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自己紹介

桜が舞う、うららかな春日和。黒の制服に身を包んだ千名近くの若者がある学園の講堂に集結していた。計三千席の講堂はこの学園のすべての生徒が座れるほどであった。学生はさまざまで着崩した金髪のものも入れば、きっちりと制服を着こなしているものもいる。仲間とつるんでいる者もいれば一人でまじまじと入学者の名簿を眺めている者もいた。

「静かに」

講堂内に響くその声に反応し皆がステージの中央にいる女性をみる。見た目は二十代前半といったところできれいな茶髪のロングヘアーとビジネススーツが皆の目に眩しく映った。


「まずはご入学おめでとう。私がこの学園の校長を務める加賀 美月だ。気軽に名前で呼んでくれ。」

加賀さんは辺りの生徒を見渡す。その表情には笑顔を輝かせていた。

「さて、ここにいる皆さんは人種、性別など違いがあるかもしれません。ですが皆さんはある共通点のもとにいます。この学園では仲間です。互いに手を取り合って生活いくように。私からは以上です。では理事長お願いします」

そういうと加賀さんはさがり後ろからゆっくりと銀髪の髪をもつ師風が現れる。

「みなさん初めまして」

マイクを使わずとも全員に透き通るような声であった。

「僕はこの学園の創始者、師風 呂歩だ。この学園は異能者が社会に適合するため、いやこの言い方はよそう。普通の人々に我々の存在を認めさせるために設立されたものだ。君たちはそのために集まった。ひどい境遇を受けたものもいるだろう。けれどもこの学園に来たからには生まれ変わってもらうよ。この学園は君たちが力を制御する方法、役立てる方法を学ぶ場所だ。卒業後は自由だが学園にいるうちは生徒であることを忘れるな。私からは以上。楽しい学園生活を送れることをいのる。」

師風の演説が終わるとまばらに数人が拍手をする。それにつられて皆が拍手をする。講堂内に音が響き渡った。少しばかり恥ずかしそうに師風は下がっていった。

「これで入学式は終わりです。ちなみにこの変な形態は理事長の意見なので気になさらないでください。」

それが終わるとざわめきながらもぞろぞろと生徒が外に出ていく。しまいに講堂はすっからかんになっていた。黒羽(こくは)は少しばかりステージを眺めていた。

「ねえ、君」

声が聞こえてきて黒羽は振り向く。そこにいたのは見た目完全に小学生の少女。長い白髪をまとめて、つぶらな蒼白の目をもつその子が黒羽の目の前にいた。

「みんな出て行っちゃったよ?」

「小学生か?」

聞き流すように少女は笑う。

「よく言われるよ、それ。でも私は新入生だし、きみと同い年だよ」

「そうか。悪かったな。」

反応からして本当によく言われ続けていたのだろう。黒羽は席を立ち出口へと向かっていく。少女もその横について行った。黒羽の190の身長に対して140前後といったところか。

「なんで君はここに残っていたんだ?」

「私、見ての通り小さいでしょ。大勢の中行くと埋もれちゃうんだよ」

「なるほどな」

「君はどうして?」

黒羽は少しばかりうつむく。

「懐かしんでいたんだ」

「ここに来たことが?」

「まあな」

二人が外に出たときにはチャイムの音が聞こえた。中学時代もよく聞きなれた音であった。

「やばいな」

二人はあわてて校舎のほうへ向かった。すでに配られた入学名簿に自分たちのクラスは書いてあった。急いでその教室へ向かうと二人は同じ場所についていた。

「同じクラスだったか」

「そうみたいだね」

教室に入ったと同時にチャイムが鳴る。すでに教師を含むクラスの人間はそろっていた。

「すいません。遅刻ですか?」

おそらく先生と思われる女性が二人をみた。黒のショートカットだ。は二人を見る。少し呆れた顔をみせる。

「いいえ、セーフよ。早く席に着きなさい、二人とも」

二人は会釈をしてあいている席に着いた。偶然にも隣同士であった少女は一番奥、角の窓際。黒羽はその隣であった。縦4席、横5席の構成だ。教師が全体の生徒20人を見渡す。

