記憶が無い男
俺、黒峰一夜は馬車の中で絶賛爆睡中だった。今起きたところだが生憎とまだ寝足りない。
(こーゆーときは二度寝に限るってじっちゃんが言ってたな)
適当な事を思いながら夢の中に逃げようとした時、横から声が聞こえてきた。
「一夜、もうすぐ例の学校に着きそうですから起きてください」
そう言って俺を起こしてくるのは、髪が腰まで届きそうな綺麗な銀髪で、ルビーのように紅く輝く目をしており、顔立ちも少し幼いが整っているこの美少女はサシャーナ・コーデ、一年前に俺と出会い最初は敵同士であったが、まぁ色々とあり今では大切なパートナーである。
「もう...ヨダレ垂らしながら寝てるし、髪も寝癖でボサボサじゃないですか...」
ため息をつきながらサシャーナはハンカチを取り出し俺の口を拭いた後、優しい手つきで寝癖を直してくれた。
(相変わらず面倒見がいいな...)
お姉さんみたいな性格だが俺と同い年で今年で16歳になる。俺は寝ぼけながらサシャーナの頭に手を置き、
「ありがとうサシャ、うん、将来はいいお嫁さんになるね」
そう言った途端、サシャーナの顔が真っ赤になり動揺しながら怒っていた。
「なななな何てこというんですかいきなり!?急に変な事言わないでください!!」
「俺は思ったこと言っただけなんだが...」
「もう知りません!!」
そう言ってサシャーナはそっぽを向き機嫌を悪くしてしまった。
(ふむ、女心は難しいな...)
次からは気をつけようとそっと心に誓う一夜だった。
この世界は誰しもが必ず能力を持って生まれてくる、俺たちは《異能力》(アビリティ)と呼んでいる。異能力は個人によって様々であり能力を知り、使いこなそうとするのもしないのも本人次第である。異能力は色々な場で活躍しており、仕事で能力を使ったり戦闘向けの異能者を集め国の治安を守る組織もある中で異能者を育てる学校もあり、俺たちが現在向かっている我浪学園もその一つである。学校も世界各地に設立されておりここ日本にも地域ごとに存在している。本来ならば小さいころから学校に入り、そのまま18歳まで通うのだが俺は訳があり今の今まで学校に行かず世界を旅していた。
「学校か~一回でもいいから行ってみたかったんだよね!!」
俺は興奮気味に言いながら内心楽しみでしょうがなかった。
「そうですね、一夜の師匠さんには感謝しないといけませんね」
「そうだな~あの人今どこにいるんだろうな...」
旅をしていた俺がこの学園に入学する切っ掛けになったのは師匠が我浪学園の学園長と知り合いらしく俺のことについて話をしたところ、興味があるので是非うちの学園に来してほしいとの事らしい。俺も学校には興味があったのでサシャーナと一緒に入学する事にした。まぁ入学した理由はそれだけではないのだが...
「それと師匠さんが一夜の記憶の事についてあの学園にいけば手がかりが掴めるかもしれないって言っていたのですよね?」
そうもう一つの理由が記憶についてである。俺は10歳までの記憶が無く、思い出すために今まで旅をしてきた。半年前くらいに師匠から手紙が届きそこには我浪学園の事と、俺の記憶の手がかりについて書いてあった。
『元気にしてるか~一夜、実はお前の記憶についての手がかりになるかもしれない学園を見つけてな、しかもそこの学園長が私の知り合いでお前の話をしたら興味を持ったらしくて是非うちに来てくれって言うから話はもうつけといたからいつでも来ていいそうだ。ま、初めての学校だから思う存分楽しんでこいや、それにあそこは良い“力試し”が出来るぞ。せいぜいがんばってこい』
だそうだ。記憶についても気になるが良い力試しってのはなんの事であろうか?
「とりあえず学園を楽しみながら記憶について探ってみるか」
「はい、早く一夜の記憶を取り戻しましょう!!」
「あぁそうだな...」
実を言うと俺は別に記憶を取り戻そうがしまいがどちらでもいいのだ、自分の小さい頃の記憶などさほど興味が無いし、十分に今を楽しんでいるからだ。しかし記憶が無いのが原因であるとはまだはっきりとしてはいないがそのせいで今の俺は“ある事”が出来ないでいる。それを出来るようになるため必死こいて記憶を思い出そうとしているのだ。
そうこういっているうちに馬車は停止し、大きな黒い門がある手前で俺たちを降ろした。
「ここが我浪学園か...」
この大きな門にもびっくりしたがさらに驚いた事に校舎に入る前の広場がものすごく広くなんといっても校舎自体がバカみたいにデカくまるでどこかの貴族のおしろみたいだった。
「おいおい...これ本当に学校かよ、滅茶苦茶デカイな」
流石のスケールにサシャーナも驚きを隠せない様子である
「本当ですね、学園かどうか怪しむレベルです...」
しかし門の横に書いてある文字は紛れも無く我浪学園と書いてある。
「まぁ、通っていればそのうち慣れるだろ...さて、まずは学園長の所か?」
俺はサシャーナに確認するために問いかけた。
「そうですね、師匠さんが話をつけているみたいなので挨拶しに行ってみましょう。」
そう言って俺たちは門をくぐり学園へと足を運んだ。
皆さんこんばんは、Griponです。
いや~前置きが長くなり申し訳ない限りです...今回小説を書くのが初めてなので多めに見てくれたら幸いです(誤字脱字を含む...)それと見てくださった人でアドバイスや気になることがある人は是非コメントに書いてください!!
次話はなるべく早く出すので楽しみにしていてください!!!