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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

悪魔と躍れ

作者: 向日葵

夢を見て、勢いだけで書いてみました。

設定が甘い部分もあるかもしれませんので、軽く読んで下さい。


西暦2100年ーー


人類は繁栄を終え、終末へと歩み始めた。

人口の増加が止まり、凶悪犯罪が珍しくもなくなり、世界中で不可思議な現象が起こる。


最初にソレが確認されたのが2105年。

醜悪でずる賢く、生命力だけは強いソレは悪魔(デーモン)だった。

人間の負の感情を喰らい、魂を持ち帰る悪魔は人類の的となった。


その後すぐに、世界中に出現するようになった悪魔には、人間の兵器が通用しなかった。

そこで、開発されたのが人工(アーティフィシャル)悪魔(デーモン)ユニット、通称ADU(アドゥ)だ。


一般には捕まえた悪魔を研究して開発されたとされているが、詳しいことは公開されていない。

そんな怪しい物に頼らなければならない程、人類は窮地(きゅうち)に立たされていた。

発表当初は国連が特別に設立したADUの教育機関に所属する者しか使用が許可されていなかった。

それが今では、ADUの教育機関は世界中にあり、12歳から35歳までの適正があるものなら誰でもADUが使えるようになった。性別、国籍、人種など関係なくだ。

少し前までは、20歳から30歳までだったのが、徐々に範囲が広がっていったのだが、それだけ戦況が激化しているのか。それとも、ADUの使用者(ユーザー)の消耗が激しいのか。それすらも、一般には秘されている。


