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銀河騒乱   作者: 村山龍香
第一章 ガイア編
20/63

episode6-3 離別

「ファルク、リメル、ごめん。私一人にやらせて。ぶっ飛ばしたくてしょうがない。」

とシェリルは言った。どうしてもこの男を許せなかったのだ。

「君一人でやる気か?面白い。尤も月光石の使い方をわかってる僕には勝てないと思うけどね」

そう言うと、サンレイズの体が足から消えていく。正確に言えば、認識できないのだ。

「どうやって人を消していたかわかるか?どうやってこんな基地を隠したかわかるか?それが月光石の使い方だ」

月光石の属性は光である。シェリルがコールタウンで語っていた通り、光は何も明かりを灯すだけでなく分散、屈折など様々な用途に応用される。光の利用で人を消す、というか見えなくする実験。それがこの基地で行われていた実験だった。しかし、サンレイズはシェリルの事をメルヴィーネスのクローンであること以外を何一つとして理解していない。

「視界から消えようが消えまいが関係ないわ・・・虫の居所が滅茶苦茶悪いのよ。やられてもらうわ。」

そういうとシェリルはプロミネンスを放つ。シェリルが放った青い火球は、シェリルが認識できないはずのサンレイズに向かって迷わず突き進む。不意を突かれたサンレイズは、もちろん躱すことができず熱量により焼かれる。

「なっ・・・なぜだ!」

「貴方がそれを知る必要はないし、私が言う意味もないわね。」

冷淡に突き放すシェリルが、銃を抜かせる間もなく火球を放ち続け、一気に倒さんとする。シェリルが何故視覚で認識できないサンレイズに向かって攻撃できたのか?彼女は、月光石の魔力のみを認識していたのだ。魔硝石は、シェリルのように直接魔術が使用できるような特別な訓練を積んでない限りは懐に持たなければ魔術を使用できない。サンレイズも勿論その例に漏れておらず、月光石をポケットに入れて持っており、そうしなければ月光石の魔力を引き出すことはできなかった。

しかし、シェリルのように魔力の流れを自分で作れるような人間であれば魔硝石のような高い魔力を持つ魔力源ならいちいち視覚せずともその存在を知覚できる。それを知らなかったサンレイズは油断もあり目の前の少女にあっさりと倒される。実力を発揮する間さえ、与えない。

「不意を突けばこんなもんよ・・・さて。月光石も貰うしコールの人も開放してもらうわよ。しないって言うならこの場で殺すまでだけど」

「残念だけど、そうはいかないわね」

しかし、月光石を回収することはできなかった。セレンが現れ、シェリルが月光石を取るよりも早くサンレイズを蹴り飛ばし月光石を奪い取ったからだ。

「なっ・・・セレン!?どうやってここがわかった!?」

「残念だけど、基地を見えなくしたくらいじゃクロスケーションを騙すことはできないわね。寧ろこんな大仰なことをしたらここに魔硝石があるって言ってるようなものよ。」

「セレンか・・・悪いけど魔硝石は貴女には渡せないわ。MZBよりはましだと思うけど、まだ信用はできないもの。」

「貴女なんかに信用される必要性ないわね。なら、奪い取ってごらんなさい。貴女とファルクを倒して、リメリア皇女も連れて帰る」

シェリルは間髪入れず挨拶代わりの局所的な吹雪、アイシクルレインをさらに発展させた魔術、コールドブリザードをお見舞いする。ただ流石に高い魔力を持つセレンだけはあり、月光石から回復魔術を放ち、瞬時に回復を図る。瞬間的にもたらされた極めて低い温度の吹雪によってつけられた凍傷はあっさりと癒える。

「かなりの魔力を培ったみたいね・・・これは厄介ね。こうなったらクロムか私じゃないと抑えられないじゃない」

「そう?褒めて貰ってありがとう。でもとりあえず、月光石だけは渡してもらわないとね」

その強力な魔力のぶつかり合いに、ファルクとリメルは目を丸くする。最早人間の領域ではない、神の領域と言っても差し支えない凄まじいレベルの闘いを展開していたからだ。しかし、呆然としていたのも一瞬だけ。すぐさまライフルとオートガンを準備し、シェリルの後方支援に入る。

