episode15-1 明かされる真実
そしてナルグドでの騒動も収束を迎え、エスカはゼフィリアにナルグドをエレデアスの統治下に置くと言った。当然ゼフィリアは反対したが、ナルス教にもう求心力になる要素はないこと、無政府状態に置くのはあまりに危険なことなどを説明され、最終的には折れた。
エスカの施政演説が放送されており、ナスカは食い入るようにそれを見ていた。
「・・・平和になったのかな?これで?」
「さあ?」
そんな話をしていると、緊急放送が入る。
「緊急放送!保安部隔離施設より未確認コードの脱走者!保安正は至急保安部隔離施設へ!」
詳細は、スケープは話す。
「惑星エレベーターの地下に隔離施設がある。そこからの脱走者だな。」
「誰が逃げたかわからないのか?」
「わからんから未確認コードなのだろう。お前はバカか?」
「すげえ腹立つな、この機械。Marcoってこんな辞書だったっけ?・・・まぁ脱走者が出たってなら見に行かないとまずいだろうな。スケープ、惑星エレベーターってどこにある?」
意外と有効活用しているニアだった。ナスカは女の見た目のアンドロイドが男のような口調で話してることに違和感を覚えるが、まぁ機械だしと流すことにした。
「惑星エレベーターは保安部の建物の入り口の付近だ。今回は地下からの脱走者だから恐らく地下1024階だな。」
そうして、スケープに惑星エレベーターを操作してもらい、地下に行く。脱走者がいたと思われる部屋には、謎の紋章が書かれていた。魔術絡みなのだろうが当然、ニア達には魔術の知識がないために何の意味があるのかわからない。
「スケープ、わかるか?」
「エレデアスの人工知能の私にこんなものわかるわけないだろう。馬鹿か?・・・ゼフィリアとトキファを連れてきて読ませたほうが早いと思うが。」
そうして、ゼフィリアとトキファを連れて来させた。トキファも知識に無い様でトキファは珍紛漢紛な様子を見せていたが、ゼフィリアは案外すぐに答えを導き出した。元教皇だけあって、学も人一倍あるようだ。
「ふむ・・・。これは屍術の紋章だろうな。」
「ネクロマンシー?」
「我もそうだが、我々ナルグディは魔術と呼ばれる一般的な簡単な魔法を使っている。だが、魔法は魔術だけではない。魔術以外に屍術というものがある。不死のための術でネクロマンサーと呼ばれる魔術師の上位のクラスの者が使う強力な魔法だ。ナルグドでは使われていない魔法である故、この紋章はナルグドの人間が描いたものではないと思われる。」
「エレデアスの人間もサーヴィルも当然魔術は使えない。機械も当然使えない。だとすると・・・誰だ?・・・もう一つの部屋も見てみるか。」
そうして、六人はもう一つの部屋を見る。そこには、随分ボロボロになったベッドが二つ置いてあった。
「随分荒らされた部屋だな・・・。あれ?この部屋見覚えあるぞ?」
ニアが、しれっととんでもない発言をした。こんな部屋に来ることなど、普通有り得ないからだ。
「犯罪なんかした覚えないんだが・・・。」
「ニア=グローレンス。」
「なんだよ!離せよ!!」
そうして、妹のルーアは別の部屋に連れて行かれ・・・。
ここまでしか思い出せなかった。ジャミングか何かがかかっているような不鮮明な記憶で、それ自体もあやふやなものであった。
「ダメだ、中途半端にしか思い出せねえ。・・・ところでなんだ、この髪の毛は。」
ニアは、足元に落ちていた一本の髪の毛を見つける。赤毛で、脱走者のものだと思われた。即座にスケープに渡し、DNAの照合を求める。
「DNAデータを検索する。・・・・・・・・・・・・・・・・・種族はヒューマン。検索結果あり。アストラの半径1㎞以内にいるようだ。」
「スケープ、アストラのところに行くには?」
「転送機能を使えば一発だ。すぐにでも転送してやろう。」
「わかった!転送してくれ!」
「ちょっとニア!まだ準備も何もしてないじゃない!」
しかし、ナスカの突っ込みも虚しく即座に転送された。
・・・ここはサーヴィルの保有戦艦、恒星間移動戦闘機零式。サーヴィルがエレデアスへの侵入を画策している、という情報を得て侵入していたセイバー、ウィル、ナディアと技術担当職のアストラがそこにはいた。四人は面食らっただろう。突然保安部の四人とスケープとナルグディ二人が転送されてきたのだから。
「あれ?なんでセイバーがいんの?」
「こっちのセリフだバカ野郎!なんでお前らがこんなところに来たんだよバカ!」
「地下隔離施設の脱走者がアストラの近くにいるとわかったからアストラの近くに転送した。そうしたらここだった。」
「わかりやすい説明ありがとよルーアちゃん。でも連絡くらいしてから転送しやがれ!こっちは大迷惑なんだよ!!」
セイバーはかなり怒っていた。ナディアも頭を抱えており、無鉄砲さに呆れているようだった。
「一応説明しとくけど、ここはサーヴィルの戦艦恒星間移動戦闘機零式。噛みそうな名前よね。で、私たちがここにいる理由はサーヴィルがナルグド伝いにエレデアスに侵入して攻め込もうと画策してる、って情報を得たから軍部の三人とセキュリティー破るためにお姉ちゃん連れて入って来たってわけ。で、目的はフェクトを倒してこの船乗っ取っちゃいましょうと。簡単ね。・・・で、誰を追いかけて貴方達は来たわけ?」
その質問にはスケープが答えた。DNA検索の結果が出てきたためだ。
「一人は判明している。ガイア出身の女、シェリル=コンスタンティウス。その者の他に、ネクロマンサーがいると予想されている。」
「ガイアねえ。なんでサーヴィルに来たのやら。同盟組むとは考えづれえし・・・。」
そうしてると、スケープは再び転送機能を使っているようで、読み込みをしている。転送が完了したようだ。出てきたのは、エスカだった。
「お前たち・・・これはどういうことだ?」
「脱走者とやらが侵入してきたらしいぜ。それを追いかけるとか言ってるが。」
「脱走者・・・アラフォースか。ニア達程度で追いつめられる相手ではない。もう少し考えて行動してくれたまえ。・・・アストラ、位置はわかるか?」
「わかりません。メインシステムを乗っ取って検索かけるのが一番早いと思います。」
そう言われると、エスカはセイバーにメインシステムの部分まで同行する、と申し出た。セイバーとナディアも渋々ながら了承し、フェクトのところまで行くこととなった。




