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銀河騒乱   作者: 村山龍香
第一章 ガイア編
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episode4-1 マルクセングの贈り物

ここはフィルノアの一室。戦い慣れして体が頑丈なクレイバー、アラフォースは意識を失わなかったものの体つきが特別良い訳ではなく唯一女性と言うこともあったシェリルは飛び降りたショックで昏倒し、部屋に運び込まれたのだ。

「・・・ここは、フィルノアね。」

「ああ。ここはマルクセングが所有する戦艦フィルノア。艦長は海軍元帥ジェクター=ローゼンべリア。俺たちはマルクセングに助けられたんだ。」

マルクセング、という名前を聞きシェリルの顔が一挙に険しくなる。

「しかしどういう風の吹き回しなんだろうな。MZBは俺達を助けるために乗り込んできたらしいぞ。・・・シェリル?どうした?」

シェリルの顔が次々と疑念に曇っていく様子が、クレイバーにもいい加減分かったようだ。アラフォースがシェリルの心中を代弁するように、答える。

「・・・シェリルは私とおそらく同じ考えだと思うのですが、私はクロスケーションは信用できる機関だとは思っていませんがMZBも同様だと思ってます。シェリル、貴女がそう考えてるなら何かしら根拠くらいあるでしょう?」

「・・・察しがいいわね、アラフォース。そう、私クロスケーションは信用できないけどかと言ってマルクセングも信用してないわ。さっきダクトナーレが来た瞬間に確信したの。不自然な点があまりにも多すぎる」

「・・・どういうことだ?マルクセングは俺たちを助けたじゃないか。」

シェリルはそのまま理路整然と並べる。

「まず不審な点一つ目。セレンとスズの魔硝石。確実に私たちを仕留めるならスズかセレンに持っている筈の氷河石と月光石を持たせて制圧するべきじゃない?なのにスズが疾風石を持ってるだけでセレンは素手で私たち・・・銃を持ってる二人、ファルクとリメルを抑えようとした。私達を侮っていたとしても、持ちすらしないのはいくらなんでも不自然すぎる」

「いや、俺達に必要ないと思ったんじゃないか?力量差は明らかだったし」

「だから、その意味がないって言ってるの。リメル以外を殺す気で最初からいるのなら使ってさっさと殺しちゃえばいいのよ。そこが一点目。もう一個は何故私達を助けることを目的に乗り込んだのかって事。私達を助けるって言っても軍を動かすための理由にも何にもなりゃしないのよ。一方的な殺害って言うにも万人規模ならともかくたったの5人しかもMZBに関与していない私やアラフォースを助ける意味もない。唯一助けるとしたらクレイバーだけなんだけど・・・マルクセングがそんな露骨にスパイを入れてるのがバレる真似するかしら?そんななりふり構わぬ真似をするのは魔硝石以外に考えられない。こういうわけで信ずるに値しないと思ってるわ。」

その説明と共に、クレイバーにも違和感が走った。ふとリトラートの発言が頭をよぎったからだ。


『MZBとの関わりは絶対に知られるな。』


リトラートは侵入前にMZBとの関わりを知られぬように、と釘を刺していた。それなのにも関わらず、MZBは自分達を救出しに来た。しかも救出のために来た、と名乗りを上げながら。

絶対に関わりがある、とわかるのにだ。

「・・・そういえばジェクター元帥がシェリルを呼んでいた。どうするかはそれから決めよう。」

クレイバーは悩んでいた。自分はMZBに二回も助けられている。それを疑うなどということはしたくない。しかしシェリルの弁により、その信頼に揺らぎが現れたのだった。恩を忘れたわけでもなく不信感を抱いた自分に嫌悪感を覚えつつ、クレイバーは先にジェクターの待つ会議室に向かった。

「・・・恐らく、私はMZBにも喧嘩を売ることになるわね。」

そう小さく漏らし、シェリルは女性用のシャワー室に入った。


「シェリル、随分時間がかかったじゃねえか」

会議室に入るとジェクターがシェリルに知り合いであるかのように話しかける。

「悪いわね。ずっと走ってて汗かいてたからシャワー室は借りてたのよ。・・・で?話って何。」

不信感を募らせているシェリルはぶっきらぼうに返す。勿論、シェリルにはジェクターと話したことなどない。馴れ馴れしげな群青色の髪の男にちょっとした悪印象を持った。

「随分と嫌われたもんだ、そんなことをした記憶はねぇんだが・・・まあいい、本題に入ろう。お前は磁界石、火炎石、疾風石、それと暗黒石を持っているだろう?それを全て渡してもらいたい。」

やはりそれか、とシェリルはため息を深々と吐く。失敗したら十中八九切り捨てるであろうルレノ出身の仮所属の兵士とMZBに縁も所縁もない女性を助ける理由などそれしかないに決まっているのに。クレイバーは何も言わないが、その顔は心なしか青ざめて映ったであろう。

「・・・なんで?渡して何が起こるの?それに私は暗黒石なんか持ってないわよ?」

信頼も何も持っていなかったシェリルには薄々見えていたその下心に真っ向から歯向かうような目線を向け、ジェクターに尋ねる。

「MZBは魔硝石エネルギーの開発に尽力している。そのエネルギーでスキンに対抗する兵器を制作したんだが、サンレイズが言うにはその兵器を発動させるには五個の魔硝石が必要らしい。MZBは現在氷河石、月光石、雷鳴石の三つの魔硝石を保持している。お前の魔硝石、暗黒石は今持ってねえみたいだがその三つでも六個になる。発動可能な条件になるわけだ。」

「成程、はなっから私達の魔硝石が目当てだったわけね。・・・悪いけどその話なら諦めて。やっぱり貴方達を信用することはできない。」

「MZBを敵に回す気か?MZBを敵に回したらどうなるかはMZBにいたお前がわかってねぇとは思えねぇんだがな」

「MZBにいたことなんて私はないわ。いい加減にして」

若干の苛立ちを表していたジェクターの堪忍袋の緒が切れた。声音を一気に荒げ、ジェクターは配下の海兵に言い放つ。

「魔硝石を渡さねえの次はいたこともねえだぁ?お前こそいい加減にしろ!おい海兵ども、シェリルから魔硝石を取り上げろ!!」

シェリルは瞬間に火炎石からエクスプロージョンを放ち撹乱する。

「クレイバー!こっち!」

クレイバーの手を引き、会議室から抜け出した。

「おいシェリル、本当に喧嘩売ってどうするんだよ!いくら何でも他に言いようがあるだろ!」

「シっ、逃げてる立場なんだから。話は一応聞いてたけどやっぱりMZBは信用できないわ。下手したらクロスケーション以上に。とりあえずこの船には確実にもしも沈没した時のための脱出用のホバークラフトがあると思うの。それを見つけて脱出したら不信感が深まった根拠を話すから。・・・借りでいいから、一緒に来てくれない?」

はいと答えるしかないその問いを尋ねるシェリルの顔は、クレイバーから見て堪らなく可憐で魅力的であった。

「・・・ちっ、クロムの時の分がある。それチャラな」

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