一を聞いて十を知る男 零
ファルコ視点でお送りします!
俺は遊軍隊長ファルコ。
何?どこかで聞いたことのある名前?
すまないな。
俺に名前をくれた人が願いを込めたのだろう。
どうか大目に見て、許してほしい。
ところで今、俺は奏多を連れて城へと急いでいる。
急がなければならない理由があるのだ。
「走ろう、雇い主」
「え~歩こうよ、ファルコ」
雇い主は呑気にそう言うと歩いている。
俺を信頼してくれるのは嬉しいが、少し困るな・・・。
「そうだぞ、ファルコ。そいつの言う通りだ」
甘い美声が聞こえてきた。
しかも、俺の肩に手まで掛けている。
「頼む、零。今は急いでるんだ」
「俺より大切な用事があるとは心外だな。そいつは誰だ?」
零に会いたくないから急いでいたのに・・・
否、何でもない。忘れてくれ。
飄々とした性格の此奴は零。
悪戯好きで、理解力が高い。そして謎の美声。
間違いなくモテる類の人間だろう。
ちょっとした嫌味と俺様発言さえなければの話だが・・・
随分と前から何故か、俺の事を気に入っているようだ。
ちなみに零も俺が受け持つ護衛すべき人物の一人だ。
だから、例え落とし穴に落とされようと、嫌味を言われようと、
俺の嫌いな甘い物を食わされようと従わなければならないのだ。
「此奴は奏多。今日から俺の雇い主となる男だ」
「だから襲われない様に急いでるのか。仲間の許へ行くんだろう?」
「嗚呼、そうだ。すまないな」
流石の理解力、一を聞いて十を知る男だ。
敵に回せば怖いが、味方にしても怖い。
いったい如何しろと言うんだ神様!
「初めまして!」
「宜しくな。せいぜい生き残ると良いさ」
「おい、怖いぞ!頼むから雇い主を怖がらせないでくれ」
「おいおい、嫉妬しちまうだろ。ファルコ・・・」
お願いだ・・・誤解を与えないでくれ。
間違っても俺と零は恋人関係とかそういうのじゃない。
断じて違う。絶対に違うからな!
「お二人は、どのような関係ですか?」
よくぞ聞いてくれた雇い主!
ここでハッキリさせておかなければな。
俺と零が只の友人であるという事を・・・。
「ファルコは俺の玩具・・・」
「只の友人だ。それ以上でもそれ以下でもない」
・・・見事に意見が分かれた。
どういう事だよ、零!
玩具って、お前・・・そんな風に思ってたのか?
お前の悪戯に対する俺の反応が面白いからって、それはないだろ?
「え~と・・・すみません」
何で謝るんだ?良いんだぞ、雇い主。お前は悪くない。
「別に構わないけどな」
お前が答えるな、零!
突っ込みすぎて、疲れてきた。
「行こう・・・雇い主・・・」
精神ダメージが大きすぎて、俺は限界だった。
一刻も早く白狼に会いたい。
そして相談したい。事の全てを。
まだ話したそうな零を置き去りに、
俺と雇い主は城へ走った。
まぁ、半ば俺が雇い主を担いだんだがな・・・。
悪かったと思ってる。本当に申し訳ない。
――流れる黒雲が黄昏の空を覆い尽くした・・・
ファルコさんは貧乏くじを引くことが多い気がします。
勿論、本人はそんなことは思っておらず、
愛情深く全てを受け止めるのですが・・・
それを心配する者も少なくはないようです。