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銀河騒乱   作者: 村山龍香
第二章 銀河編
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episode13-2 宿屋

その赤髪の少年は自らの事をトキファと名乗り、エスカ達を街へ連れて行った。

「ここは遊楽街デオリス。夜は賭博場も開かれる街だよ。教皇様のいるナルス大聖堂がある街まではまだあるんだけど・・・ちょっと今日中にそこに着くのは無理だと思う。今日はここで泊まるのがいいと僕は思うな。」

「そうだな。この星の文化を知るいい機会でもある。この街を見て回るのもいいだろう。宿屋を探したら自由行動とする。」

ニアは、宿屋を探す。・・・すぐに見つかった。宿屋は草原から見てすぐそばにあったのだから。

その宿屋に入ると、謎の給仕が出迎える。

「客人よ、よくぞ来た!我が直々に歓迎するぞ!!ゆっくりしていくがよい!!」

・・・謎の態度の大きさだった。あまりの態度の大きさに、ナスカは敬遠する。

「エスカ様、他の宿探しませんか?何か変ですよ、この宿屋。」

「・・・素泊まりなら関係ないだろう。部屋は汚くないし問題ない。」

逡巡するナスカを他所にエスカは、あっさりとチェックインの書類を書いた。エスカは時間や決まりごとにやたらと厳しい割に妙に面倒くさがりなところがある。その面倒くさがりなところがここで出たというわけだ。

「ニア・・・これって面倒臭いってだけだよね。」

「局長こういうところあるからな。たまに変に面倒くさがるんだよ。書類とか字が汚いとか綴りが違うとかすぐ言うけど。」


謎の高圧的な給仕に案内された部屋は、驚くほどきれいだった。エスカはこの辺りはしっかり見ていたのであろう。部屋に入ると、エスカはこの街を見て回るとすぐにナスカと共に部屋を出て行った。

「ところでトキファ。なんで君は教皇に謁見しようとしてるのかな?」

「僕は英雄になりたいんだ。」

「英雄?教皇の兵士になりたいのかな?」

「違うよ。殉教するんだ。」

年端の行かない子供の発言とは思えなかった。自らの信仰のために命を捧げるとは、ニア達にはとても理解できなかった。

「・・・死ぬことに何の意味があるんだ?」

「これ読んでみて。」

そう言ってトキファは、ニアに分厚い本を渡す。ナルス経典、と書かれていた。ニアは、トキファに指示をされたページを開く。

「何々、『ヤーベル山の黒き龍 人の穢れに怒りあり 破滅の罰を与えんと 天の命より現れん 龍の怒り抑えるべく ナルスの英雄身を捧ぐ 龍の怒りは収まりて しばしの平和が与えられん』・・・要するにアレか、人柱を立てりゃしばらく平和になりますよってことか。」

そしてトキファは、英雄になればその名は永遠に残る、などと語った。ニアは多少興味が出たのか、そのままナルス経典を読んでいた。

「宗教ってのは難しいな。しかし33章の4節とか酷いな、要するに今どきの若い奴は死ぬ度胸がねえってことだろ?そんな好き好んで死ぬ奴なんていねえだろ。」

ルーアは、一方で考え込んでいた。ナルス教の初代教皇の名前に聞き覚えがあったからだ。

そしてその後、夜になりルーアとトキファは寝た。エスカとナスカはまだ街を見て回っているようであり、宿屋の中で起きているのはニアとアストラだけになった。ニアはこれ見よがしにと、アストラに声をかける。

「アストラよお」

「んー?何かなー?」

「なんで技術職に就こうと思ったんだ?妹はあんな戦うのに行ってるのに」

アストラは、少し不機嫌そうな顔になった。しかし、話してくれる。

「先生のおかげかな。先生は色々なものを見せて機械に興味を見せてくれた。・・・同じ姉妹なのになんでだろうね。ナディアは喧嘩も強くて運動もすごくできたのに僕は運動もできなくて喧嘩もすごく弱かったんだ。いつもナディアに守ってもらって。そんな僕にでもできることはなんだろう、って思ったら気がついたらって感じかな。・・・そういうニアは、なんで保安部に入ったのかな?」

アストラは、ニアに聞き返す。ニアは、これまた若干顔を曇らせる。

「俺か?俺はな・・・よくわかんねえんだ。気がついたらなんか兵士学校にいて適当に勉強してたらなんか今の地位にいる。でもなんかを守りたかったんだろうな。だから保安部を選んだ、そんな気がする。」

「保安正さんがそんなのでいいのかな?」

「知らね。大体軍部の大将だってシスコンだろ。びっくりしたぜ。」

アストラは、妹の話をされると意外な話を切り出す。

「ナディアねー。ああ見えて私より好きな人いるんだよー。」

「へえ。誰だい?」

「セイバー元帥。」

ニアは、ベッドから転げ落ちた。あまりにも予想外すぎたからだ。あんな粗暴な男に惚れる女がいるとは思わなかったからだ。

「マジで!?」

「マジだよー。でも全然振り向いてくれないってよく愚痴ってるね。いっつもいっつもお姉ちゃんの話ばっかして私の事なんかバトルのコンビとしてしか見てくれないーって。僕はセイバーあまり好きじゃないから早く気付いてくれるといいんだけど。」

「なるほど・・・だからあの人軍部に入った理由聞かれてあんな顔真っ赤にしてたのか。」

その後も二人は盛り上がり、ずっと話し込んでいた。仕事の愚痴や趣味のことや話し込み、あっという間に時間は過ぎて行った。そして。

「あらニア、貴方意外と積極的ね。面白そうだったから入らないほうがよかったかしら。」

「お二人さん、随分楽しそうだな。しかし明日に響く。もう寝るといい。」

エスカ達が帰って来たため、話は打ち切りとなり寝ることになった。



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