「では、入学おめでとう。私がとりあえず一年間君たちの担任になるものだ。」

長身でどこかけだるそうな感じをはなつ先生は黒板に自分の名前をでかでかと書きだす。

「影宮 陽子だ。よろしく頼む」

ぼさぼさで手入れを施されていない茶髪をかきながら先生は生徒に会釈をする。女性でありながら美というものにあまり関心がない感じだったが素材は一級品だ。

「さて、恒例の自己紹介と行こうか」

先生は勢いよく両手を教壇に乗せながらいう。

「わかっていると思うが、このクラスはほかのクラスよりも色が濃いからな。辺りにはすでに知っている奴もいるかもしれんが、それは他人の視点から見た話だ。学友としての視点で再び見知ってほしい」

何人か驚いている生徒もいた。先ほどの静かな空気とは別人のような明るさがこの人から伝わってきたからだろう。

「では、一番から順番にどうぞ。あ、名前と一言だけでいいからな」

窓際左の席の女性が立つ。

「雨宮 千里です。よろしくお願いします」

少しばかり無愛想な青髪のロングヘアーの女性は抜群のプロモーションを持ち、まさに美女といった顔つきであった。笑顔を見せることなく、それだけ言うと雨宮は席に着いた。ついで後ろの男が立ち上がる。

「犬飼 歩武。とりあえず3年間よろしく。」

荒っぽい外見とは裏腹に口数少なくその金髪の男はそれだけ言うと席に着いた。見た目は少し前の不良と呼ばれるものであろう。犬飼が席に着くと後ろの男も立ち上がる。

「梅原 喜助っす。これからよろしくお願いします!」

前の2名とは対照的に気さくな笑顔を見せながらそいつはあいさつをした。清楚な髪と親しみやすい外見を持っていた。ゆっくりと座ると次いで後ろの女性が立つ。背はかなり高い。

「エマ・ワトソンです。以上」

褐色の肌をもち眼鏡をかけた女性はそれだけ言うと席に着いた。スタイルは控えめだが長身でどことなく安心感をただよわせる。制服をきっちりと着こなしているようすから根はまじめなのであろう。後ろの少女が立ち上がる。

「初めまして、()(さい) 強子です。こんななりですが同学年なのでよろしくお願いします。」

笑顔を見せながら立ってるか座っているのかわからない丈の少女は席に着いた。先ほどの言葉は彼女なりのジョークだと考える者もいれば皮肉だと考える者もいた。席は先頭へと戻る。

「木咲 舞です。」

座りながら読書をしていた少女はそれをいうときすらも本を読んでいた。どことなく不思議な雰囲気を感じさせる和風の少女であった。黒髪のおかっぱは目までかかっていた。

(よくあれで本が読めるな)

ほぼ正面にいた影宮はそんなことを考えていた。この位置からでも人相は分からなかった。

「木下 重三だ。以後よろしく」

ガタイのいい大男はそれだけをいい席に着いた。クマと格闘できるのではといわんばかりの大男である。その野性味は髪のぼさぼさ具合がさらに磨きをかけていた。席についてもその威圧感は印象深い。しかしその顔は慈愛に満ち溢れていた。次いで後ろの席にいた金髪ツインテールの女性が立つ。

「久那 輝夜です。よろしくお願いいたしますわ」

口調は少しばかり高圧的であった。そのはずだ。世界屈指の久那財閥のご令嬢である。テレビで見たときもこんな感じだ。それでも人気があるのは少女と美女が混ざったその美形であろう。座り次第後ろの男が立つ。

「じゃ、つぎおれですね。工藤 研吾。今後とも頼ん「ます」

黒羽の前にいる男は親しみやすい雰囲気を放ちながらそう紹介した。茶髪できりっとした目が特徴の男だ。(何となくこいつとは仲良くやっていけそうだ)と黒羽は感じた。工藤が座ると黒羽がたつ。

