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今日から学校と仕事、始まります。①莞

あの店のあのあれ

作者: 孤独

「あの店のあれがすっごく美味しいってさ」


食べた事はないが、SNSやら周囲の情報やらテレビとかで手に入れた朗報を語る。


「今度あの店に行ってあのあれを食べてみない?」


御子柴は1人で行くのもつまらないから、友達を誘うのである。

しかし、それは建前で、情報をもらったがどの店のどの何かというのを忘れてしまった。

誰か覚えているだろうと、しかして、それを話しておいて訊くのは恥ずかしい。

誘う3人の中で誰かが分かるだろう。きっと、たぶん。


「わーっ、いいねぇ。日曜日でどう?ショッピングの後で、あの店のあのあれを食べたいなぁ」


迎、純粋におでかけしたいだけである。

お昼に何を食べたいかなんて、後回し。一体なにが美味しいのかはちょっと気になる程度。


「あの店のあのあれ。美味しそうだったよね。評判良いらしい」


嶋村。御子柴の話を合わせるつもりで乗っかる。当人も、


『どのお店の、どのあれだっけ?』


ま、御子柴が知ってるんだし、案内してもらえればいいかー。



「待ち合わせ場所はどこにしようか。近いのは△△△駅?」


川中。御子柴や嶋村と同じく、知った風な口ぶり。自分達が待ち合わせによく使う駅を提案。そこならまず迷わない。一緒に行けばいい。


「そうね。いつものところ、10:00にしましょ」


迎や川中、嶋村が知ってそうだし。マジで旨そうなのに住所や店の名前を忘れたなんて言えないし


「さんせー、あの店のあのあれ、食べてみたーい」


御子柴が誘っているから、御子柴に付いて行けば、あの店のあのあれが分かると思う。


「楽しみだねー。美味しいのかな、あの店のあのあれってー」


あの店のあのあれを知っている御子柴と迎、川中なら、間違いはないでしょー


「予算は多めに、奮発しちゃおー」


みんなとお出かけは楽しみだなぁ。



◇      ◇



当日、


「…………それじゃあ、行こうか」

「うん」


10:00前に来たみんな。固まり始める。


「……………あの」

「なに?」

「御子柴ちゃん?」


なぜか4人共。立ち止まる。


「………」


ヤバイ、私。結局あの店がなんなのか分からないし、アレってなんなの?


「あの店に行くんだよねー。あれを食べにー」


どの店だ?みんな、誰かしら知ってるんじゃないの?


「うんうん。その前に買い物を済ませて、小腹を空かせよう」

「そうだよね。あの店のあれを食べるわけだし、お腹は少々空けておかないと」


あれってなんだろ?御子柴ちゃんの言っているあれってなに?

店を知っているんじゃないの?ねぇ、御子柴。

私、知らないんだけど。あの店ってなに!?あのあれってなに!?


「ショッピングするならここから○○○駅に行こうね」

「そ、そうね。○○○駅に、たぶん、あの店があるわけだし」


あるのよね!?あるんでしょうね!?


「え?あの店って○○○駅から行けるの?」

「え?川中、どうなの!?」

「あ。ごめん!ショッピングが先だもんね!」


違うのか!?


あーっ、どこなんだ。そして、何を食べるべきなんだ。



「あーーっ」

「えーーっ」

「うーーっ」



ショッピングを楽しみながら、刻々と時間は正午に近づいていく。カゴに入っていく品物の金額分だけ、御子柴達に不安が走る。口走って、御子柴が尋ねる。


「あの店ってどこのこと?あのあれってなに?」

「知らないわけ?御子柴」

「そーいう迎はどーなのよ。あたし、知らないから」

「1抜けか、嶋村!どーしてこうなった!?」


結局、なんだったっけ!?あの店の、あのアレって……


そんな時だった。


「ねーねー、御子柴ちゃん」

「どうしたのよ、川中」


何も知らずか、それとも知っていたのか。


「ほら!みんなが言っていた、中華料理屋の冷やし中華。まだあるってー!もう食べよーよ!あの店のあのあれなんだから!」


その天使の微笑みと、お告げから繰り出される救済の話。3人は川中に祈りながら、


「「「いただきます!」」」


ようやく、それがそうだと。そう誓って思い、中華料理屋に入るのであった。



◇     ◇



「誰が中華料理屋の冷やし中華を食べようって言った!?」


その日の夜のこと。とある男性陣4人はなぜだか冷やし中華を食べるために出歩いていた。店なんか閉まっている時間帯にだ。非常に醜い言い争いをしながら


「夜の中華料理屋の冷やし中華が旨いって言ったのは、相場だろ?」

「いや、そんな話してねぇよ!?人のせいにするな、舟!」


こんな時間に冷やし中華を食いに行くバカがどこにいる。


「俺達の事だな」

「四葉!すまし顔をするな!くっそーー!なんだった!?」

「俺達はなにをするため、こんな夜中に集まったんだ!!」



どこかに行く予定だったんだよ。忘れてしまった。書き換えられてしまった。あの店のあのあれって呼んでいた。それだけ、学校では語れない、××××なお店であったはず。どこの事だっけ?伏字のせいだ。


「クソーー!冷やし中華なんて食べられるかーー!」

「なんでこうなったーー!」


絶叫と憤怒に満ちる相場と舟。


「まぁそう言わず、ラーメンの屋台見つけたから食べようぜ」

「俺もそれでいい」


付き合いのつもりであった、四葉と坂倉はラーメンの屋台を見つけ



「親父さん、冷やし中華を頼める?」

「同じく。冷やし中華が良い」

「うち、ラーメンが売りなんですけど?どーしたんです、学生さんが集まって」



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