ペラルナに不時着。燃料タンクの破損につき身動きが取れない状況にあります。本星帰還のため、現在地にエレデアス製の燃料転送を要請します。』

「どういうことだ?何故エレデアスの戦艦で脱出を?」

『乗組員は反エスカフローラの面々です。我々にも協力すると申し出ております。』

「わかった。お前のいる場所に燃料を転送しよう。だが、情報不足でね。もっと詳細な情報を求める。」

『了解しました。』


「・・・話は着いた。一週間で燃料が到着する。ただし転送条件として、お前らには対エスカフローラの協力をしてもらうことと燃料が到着したらまず第一にサーヴィル本星に寄ってもらう事。この二つを閣下から要求された。当然、協力するよな?」

「ああ。」「ええ。」

あっさりと了承した。それはそうだ。ここまでしてしまったのだから、後は反発するしかない。

「よし。因みにセラフィスノのコードは送ってあるし話は着けてあるから、お前らを敵としてみなして襲うなどということはない。安心してくれ。」

「しかし一週間とは割と時間かかるんだな。」

「俺達がエレデアス製の純正燃料なんか持ってるわけがないからな。精製して持ち込むんだからそりゃあ時間はかかるさ。」

「しかしそれだけ時間がかかるとなると暇だな。どうする?」

「・・・生存可能ではあるけど、降りると危ないかもしれない。出ないほうが安全じゃないかな?」

「そうだな。燃料が届くまでは出ないようにしよう。」

こうして、一週間セラフィスノに留まることになった。

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