「黒羽 黒矢。よろしくお願いします。」

その名前にクラスの人間すべてが何らかの反応を示した。横にいた花最はこちらを見続ける。横目で見る者もいればこっちに顔を向けるもの。木咲に関してはめくっていたページの手を止めていた。わかってはいたが父の名前の重みを黒矢は感じていた。何も言わずにすぐに席に着く。

「阪上 忍。都会に出るのは初めてだ。よろしく頼む」

空気を変えるようにその男は言葉を発する。長い黒の髪と長身は少しばかり不気味さを漂わせていた。顔は髪に隠れて見えていない。

(こいつら親戚か)

正面から二人をとらえれる位置にいる影宮は顔の隠れた人間が並んでいる奇妙な光景を眺めていた。後ろの金髪の男は腕を組み、座りながら

「ジョー・カイエン。」

そう名乗っただけだった。高校生離れした顔と木下、並みの体格を持つが威圧感はさらにきついものであった。後ろにいた少女もおびえているように見えた。そんな少女が立ち上がりあたりをきょろきょろと見回す。

「「あ、あの。す、すす鈴原 さつきです。よ、よろしくおお願いします。」

慌てふためくその様子を見てある程度の人間はこの子がただあがっているだけだとわかった。弱弱しい体躯とは逆に前の威圧感に動揺していないという驚きをもった者もいた。

「じゃ、次あたしね」

後ろにいた明るい雰囲気をもったボーイッシュな女性は立ち上がる。

「名前は園田 睦月。よろしく」

辺りを見ながら園田は明るくふるまった。長身、控えめなスタイル、潤沢のない笑顔に心を奪われそうになったものもいた。園田が席に着くと後ろの少年が立ち上がった。

「は、はじめまして。光 功夜っていいます。これからよろしくお願いします。」

普通。まさにこの色濃い面子ではその言葉がお似合いだった。髪は黒、童顔。身長も平均的である。少年自身4ここでどう立ち回るのか悩んでいるレベルである。平然を保ちつつ光は席に着いた。次の列の先頭が立ち上がる。

「不動 劾です。よろしくお願いします。」

長身長、キツネ目のクールイケメン、めがね。それを引き立たす長い白髪。ほかのクラスなら間違いなく人気が出ただろうがここでは難しいことこの上ないだろう。後ろの長髪をひもで結んだ女性はゆっくりと立ち上がる。

「ユー・シャオロンだ。こっちに来て間もない。仲良くしてくれるとうれしい。」

その美しい顔とスタイルからクールビューティーという言葉は彼女にお似合いである。担任よりも大人っぽい生徒がいると感じたものもいた。座るさまにも気品が感じられた・

「真柴 亮吉。元関東連合総番。よろしく。」

黒髪のリーゼント。目つきは非常に悪い。自身に満ち溢れたそれはチンピラとは違った気風を持っていた。制服に至ってはすでに改造を施しているという徹底ぶり。ガタイはかなり良かった。立ち上がることなく紹介をしていた。

「百舌 宮古です。よろしくお願いします。」

先ほどとは打って変わりまじめな優等生代表といわんばかりの女性が席をたちそう自己紹介をした。清楚の顔立ちに黒のロングヘアー。少しばかりここだけ空間が違っていたのではないだろうか。

「最後はおれか」

百舌が席に着くのとほぼ同時位に後ろの男が席を立つ。

「性は渡利。字は哲郎。よろしく頼む」

最後に立ったこの男のたたずまいは気品を感じさせた。人に対する接し方に余念がないといった感じであった。見た目は非常に若くゆったりした表情の青年であったがたたずまいは紳士のものであった。渡利が席に着くと影宮は手を叩く。

