episode10-1 セラフィスノ
「待ちなさい!」
スーツを着た赤髪の女が、金髪の男を追う。
「やはり魔硝石を全て回収しきっただけのことはあるな。やるようになったじゃないか・・・だが、まだ俺には及ばん!」
足を止めたと思ったら、金髪の男から鋭い一閃が来る。その攻撃は、疾く、鋭い。
「えっ、ちょっ・・・キャアッ!」
金髪の男からの攻撃を受け止めきれず、赤髪の女は倒れた。両脇には、茶髪の男、紫髪の男も倒れている。
「シェリル=コンスタンティウス、クレイバー、アラフォース=レクイエル。確保する」
「捕虜が脱走したか・・・!」
こちらは第一銀河で一番の文明を誇るエレデアス。その首都マルクドルグにおいて、茶髪の保安部の兵士ニア=グローレンスとその妹である銀髪の少女、ルーア=グローレンスは軍部が逃した捕虜を血相を変え追っていた。
「待って。ニア、捕虜が逃げた方向わかってる?」
「サーヴィルの連中だろ?足跡が残るからな。北の方だ。アテが外れたら困るからナスカは西の方探してくれ。俺とルーアは北へ行く。」
「わかったわ。ニア、ルーア、そっちは任せたわ。」
そうして紫髪の女性、ナスカ=エレーヴォンと別の方に向かう。その先でニアとルーアは青い肌の人間に遭遇する。
「こいつは・・・逃げた奴じゃねえな。ルーア、やれるか?」
「一瞬。簡単に勝てる。」
「そいつは結構だぜ!」
そういうと、ニアは銃剣、ルーアは手甲を構え、目の前に現れたサーヴィルに向かう。それぞれの攻撃は一撃のもとにサーヴィルの細胞膜を引き裂き、形状を保てなくなったそれは崩れ落ちた。
「手入れが大変なんだけどな・・・経費で落ちるかな。」
そうして、さらに進むと。他のサーヴィルとは明らかに違う、細胞膜が硬質化したサーヴィルがいた。
「お前が捕虜か。痛くしねえから、さっさと投降しな。」
「黙レ!コチラニハ人質ガイル!」
横にはエレデアスの一般市民がいる。
「・・・クソッ!・・・!」
ニアは、そのサーヴィルの後ろを見た。背後には、ナスカがいた。気づかせない為、ニアは話し出す。
「・・・目的はなんだい、捕虜さん?こちらは市民の安全が確保できりゃいいんだが」
「艦長ヘノ連絡ダ!連絡ハモウ済ンデイル!残念ダッタナ!」
「・・・そうかいそうかい。・・・ナスカ!!電磁ロープを出せ!!確保だ!!」
「言われなくても!!」
ニアが叫ぶと、捕縛可能な距離まで近づいてきていたナスカがビットと呼ばれる機械から電磁ロープを出す。一切戦う事もなく人質を救出、逃走兵も確保した。
「・・・軍部もこんなのを逃がすとはな・・・。」
「ニア。ありがとう。気を引いてくれて」
「ああ、気にする事はないぜナスカ。戦わんに越したことはねぇからな。」
・・・そして保安部の基地に戻り。
保安部局長への一連の流れを報告した。
「一般市民が人質に取られるが無傷で解放と・・・よくやった。ニア、ナスカ。今後も頼りにしてるよ。」
「ははっ。」
一連の報告を終え、会議室を出ようとすると大柄な筋骨隆々とした緑髪の男が入ってきた。彼の名はセイバー=アスタリスク。エレデアス軍部の管理長、即ち元帥の階級にいる男であると聞いている。
「邪魔するぜ。・・・逃がしちまった捕虜がここで世話になったな。ひとまず礼を言ってやる。だが、これは軍部の問題だ。勝手にしゃしゃり出るんじゃねえ!軍部のメンツが丸潰れだろうが!!」
強烈な怒号が飛ぶ。ナスカは局長に無礼な態度を取る巨漢の男に嫌悪感を示し、一言物申す。
「お言葉ですが元帥。我々が迅速に対応したからこそ被害が最小限に留められたのです。いつ来るかわからない軍部を待っていたらどうなってたでしょうね?」
「それは逃げた捕虜が雑魚だったからだ。」
「その雑魚を逃がしたのはどちらかな?」
局長の男は、セイバーをせせら笑う。セイバーは追及をひとまず止め、本来の目的である捕虜の身柄の引き渡しを要求した。
「エスカ・・・てめぇ覚えとけよ。ここが軍部だったら軍法会議ものだぜ。」
「そうだな。我々もここが軍部でなくてよかったと思うよ。貴方方の醜態を軍法会議で晒すのはとても恥ずかしいからな。」
「てめぇ・・・!!」
言葉少なげにセイバーは怒りを露わにし、部屋を後にする。凄まじい勢いでドアが閉められ、轟音が鳴り響いた。
「・・・セイバーが余計な事を言ってきたが気にする必要はないぞ。お前たちの判断は正しかった。」
「わかっています。・・・エスカ局長、もう部屋に戻って構いませんか?緊急出動だったもので眠いんですけれども。」
「ああ、戻って寝ても構わんぞ。手当は弾んでおこう。」
ニアは叩き起こされた挙句理不尽に怒鳴られた理不尽さに多少の怒りを覚えつつ、部屋に戻った。




