episode14-4 愛憎
保安部の会議室に、アストラの事務所にいたニアも呼ばれ緊急会議が始まった。会議のメンバーには、セイバー、ナディアの軍部の2トップもいる。
「おいエスカ?俺様とナディアまで呼び出して何の用だ?」
「今までの事をまとめよう。1000年前、ヴェバートがナルグドへ渡った。ヴェバートはヤーベル鉱山にインフェニティーを設置。これが龍として信仰の対象となる。そしてナルスとインフェニティーは契約を交わす。龍に生贄を捧げる代わりに、街を襲わないでもらおうと。」
結局は、ナルスとヴェバートの自作自演であったわけだ。そして現状の説明に移る。
「我々は龍、インフェニティーを打倒。しかし、経典を元にゼフィリア教皇は死んだと判断された。そして現状、新教皇になったティミセカがインフェニティーと戦った我々も悪と断定、エレデアスを攻撃対象にした・・・と。これが現状だな。」
「おいコラてめえちょっと待てよ。今さらっとエレデアスを攻撃対象にしたとか言いやがったな。どういうことだ?」
「どうやら向こうの方々でも君たちのような人間は戦争したいみたい様でね。」
セイバーは怒鳴る。彼はこれを恐れていたからこそ、ナルグドとの融合を反対したのだ。無理もない話であろう。
「ふざけんな馬鹿野郎が!だから融合するなって言っただろうが!」
「仕方ないでしょう!相手に貴方みたいな戦争好きがいたんだから!」
「俺様はラブアンドピースだふざけんな!勝手に戦争狂にするんじゃねえ!戦争が好きなら融合してナルグド攻めて滅ぼしてるわ!エレデアスを守るために俺は融合に反対したんだ!!」
「そうかそうか。ならばエレデアスを守ってくれたまえ。」
それに、ナディアとセイバーは同時に答える。
「言われなくてもそうします。」
「言われなくたってそうしてやるさ。」
『それが軍部の使命』「ですから」「だからな」
ナディアは、何故か顔を紅潮させ横を向く。そんなのお構いなし、セイバーは続ける。
「だが、これはてめえらの尻拭いだからな。なんかしらの手当ては貰うぜ。」
「でもセイバー、ナルグドの軍ってそんなに強いのか?ナルグドの文明はエレデアスの半分も行ってねえぞ。負ける要素がなくないか?」
「ここは公式な場だ元帥と呼べバカニア。そうだな、実際問題戦争を起こしたら聞いた感じでは軍出すどころか俺とナディアだけで十分なレベルだろう。」
「元帥、ここにいたでありますか!」
ウィルが入ってきた。セイバーを探していたらしい。
「おうウィル、どうした?調査の報告ならここでさっさとしろ。ここには関係者しかいねえからな。」
「ナルグドの下調べをしてるとは用意周到だな、元帥殿。」
「俺様はお前らと違って慎重派なんでな。で、ウィルさっさと報告しろ。」
「はい。保有戦力や兵器の調査なのですが、ビームサーベルや大型ライフル、巨大砲など我々の軍備に近い装備が数点確認されていたのであります。」
全員が面食らう。一番驚いたのはゼフィリアだった。
「びいむさあべる??我がそんなものを仕入れた覚えはないのだが・・・??」
ルーアが口を挟む。これしか考えられなかったからだ。
「・・・横流し。」
「!!そういうことか・・・!!嵌められたぜ・・・!!誰かが人為的に戦争を起こさせるために武器を横流ししてやがるんだな・・・!!」
「大聖堂を利用するとは・・・許せん所業だ。」
「もう一つ報告であります。ゼフィリアかニアをとらえた者には賞金を出す、と現教皇からの発布が出ているであります。」
何故ニアの名前が出ているかは不明だが、とりあえずゼフィリア共々何故かニアも賞金首にされているらしい。それを聞いたニアは、ナルグドへ向かうと言い出した。
「そりゃそうだな。ナディア、ウィル!お前ら軍部の人間は当然来てもらうぜ!」
