episode9-3 暗殺
「ダクトナーレ!!」
「・・・セレンか。」
社長室に飛び込むなり、セレンはダクトナーレに怒鳴る。致し方ないであろう。彼女は、全てを奪われたのだ。目の前の男に、恋人も祖国も仲間も。
「私は貴方を許さない!そう、全てを奪った貴方だけは!!」
「勘違いしてるようだな。俺はお前から何も奪っていない。」
「いや、貴方が奪ったのよ。」
そう言い、後ろからシェリルとクレイバーが現れる。その目線は、いつになく冷たい。
「ほう、シェリル。お前はセレンの肩を持つのか。リメリアが見たらなんと言うだろうな。こいつらクロスケーションはスキンエンパイアを苦しめてきた罪の集団だ。」
「・・・黙っててもらえるかしら?スキンエンパイアの破壊を止めなかった貴方がそんなことを言っても全く心に響かないわ。少なくとも貴方にセレンを批判する資格はないと思うのだけれど」
「真にスキンの事を考えていないのであれば批判をするなというのか?」
そう言われ、シェリルは目を細める。その目は、怒りに満ちていた。
「・・・そうね。私もスキンの事なんてどうでもよくてここに来たもの・・・貴方を殺すためにね。ここで理屈の張り合いなんかするために来たんじゃないわ。」
「俺が死ねばマルクセングどころか全世界が混乱するだろう。お前達は歴史の反逆者として永遠に名前を刻まれることになる。それでもいいのか?」
「殺しに来た、なんて言ってる人間に揺さぶりをかけてどうする気なの?何も答える気はないわ。」
シェリルが全てを語り終えた刹那、シェリルの後ろからクレイバーが現れダクトナーレに向けて銃剣を片手に突撃する。ダクトナーレは瞬時に剣を引き抜き、それを防ぐ。この男、クロムと渡り合っただけあり口だけではなく剣の実力も確かな様であった。
「ほう、貴様もこの女共のくだらないクーデターに付き合おうというのか。ルレノを滅ぼしたのはそっちの」
「いや、お前だ」
言葉少なく身を翻し峰を叩き込む。これを避けることはできず、ダクトナーレはたたらを踏む。
「クックックッ、多少はやるようだな。・・・だが俺には最強の後ろ盾がある。」
そう言うと、ダクトナーレはおもむろに机の引き出しを開ける。そこには黒く光る石があった。
「・・・銀河石!」
「そうだ。これがある限り俺は負けん!これで抹殺させてもらうぞ。」
銀河石の光が強まると、光がダクトナーレを包み、ダクトナーレの髪が白く変わる。それと共にダクトナーレの身体能力が大幅に強化される。そして、その速度でセレンに突っ込む。避けられなかった。
「キャァアアアアアアッ!!」
そして、セレンの服には幾多の裂傷が入る。血を流し、セレンは倒れる。
「このッ」
クレイバーもまた、ダクトナーレに突っ込む。しかし。
「クククッ、そんなもので俺に勝てると?」
嘲り笑うダクトナーレは、クレイバーの攻撃をも軽く弾き返す。・・・強かった。
「攻撃っていうのはこうやるのだよ」
そういうとダクトナーレの剣から強力な真空刃が放たれる。真正面にいたクレイバーは避けられず、彼もまた倒れた。
「もう一人追加だ・・・次はシェリル、お前だ。」
そう言うと、残ったシェリルに切りかかる。すんでのところで避けたものの、シェリルの肩には大きな傷がつく。その時だった。
「・・・かなりの劣勢みたいですね。・・・支援をさせてもらいますよ。」
そう言って現れたアラフォースは、ライフエレメンタルを放つ。そうした時。
「シェリル?」
シェリルは、セレンとクレイバーに回復魔術を放つ。そうすると、怒りも悲しみも感じさせない凍った表情でダークチャージを放つ。シェリルの澄んだ紫色の瞳は青く変わり、髪の色も美しい赤髪から人外の存在を感じさせる桃色に変わっていく。
「シェリル!?やめなさい!そんなに魔力を貯めたら・・・!!」
「・・・許さない。」
そう言うと、異形の姿になったシェリルとダクトナーレはどこかに消えてしまった。アラフォースはその変貌を遂げたシェリルを見て、こう呟く。
「・・・リストブレイク。」
「ここは?」
「・・・貴方を殺す。」
何処かもわからない空間。ダクトナーレの目の前にいたのは、シェリルだった。しかし、シェリルの赤い髪は桃色に変色し瞳の色も青く変色している。これを見て、シェリルだと思うものはいまい。
「・・・!?何者だ!」
「物事の中身の理解もできないようね。・・・貴方に支配者としての器はない。」
そう言い放つと、ダクトナーレに無慈悲にシャドウサーベルを浴びせかける。剣を抜く間もなく、ダクトナーレは嬲られる。
「・・・待ってくれ!!まだだ・・・、まだ死にたくない!!」
「話を聞く気はないと言ったでしょう。」
やがて、無差別に放たれたシャドウサーベルの一本がダクトナーレの目を穿つ。
「待ってくれ・・・まだ・・・まだ死にたくない・・・!!」
「その台詞、貴方が殺してきた人間何人が吐いたでしょうね?」
そして、モルコスフィアから渡された弓を手にかける。そしたら、どうしたことだろう。
弓を二度と引けないであろう程に深く傷つけられたであろう肩を気にすることもなく、軽々とモルコスフィアから渡された弓の弦を引く。そして、苦しむダクトナーレめがけ矢を射る。
「・・・貴方にその器は過ぎたるものだったというだけの話よ。神の器に、人の身体なんていらないわ。」
ダクトナーレの断末魔を聞いたのは、新たなる魔空間にただ一人いたシェリルのみであった。
「ダクトナーレ=グローレンス。願わくば、次の時にはその力を平和へのために使わんことを。」
そして、社長室。
クレイバーとセレンは、シェリルの回復魔術によって目覚めた。
「・・・うーん?シェリル?ダクトナーレ!?ダクトナーレは!?」
「ダクトナーレは誰にも見えない場所で抹殺したわ。もう、奴が現れることはない。」
そう言うシェリルは、もうあの異形の姿ではない。澄んだ紫色の瞳に、赤い綺麗な美しい髪。彼女が、シェリル=コンスタンティウスだ。
「・・・そうか。悪いな。全部お前に罪を被せて。」
「いいの。あとは私がやるわ。」
こうしてシェリルは、MZBの国営放送に緊急放送を割り込ませ・・・。