「はい。ありがとう。スムーズにいくと非常に助かる」

明らかにめんどくさそうな表情で影宮は言っていた。

「さて、わかってもらったと思うがここには意外と有名人が多い。これは単なる偶然だ。ほかのクラスにだって有名人はたくさんいるからなあまり気にすることではない。」

「では、私たちの共通点とは?」

訪ねたのはユーだった。影宮は黒板にちょっとした板書を始めながらしゃべる。

「お前たちはその能力の性能からここに来た。非常に高等なものであるが一般人と共存していくには非常にグレーな能力を全員持っている。心当たりがあるものもいるだろう?このクラスは完全に能力を制御するための場所だ。学園全体の意義もそうだがここにいる全員は過去に大きくも小さくも何らかの事件を起こしている。まあ、私もだが」

全員が少しばかり考え込む表情を見せていた。黒髪二人は表情は見えていない。

「その暴走を二度と起こさないためのクラスだ。在学期間は三年間だぞ。長いようで短い。学園生活とはそういうものだ。有意義に使えよ。とりあえず今日は解散だ。あしたはこの教室に八時に集合。服装は動きやすいものだぞ。」

「先生。すいません」

手を挙げたのは睦月であった。

「はい。なんでしょう、睦月さん」

「明日は土曜日なんですが学校は休みではないんですか?」

影宮は感心しているようだった。

「いい質問です。このクラスは特別クラスなので不定期に特別授業があります。言っておきますが欠席は許しません。というかできるなら私が休みたい」

「先生、そりゃいくらなんでも」

「文句があるなら二度としゃべれなくするぞ」

声を出した工藤はその言葉に震えながら押し黙った。体が震えているのが周りから見えた。明らかに教師の表情が変わったのだ。それはビビる。

「じゃあ、遅れるなよ」

そういって誰よりも早く先生は教室をでた。ほかの生徒も続々と教室を出ていった。

教室に残っていたのは雨宮、花最、園田、工藤、黒羽、阪上、木咲の七名であった。雨宮と花最は教室の外を見ていた。ちょうど下校する生徒たちが見える。木咲は本を読みふけっている。黒羽、阪上、園田は三人そろって工藤のほうに視線を向けていた。先ほどから震えて動いていないのだから不安にもなる。

「おい。」

あまりにも心配になった黒羽が肩に手をおき声をかける。工藤は背筋を伸ばすとゆっくりと振り向いた。

「大丈夫か?」

声をかけると工藤は涙ぐみながら黒羽の両手を握りしめる。

「助かった!あのまま放置されていたら間違いなく夕暮れ時になっていた」

「おおげさ、、とはいえないな。本当に生きているか少し不安になったし」

「そうなんだよ。なんかあの先生の言葉には表現しにくい重みがあるっていうか。もしかしてあれが先生の能力だったり」

「しないだろ。さすがに」

「わからないぜ。えっと、黒羽だよな?」

「ああ。君は工藤 研吾だったよな?」

「おう。研吾でいいぜ。過去に同じ名前がいたのならあだ名でもいい」

「いいや。なら研吾と呼ばしてもらうよ」

「ならよろしくな、黒矢。よし、ならほかのみんなのとこにも」

そういって健吾があたりを見回すと半分以上の席が空白で張ることに気付いた。

「ほかの人たちは」

「帰ったぞ」

「え、なにそれ。どういうこと」

「授業が終わってすでに一時間以上たっているからな。帰る人のほうが多いだろう」

「なんだよ。みんなつれないな。まあ、ぶっちゃけ全員かなりあくが強い連中だけど」

(間違いない)

黒羽思ったことを口に出すのはやめていた。何となくめんどくさい気がしたからであり自分もあまり人のことを言えた立場ではない。。

「ここにいると染まっちゃうかもよ」

そういって黒羽と工藤に近づいてきたのは園田であった。笑みをうかべて黒羽の隣の机に腰を掛ける。

「みんなテレビで有名じゃないだけで変わった肩書きを持っているからね。暗殺家に御令嬢や格闘家、天才ハッカーに英雄の息子、ほかにもいろいろな人がこのクラスにいるって聞くよ」

