episode12-1 超大規模文明戦艦
「ダメだ。」
軍部に入るも、ニアの頼みはすぐさま却下された。
ここはエレデアス宇宙軍事基地。アストラは技術者として多大な信頼を得ている、という話は疑ってはいなかったがこんなに簡単に入れるとは思っていなかった。
「ニアの実力は保証しますよ。・・・ダメですか?」
アストラも頼むが、それでもセイバーは首を縦には振らなかった。
「アストラちゃんは戦うのに足手まといでも技術者として絶対必要だ。・・・もう一人増えられてもニアだっけか?お前がもしものことがあった時責任は取れないからな。・・・俺達はたとえ敵対してる保安部の人間だろうが反戦主義者だろうが絶対に助けてやる。・・・こっちも信じてもらえねえか?お前にも立場ってもんがあるだろ。」
「・・・」
ニアにも、立場がある。本来の職務もある。それらをほっぽり出すことは、ニアにはできなかった。
「・・・軍部に戻ってきても大丈夫ですか?ルーアを助け出したら、一番に顔を見たいんです。」
「ああ、いいぜ。俺とナディアとウィルに任せろ。・・・絶対に無事に助け出してやるからな。」
「ニア・・・いいの?」
「仕方ないさ・・・信じるしかない。頼む、ルーアを絶対助け出してくれ!」
そして、ナディア、ウィル、セイバー、アストラは宇宙戦艦セラフィスノに乗り込む。
セラフィスノ。それはエレデアス軍部が持つ最大の戦艦。光速での運航を可能とし、どんな離れた場所にも飛び立てる最高機能の戦艦だ。
「何~?結局ニアは来ないの~?」
「仕方ねえだろ。奴は保安部の人間だ。・・・ナディアよお、俺とお前のコンビで一騎当千だろ?・・・信じさせてやろうぜ、あいつに俺たちの実力。」
「そうですね!」
アストラとの会話に割り込んできたセイバーにナディアは笑顔で答える。セイバーにしか見せない、珍しい顔だった。
「・・・僕じゃなくてナディアの方向いてくれたらいいのにな。」
「アストラちゃんなんか言ったか?」
「何でもないです。早く行きましょう。」
「よし、わかった!ウィル!」
そういい、セイバーは機械操縦も任されている衛生兵士長、ウィルに向き直る。到着時間を聞くためだ。
「超大規模文明戦艦までの到着時間は30分を予定しているであります!」
「そうか。んじゃあアストラちゃんとナディアは30分体を休めとけ。絶対ニアの妹を助け出すぞ!本来の目的も忘れるなよ!!」
そして30分後。サーヴィルの戦艦の付近に辿り着き、侵入した。
「・・・よし。予定通りだ。警備も手薄だな。行くぞ、ナディア!ウィル!アストラちゃんを守りぬきながら進むぞ!」
「了解!」「了解であります!」
ジメジメした空間の中を、四人は進む。
「あれふぁすりダ!」
「三下に用はないよ!」
ナディアは走りながらサーヴィルを切り捨てる。セイバーも、アストラの腰はあろうかというほどの太い腕に巻き付けた鉄球を振りかざしサーヴィルを薙ぎ払っていく。
「おーらどけどけどけ!!艦長以外に用はねえんだよ!!」
凄まじい二人の息の合い方であった。ニアとナディアのコンビネーションなど比較ではない。敵がいることすら感じさせない、凄まじい攻撃力。アストラはこれを見るのは初めてではないが、見るたびに驚かされている。
「・・・本当にすごいね。戦いになるとあの二人。」
「元帥と大将が一緒なら無敵でありますよ!・・・自分の出る幕がなくてさびしいでありますが。」
「お姉ちゃん!ついて来て!離れると危ない!」
「うゆ~早いよ~!!」
・・・そしてこうして進んで20分。フェクトのいる部屋には、すぐ辿り着いた。非戦闘員のアストラのみは息絶え絶えだが、セイバーとナディアは息を切らせた様子もない。余裕を感じた。
「来たみたいだな。アストラ。」
「さーて、ルーアちゃんを解放してもらいましょうか。」
「知らん。アストラに俺は話してるんだ。」
「フェクト!人質を解放するであります!」
「アストラに返事しろと言ってるんだ!!」
完全に無視され、フェクトは怒鳴る。しかし、セイバーは軽く受け流した。
「うるせえなぁ。ルーアちゃんだっけか。俺らが来たからもう安心だ。兄貴のところへ帰ろう。」
「何勝手に勝利宣言してんだ!まだ俺を倒してないだろう!」
「・・・やかましいな。アストラちゃん、ルーアちゃんにかかってるバリアをぶち破ってくれ。戦艦をどうするかはこのやかましい青ネズミ黙らせてからだ。」




