episode12-2 衝突
フェクトの鎮圧には、それほど苦労しなかった。エレデアス軍部のトップ二人が同時に飛びかかり、攻撃させる間もなく一撃の下鎮圧した。
「ルーア!」
「・・・ニアは?」
「ごめんなさい。セイバーがどうしてもって。」
ルーアに張られていたバリアの解除にも成功し、どうにかこの件は解決した。しかし。
「・・・クククッ。まだ終わってねえぜ。俺はお前らが侵入した時からちょっといじらせてもらったんだ。惑星の軌道をな。」
フェクトは、エネルギー操作をし、エレデアスの惑星軌道を操作した。その惑星軌道は、とある惑星との軌道にぶつかり数日のうちに衝突するという。
「わかるか?このままほっといたらエレデアスがぶっ飛ぶぜ!・・・そんじゃあな。」
そう言い捨て、フェクトはさっさと消えてしまう。
「チッ、面倒なことを!」
「セイバーさん。気に入らないけどエスカフローラ局長に報告しなければまずいと思います。」
「・・・そうだな。クソッ、またあの嫌みったらしいエスカに面合わせねえといけねえのか。」
すぐに5人はエレデアスに戻った。超大規模文明戦艦であったことを報告し、エスカは事態を把握した。
「ふむ・・・惑星の衝突か・・・。しかしフェクトは無駄な気苦労をしたな。我々の惑星エレデアスは衝突時に自動保護がなされる。つまり、衝突してもわが惑星は壊れることはない。先人たちの苦労の賜物だな。」
「なら、なんもしなくていいんじゃないですか?」
「ところが、そうもいかないの。その衝突する惑星・・・ナルグドだっけ。知的生命体がいるみたいだし。」
そう、衝突する予定のナルグドは知的生命体の存在するエレデアス同様に文明を持った星。これを放置しておくとナルグドに生息している生命体は、当然全滅してしまう。
「でもどうやって回避するんすか?」
「回避はまず間違いなく不可能だね。・・・でも、衝突時の衝撃を限りなく0に近づけてくっつけちゃう、ってのは可能なんじゃないかな。」
つまりこういうことだ。
回避をするのでなく、衝撃緩和を行いエレデアスとナルグドを融合させることによりナルグドの消滅を阻止する。ナルグドのためには、これが最良であろうと思われた。しかし、セイバーは反対する。防衛時のリスクを考えれば、賛成できるものではなかったためだ。
「エスカ、俺は反対だぞ。そんなことをすればナルグドが敵対勢力になった時どうする?それにナルグドのセキュリティがどうなってるかもわからねぇ。サーヴィルがナルグドから侵入したらどうする気だ?」
「それは軍部がどうにかすればいい話だろう。軍部の仕事は国防だろう?」
「他人事みたいに言いやがって。ふざけんじゃねえってんだ。」
「・・・さて、我々はナルグドに赴き事情を説明せねばなるまいな。ニア、ルーア、ナスカ、それと・・・アストラ。君がこの状況を最も説明できるだろう。君も来てくれ。・・・さて、ナディアは」
「ナディアなら貸さねえぞ。アストラちゃんはエレデアスの宝であり頭脳だ。だからアストラちゃんの護衛ってんなら俺がナディアの分の職務もカバーしてやるが今回はお前ひとりで十分だろう。そもそもこちらにも事情がある。いつでも開けてやるわけにはいかねえからな。」
「というわけです。私はフィルノアの時は護衛が少ないために元帥に許可を頂いて協力しましたが今回は局長がいれば大丈夫だと思うので。・・・それに公式の場に軍人がいるのは失礼でしょう。というわけで私たちは失礼します。」
そう言い、ナディアは尻を払うとさっさと立ち去ってしまう。エスカが好きではないから軍部に行った、という話は本当なのだろう。その態度からは嫌悪感が見えた。
「というわけだ。俺もてめえと仲良くする気なんかねえし御守りなんぞ御免だからな。・・・アストラちゃん、今度の休日開けといてくれよ。」
「お断りします。ナディアなら空けてくれると思いますよ?多分断らないと思いますが」
「あいつとは四六時中一緒にいるからいいわー」
こうしてセイバーも出て行った。帰っていったことは想像に難くない。本当に協力する気はないようだ。
「・・・なんでここまで仲が悪いんだろう、このエスカ局長とセイバー元帥って。」
「・・・さて、出発するぞ。・・・ああ。例の客人の様子はどうかね?・・・そうか。」
エスカは、携帯からかかってきた電話に答える。何の電話かはわからなかったためニアは特に何も聞かなかった。