「詳しいな、園田さん」

「睦月でいいよ。二人とも。」

「そういうことならおれの経歴はわかるか?」

「工藤君は・・・」

少し園田は考え込んだが

「ごめん。わかんない」

とばっさり切り捨てた。工藤は少しうなだれていた。

「その情報はどこから入ってきたんだ」

黒羽は園田に嫌悪を向けた表情をした。彼女もそれを察した。

「ごめん。気に障ったならあやまるよ。ネットで拾ったんだ」

「意外だな。見た目からそんなことはしないと思っていたんだが」

「そうでもないよ。今の時代は不良でもネットをするからね。黒矢君だって普通に使うでしょう?」

「まあな。じゃあひとつ聞いていいか?」

「何?」

「睦月はどうしてこのクラスなんだ?見た限りではかなり普通の感じだが」

少し考え込んだ表情をしてから睦月はうなずき両足を組んだ。

「数年前にちょっとしたことをやらかしちゃってね。それが原因でこのクラスになったんだと思う。私たちみたいな人間はまだ社会に許容してもらっているわけじゃないし。それでもあなたのお父さんのような人がいたからここまでこれたんだと思う」

「誇りだよ。親父は」

「え、なに?黒矢のおやじさんってそんなにすごいの?」

睦月が工藤の発言に無表情を見せた後にあきれた表情を見せた。逆に黒矢大きな笑い声をあげた。少し黒矢の心のもやが晴れた。周りの四人もそれに耳を傾け顔を向ける。

「なんだよ。なんで笑うんだよ」

「いや、今度私自身がおしえるよ」

「絶対だからな」

「ああ」

その言葉と同時に教室にこだまする音が聞こえた。そして腹の音であると教室にいた人間は気づく。

「黒矢か?それとも睦月か?」

工藤は聞くが二人は首を横に振る。工藤は阪上と木咲に、黒羽は花最に視線を向けるが双方、横に首を振る。

(となると)

全員が同じ思考の元、一名に視線を向けた。雨宮はすこしほほを赤らめて目線をそらす。そそくさと鞄を整え教室を出て行った。全員がそれを見ていた。

「ねえ、黒羽くん」

声をかけたのは花最だった。

「何か食べ物もってない?私おなかすいちゃって」

「なら、学食に行くか?ここの飯は絶品だぞ」

「そんなにうまいのか」

「知ってるよ。ここはプロよりもうまい料理人がいるって」

「それもネットか?」

「もちろん」

花最はせっせと鞄を持った。

「行こう!どこか教えて」

無邪気に言うそのさまは年端もいかぬ少女そのものであった。三人は少しばかり心を暖かくした。

「よし案内してくれ黒矢」

「お願いね、黒羽君」

「お前ら。パンフの校内マップは」

「「「みていない」」」

三人同時に口をそろえた。

「今、そろったな」

「気が合うね。工藤君、花最さん」

「そうだね」

「多分、このクラスの八割がた見てないな」

三人が笑顔を見せてる中、黒羽は少しばかり呆然としていた。

(常識が何かわからなくなる気がしてきた)

と少しばかり頭を抱えた。

「よし、いくぞ。いこう」

迷いを振り切るかのように黒羽は席を立って真っ先に教室を出ようとしたが扉の前にいってふと考えた

「阪上、木咲。君たちも来るか?うまいぞ」

振り返り二人に呼びかける。木咲は動かず本を読んでいた。阪上は少しばかり考えたのち

「いや、おれたち二人はまたの機会にするよ」

という断りを入れた。

「そうか。わかった。またな」

と黒矢は返答する。そして教室を出て行った。後に三人も続く。

「じゃあ、二人とも。」

「またね。阪上君、木咲さん」

「じゃあね。また明日」

教室は二人を残してほかには誰もいなくなった。空いていた窓から春の風が吹いていた。



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