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銀河騒乱   作者: 村山龍香
第二章 銀河編
40/63

episode14-3 征服

そして同様にそれは再度破壊された。

「龍に・・・勝った・・・。龍は・・・滅んだのだな。」

しかし、ゼフィリアにとっては一抹の寂しさもあった。龍はこうして滅び、自分はこうして生きている。

それはすなわち、自らが信じてきたナルス教の破綻も意味していた。

アストラは、龍だったその機械に目を向ける。ヴェバートの作った人工知能なのだろう。機械は、アストラに怯えていた。

「さっきの人工知能、話してた。僕が作った人工知能は、こんな綺麗には会話できなかった。」

「ヴェバートのものだからな。」

その人工知能の部分に、アストラは近づく。

「大丈夫。大丈夫だよ。先生はもういないけど、僕が守ってあげるから。」

そして人工知能を拾い上げたアストラは、残りの部分が復活しないようにウイルスチップを散布した。


一方、ナルス大聖堂。ティミセカは、ある少女と話していた。

「これが・・・エレデアスに対抗できる兵器か。・・・これは素晴らしい!!ナルグドも支配できるぞ・・・!!」

「約束は、守ってくれますよね?」

「あいつを呼ぶ話か。任せておけ。・・・クハハハハハハ!!」


一方、ヤーベル荒原。ニア達は、無事に鉱山から脱出した。

「・・・それじゃあ僕は先にエレデアスに戻りたいんだけど・・・。」

「アストラ一人で戻るには危ないな。俺が付きます。局長達は報告をお願いしたいんですが、よろしいですか?」

「ああ、構わんぞ。アストラを無事に送り届けるのだぞ。」

「了解しました。」

そうして、二人と五人は別れる。

「ニア、僕とお話ししたかったのかな?」

「当たり前だろ。そのためにわざわざ申し出たんだ。良い大義名分だろ?」

しかし、アストラは軽く笑う。ここまで隠す気がないと寧ろ好感が持てるらしい。その可愛らしいアストラの笑顔を見て、ニアの顔も赤くなる。

アストラの胸には、持ち出された人工知能が大切そうに抱えられていた。

「んでさアストラ、それ持ち出して何に使うんだ?」

「昔アンドロイド作ろうとしてた、って話したでしょ?これ使えば面白いものができると思うんだ。・・・ニアには特別に一番に見せてあげるよ!」

そう意気込むアストラの鼻息は、とても荒かった。


一方のエスカ達は、ナルス聖堂都市にすぐ辿り着いた。街の前で、何故かアーシィが心配そうに立っていた。

「猊下、戻られましたか。・・・その様子だと龍も倒したようですね。しかし、それはそれで問題なのです。私の家に皆さん急いで来てください。すぐ話します。」

そう言うと、アーシィは凄まじい勢いで家に駆け込む。ただ事ではないと悟ったゼフィリアは、すぐに行くように促しアーシィの家に駆け込んだ。

「猊下、よくいらっしゃいました。」

「一体何が起きたのだ?」

「・・・ティミセカ兵士長が本日より教皇になりました。」

ゼフィリアは、言ってることの意味が理解できなかった。自分が死んだら継げ、と指示してあったからだ。

「猊下、猊下は間違いなく龍を倒しに行ったのですよね?」

「・・・ああ。間違いなく討ち取った。英雄を出す必要もない。」

「しかし行ってしまったこと、それが問題なのです。・・・ナルス経典では、龍は天の命にて降りてきたもの、とされています。即ち不滅の存在であり人間程度に勝てるものではないはず。・・・もうおわかりいただけましたか?龍を倒しに行った時点で、猊下達は亡くなっていないとナルス経典に書かれていることは嘘っぱち、ということになってしまうのです。」

「成程な。我等が生きて帰ってしまうと・・・。」

「そういうことです。猊下達が生きたまま大聖堂に戻ってしまえばナルス経典を根本的に覆すことになってしまい、ナルス大聖堂の尊厳は地に落ちてしまうでしょう。そしてあの男は、それを利用したのです。猊下が生きて帰ってくるはずがない。そして猊下は、あの男に死んだら教皇を継げと仰られてしまった。そのために、こうなってしまいました。」

しかしナルス教の新教皇、ティミセカの元には龍などいない。英雄としてヤーベル鉱山に出向いたものは恐らく次々と帰り、龍が存在しないこともすぐ周知の事実になってしまうだろう。エスカは会食中のティミセカの血の気の荒さを見ている。そんなことにさせないために彼がとりそうな行動は、すぐに考え付いた。

「あの男は、英雄として出て行ったものの口封じのために殺しかねないな。」

「私もそう思います。あまつさえは英雄を勝手に選定し、事実上の死刑の口実としても使いかねないでしょう。先ほども、『ゼフィリアが現れてもそれは亡霊だ。捕えるのでも成仏させるのでも構わぬ』などと言っていました。」

しかし、それだとアーシィはティミセカに反発していることになる。ゼフィリアは、すぐに問うた。

「しかしアーシィ、なぜ我等にそんなことを教えてくれるのだ?主は大聖堂付の兵士じゃろう?」

そう問うゼフィリアに、アーシィはまっすぐとした目で答える。

「私がお仕えしてるのはあの男でも大聖堂でもなく猊下、貴方です。猊下を裏切る真似をするくらいであればこの場で首を切ったほうがマシです。それに私でも、目の前にいらっしゃる方々が亡霊でないことくらいわかります。・・・それと猊下、もう一つご報告が。あの男、ティミセカはエレデアスに攻撃を仕掛けるつもりです。」

しかしエスカは、冷静に言う。ほとんど慌てることはなかった。ナルグドの文明でエレデアスに勝てる等とは思えなかったからだ。

「勝てるとは思えんが・・・。」

「しかしあの男には何か秘策があるようです。」

「アーシィ、いるか?」

外からティミセカの声が聞こえてきた。そうすると、アーシィは家の奥に行くように促す。

「奥に地下道があります。急いで逃げてください!今行くのは危険です!」

そう言われ、エレデアスに報告しなければならないということもありゼフィリア達はすぐに地下道に駆け込んだ。

一行は凄まじい勢いで地下道を駆け抜ける。その抜けた先は、エスカ達が最初に来た草原であった。トキファに会ったところであり、一行はよく覚えている。

「・・・となるとトランスポートはあっちだな。急いで戻るぞ!」

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