「我も行こう。我にも責任がある、ティミセカを止めさせねばな。」
そうして新たな一行は部屋を出る、そこに、アストラが来た。
「ニア~急に呼び出しが来たって呼び出されてるうちに完成しちゃったよ~!」
そのアストラの横には、女の子の形をした機械がいた。名前はどうやらスケープと言うらしい。
「言語ベースには僕が開発した新型辞書のMarcoを入れてみたよ。女の子の形だけどしゃべり方は男っぽいからね。あと武器も搭載してるから戦えるよ!」
「・・・アストラ、そのアンドロイド貸してくれ!壊さないように気を付けるから!」
「・・・別にいいけど・・・なんで?」
「帰ってから説明するから!」
アストラは渋々了承し、ニアにこのアンドロイドを貸してくれた。そしてスケープを加えた一行はナルグドへ移動し、ゼフィリアに教えてもらった地下道を通りすぐさまナルス大聖堂に向かう。
「ニア。ニアさんですか!?アーシィが兵士長に捕まったのであります!う、裏切りの容疑とかでっ」
「わかった。兵士長を早く止めるぞ!」
そうして大聖堂に入ると、ティミセカについた教徒たちが襲い掛かる。それを蹴散らすのは、当然あの二人。
『邪魔すんな、ボケ!!』
完璧な息の合い方で、軽く蹴散らした。この辺りは流石トップ二人だとニアは思わされた。
「見惚れてる場合じゃないわよ、ニア!はやく止めないと!」
二人は急いで走る。それに、ゼフィリアとニアとウィル、スケープも続く。
二人が軽く教徒たちを蹴散らし、ドラゴンの間に行くと兵士長だった男が出迎えてくれる。しかし、ナディアは名乗り口上すらもさせぬ間に、ティミセカに切りかかりあっという間に戦闘不能にする。
「貴方がいると戦争になるからね。平和のために死んでもらうわ。」
「なんだと・・・私が死んだら・・・ナルス教は・・・!」
「知らねえよそんなこと。武器を横流ししやがったクソはどこにいる。」
「・・・この奥の本堂だ・・・あいつは・・・ニアを・・・」
ここまで言って、ティミセカは血を噴き動かなくなる。権力欲におぼれた男の、哀れな最期だった。
そして本堂に行くと。そこにいたのは、なんとフォロウだった。
「・・・なんでお前がここにいる。ここにいるのは武器を横流しした犯人って聞いたんだけど?」
「私が兵士長さんに渡したんだよ。ニア君に会いたかったから。」
「・・・は?」
意味が、分からなかった。この女は、『ニア君に会いたかったから』という理由だけであの血の気の荒い極悪人に武器を横流ししたというのか。この女は、『ニア君に会いたかったから』という理由だけでナルグドとエレデアスの戦争を引き起こさせようとしたのか。この女は、『ニア君に会いたかったから』という理由だけで、大勢のナルスの兵士を死に追いやったというのか・・・!
ニアの怒りは、限界を超えていた。怒鳴ることすらもニアはなかった。そして、冷静に目の前の女を突き離す。
「なあ、フォロウ。俺、お前の事大嫌いだよ。ふざけるな。二度と顔も見たくない。」
フォロウの顔は、すぐさま不機嫌になる。
「なんで・・・なんでそんなこと言うの・・・!」
「嫌いだからだ。」
「私の知ってるニア君はそんなこと言わないもん・・・絶対に言わないもん!!」
「そうか。ならそのニア君は別の人間だな。・・・俺が手出すとこいつ喜びかねないな。元帥、大将。お願いします。・・・戦争犯罪人は死罪でしたよね。」
「ああ。」
ニアが後ろを向いた。そしてフォロウは、セイバーの圧倒的な重量の鉄球に嬲られ、ナディアの剣に切り裂かれた。
「ニア君・・・二・・・ア・・・君・・・。」
こうして、フォロウは息絶えた。
「死んでよかったんだ、こんな奴。お前みたいなやつには二度と付きまとわれたくないな。」
ニアは冷たくフォロウの変わり果てたそれを見下げ、一瞥し本堂を後にした。