「セレン!もう私は、貴女の言う事には従いません!」

「リメリア皇女、皆心配してますよ。早くスキンに帰りましょう。」

「ダメよ。私が認めない。」

そう言い、シェリルは月光石から発動されていた魔術、ライトクロスを完璧にラーニングしセレンに対し打ち返す。

かなり強力な魔術であり、セレンはすぐさま距離を取る。

「しつこいわね・・・!?」

セレンは、目を驚愕させる。シェリルの魔力ではなく、後ろから来た援軍と言っても差し支えない嘗て議事堂で対峙した茶髪の男が銃剣を構え近づいてきたからだ。

「シェリル。コールの人はアラフォースと一緒に全員無事に解放した。この問題はもうこれで問題はないだろうがセレンか・・・魔硝石を持ってるみたいだな。」

「・・・これは分が悪いわね。シェリルとファルクを捕まえてリメリア皇女を連れて帰れると完璧だったんだけど。ここは月光石だけで勘弁してあげるわ。」

そう言い、月光石を持ったセレンはさっさと逃げた。流石に押し切れないと判断したセレンは、すぐさま姿が見えなくなる。

「なっ・・・スキンエンパイアに魔硝石が渡った・・・!?なんてことをしてくれたんだ。世界の終焉を見ることになるぞ・・・!!」

「何言ってんだ?お前が言える台詞じゃねえだろうが!」

「こうなったらもう手段は選ばないぞ・・・魔硝石が一個でもあれば魔硝石兵器は威力は減っても使える。どんな手段を使ってでもクロスケーションを止めてみせるぞ。この手で・・・スキンを終わらせる!それだけだ!!」

そういうサンレイズの目に、冗談の色はない。このままでは本当にスキンが終わる、と思ったシェリル達は慌ててサンレイズを追う。しかし、クレイバーのみはそんなことどこ吹く風、歩いていた。

「シェリル。前々から言ってたことがあったな。俺はマーティ、俺の姉貴を探し続けていたと。その姉貴がルレノにいる、って情報を掴んだ。だから俺はルレノに行く。」

勿論、スキンを放っておけない二人からは非難の声が上がる。

「何言ってんだ?そんな後でもいいことのためにスキンはどうでもいいってのか?」

「そんな自分勝手な・・・!?」

「・・・勝手なこと言ってるけどよ。スキンはルレノを滅ぼした国だ。そんな国のために動くと思うな。」

「いい加減にしてください!スキンはルレノに手出しをしていません!!」

「ふざけるな!!俺は目の前でスキンに滅ぼされるところを見てたんだよ!!だから俺はルレノに行く。・・・じゃあな。」

そう言ってクレイバーは足早に立ち去ってしまった。勿論、ルレノに行くことなど疑いの余地もない。シェリルはそれを見て追いかけるが、ファルクに止められる。

「シェリル。まさかあんな自分の都合しか考えてない奴のためにお前までスキンを見捨てるんじゃないだろうな。それにルレノに魔硝石はない。お前にとっても無駄足だろう。」

しかし、以前なら止まったであろうシェリルの足が止まることはない。

「貴方にはわからないだろうけどね。あの人は自分の事しか考えてないんじゃなくて、自分一人で戦ってるの。私はあの人に一人じゃないってことをわからせたいの。それにあの人がスキンの味方につけば、これ以上ない味方でしょう。だから説得して戦う。」

「・・・どうしてもそうしたいなら勝手にしろ。ただ、本当にスキンを見捨ててないというならば態度で示してもらう。もしあいつをここまで言っても追うというならお前が持っている魔硝石を全て寄越せ。魔硝石なしで魔術を使えるお前になら魔硝石は要らないだろう。マルクセングに殴りこむのに素手じゃ負けるに決まってるからな。もし置いていかない上にルレノに行くとかほざきやがったらその頭ぶち抜くが」

「・・・わかったわ。魔硝石は全部渡す。私が帰ってくるまでに、サンレイズの事は頼むわ。」

「磁界石はいいですよ。それは、貴女のおばあさんから渡されたものなのでしょう?」

「・・・ありがとう。」

そう言ってシェリルはファルクたちと別れ、一人ルレノへと向かう準備を始めた。クレイバーは間違った認識をしている、そして真の悪はクロスケーションでなくMZBであるとシェリルはもう確信していた。

もう彼女の中で、MZBに対する信用など毛の程もなかった。倭国にいたときに考え付いた仮説が、仮説でなく事実だという確信があったのだから。だからこそ、クレイバーの考えを改めさせようと思ったのである。間違った正義の味方に踊らされている、あの悲劇の主人公を。

ここで分岐前までの話は終了です。スキンに向かうルートはあくまでサイドなので、間の部分はプレイして補完してください。

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