プロローグ00
不定期更新です。処女作である「異世界×神界の二重生活」が完結してから定期更新します。
ここは地球とは離れた別世界の出来事。
常に地表では生活できずに地底にて発展した一つの世界。天よりも高く最も神の恩恵を受けた生命が誕生した時のこと。
その者たちは命の危機にあった。
枯渇した水と食料。飢えを凌ぐだけで生きていくのが必死。唯一の救いは自分たちには超常の能力が備わっていたこと。
水を生み出し、大気を操る。
万物の創造とまではいかないが、過酷なこの地に順応できるだけの力を。
解放されるその時まで。
天の許しが得られるその時まで。
一人の女性が地に跪き祈りを捧げていた。
全身純白の和服の白無垢に角隠しを纏い。
『……##…○エ:……』
「承知しました」
『……ワ……**○レ』
「天命、拝命仕り。御身が為に我が身捧げましょう」
『……イ』
女に照らされた光は徐々に消え、女と何もない暗い講堂だけが残る。
一息ついて立ち上がり祭壇に一礼し講堂を去る。
講堂の扉を開けると老若男女が道を開け跪いていた。
一糸乱れない配列と物静かさは銅像が置かれているだけと錯覚するほどに。
最も老いを感じさせられる姿の老婆が杖を持ち女の横へ立つ。
「巫女姫、天命はいかに」
「時は満ち足り。我らの使命、只今を持って成就す」
「御意に。我らの命、原初に帰するでしょう。皆の者、抜刀」
各々、懐から刃渡り20センチほどの腰刀を取り出す。
当たり前の様に、極自然に。
皆は戸惑うことなく自身の心臓へ突き刺した。
倒れ伏す老若男女。血だまりは出ない。その代わりに皆は恰も存在しなかったかの如く光の粒子となって消え去った。
残された女は一言も発さずに脱ぎ捨てられた白装束の中央を歩き立ち止まる。
そこには静かに吐息を吐いて眠る赤子の姿。
ゆりかごに揺られて何とも気持ちよさそうだ。
「嗚呼、我が子よ。許せ。我が一族の秘術の全てをお前に」
不思議と悲しみの感情は湧かなかった。
「どうか、幸せになっておくれ」
薄い膜が赤子を包み込み、赤子は宙に浮かび空へと消えていく。
フッと口角を上げる。
彼女は光の粒子となって消えていった。
後に繋がる話なので次話からが本編です