故に、様々な憶測が飛び交う。

適正ではなく、ADU自体が使用者を選ぶのだと。

希望者のパーソナルデータを取り、宿主を選ぶ。

ADUはAIのような物だというのが一般認識になった。


そんな2112年。

一人のADU(アドゥ)使用者(ユーザー)がいた。

ADUタイプは汎用有翼型。

汎用地上型に次いで適正者が多いタイプであった。

一般人からしたら非凡、ADU使用者からしたら平凡。そんな少年の名は(あずま)とばり。

とばりは12歳になるとADUの適正検査を受け、適正有りと判断されADUの教育機関に入学し、現在4年生の16歳である。

入学して3年間は悪魔(デーモン)の生態やADUの使い方、戦い方を学び、2年間は実戦に配属される。


彼は今、誰に咎められることもなく、ADUを使えることが嬉しくてしょうがない時期だった。

悪魔との戦いは怖いが、先輩たちの戦いが間近で見れ、自分が物語の登場人物になったみたいだと浮かれてもいた。



「とばり、今日非番だろ?遊びに行こうぜ!」


用事があって学校に来ていたひばりは、友人の一人に声をかけられた。

赤く染色した髪にピアス、着崩した制服と不良な雰囲気の少年は高木優一。

見た目とは違い、面倒見が良く、教師陣からの信頼も厚い。

お互い、4年生で唯一の同い年とあって仲がいい。


「いいぜ。どこに行くんだ?」


学校は東京都内だが、悪魔(デーモン)との戦いで大きな街は立ち入り禁止区域となっている。


「大塚に新しいゲーセン出来たってだから、行ってみねぇ?」


池袋が立ち入り禁止区域になると、大塚や目白に人々は動いた。

他の新宿や渋谷、品川なども同様で、集まる街が変わっただけで、人々の活動は変わらなかった。


「いいね!」


こうして、少年たちは放課後を有意義に過ごすべく、街へと向かった。



「お。あんな所にポッドがあるぜ」


優一が示した先は高層ビルの屋上。

半円(ドーム)型の繭みたいな物があった。


「ほんとだ。そういう情報は早めに欲しいよなぁ」


ポッドとは、ADU使用者の出撃拠点となる施設だ。

有翼型にはビルの屋上、地上型には1階もしくは地下に作ってある。


大塚に着き、新しく出来たゲーセンへと入ると、それぞれ機械が奏でる騒音と、店員のマイクパフォーマンスの音で、一気にテンションが上がった二人。


「新しいシューティング発見!」


「どっちのスコアがいいか、競わねぇか?」


「オレ様の射撃にお前がついてこれるかな?」


自信ありげなとばりに、優一の方も自信満々に受けてたった。


隣同士のボックスに入り、ICカードをかざす。

ICカードも発達し、電子マネーが使えるだけでなく、ゲームのスコアや購入履歴、薬の処方箋なんかのデータも記録出来るようになっている。


視界を全て覆うタイプのゴーグルを着けると、ヴァーチャル映像が広がる。

ゲーム業界において、今やなくてはならない技術、ヴァーチャル・リアリティーだ。

まるで、その場にいるような臨場感が人気で、ゲーム業界だけでなく、軍事、医療などにも取り入られている。



「ほら、見ろ。オレの方が上手いだろ!」


「ほとんど僅差じゃねーか!」


二人がスコアを見せながらじゃれあっていた時、街中にサイレンが響き渡った。

悪魔(デーモン)が出現したのだ。

人々が慌てふためきながら、避難所に指定してある建物へ駆け込んで行く。


「おっと、出やがった」


「近場のポッドに向かおう」


非番とはいえ、外出先などで悪魔(デーモン)に遭遇した場合、まずポッドに行き、戦闘に加わるのか、避難所の護衛に回るのかの指示を仰がなければならない。


「でも、ここら辺の担当って稲葉先輩だぜ?俺たちの出番はないだろうな」


「マジか!オレ出てぇ!!稲葉先輩の戦闘見てぇ!」


憧れの先輩が出撃するとわかると、興奮して走り出したとばり。

そんなとばりに呆れながらも、優一もとばりの後を追う。


二人がポッドに到着すると、様々な大きさのスクリーンが浮かび、十人ほどのオペレーターが刻々と変わって行く情報の処理に追われていた。


「失礼します。ADU(アドゥ)U(ユーザー)S(スクール)所属、コードナンバー120117の東とばりです」


「同じくADUUS所属、コードナンバー120089の高木優一です」


指揮官に到着を告げると、ポッドのコンピューターがコードナンバーを認識して、二人のデータをスクリーンに映す。


「驚いたな。ここの稼働はまだ通達されていないはずだが?」


スーツ姿の男性が二人に話しかけてきた。

スーツには天使の羽根と地球がモチーフピンバッジが付いており、国連の専門機関である世界ADU運用機関(WADUPO)の人間であることを示していた。


「ここの責任者の方ですか?」


「第7地区担当責任者の篠塚だ」


優一の質問に、スーツ姿の男、篠塚が答えた。

1つのポッドに一人の指揮官がいて、3つから5つのポッドに地区担当責任者がいる。さらに、東京、関東、日本と範囲が広がっていくごとに各責任者が世界ADU運用機関から派遣されている。


「オレ、出撃したいんで、許可もらえますか?」


「許可しよう。上級(ハイクラス)使用者(ユーザー)の稲葉君が有翼型五十名を支配下に出撃している。君はどうする?」


上級(ハイクラス)使用者(ユーザー)と呼ばれる者たちは、能力の高いADUの使用者のことだ。

彼らのADUには、汎用型を(あやつ)る能力があり、その能力を用いることを支配下と言っている。

支配下にある汎用型ADU使用者は、生命の危機を感じない限り、自分の意志で行動することが出来ない。

故に、個々の戦闘技術がいらないので、支配下に置かれたがる者も多い。そういったADU使用者は人形(マリオネット)と呼ばれている。


「単独で行きます。人形になるの苦手なんで」


「そうか。出現した悪魔(デーモン)子爵(ヴァイカウント)(クラス)だ。気をつけなさい」


出現する悪魔を強さによって階級わけしてある。

遥か昔の魔術書(グリモワール)を参考に、皇帝(エンペラー)君主(モナーク)大公爵(グランドデューク)公爵(デューク)侯爵(マークィス)伯爵(カウント)子爵(ヴァイカウント)男爵(バロン)士爵(ナイト)の9つ。

出現する悪魔の殆どが士爵(ナイト)(クラス)だが、最近は男爵(バロン)(クラス)子爵(ヴァイカウント)(クラス)も増え始めていた。


「またか。まぁ、稲葉先輩の邪魔にならないようしますよ」


「高木君はどうする?」


「あー、今日、調子が悪いんですよね。やめときます」


「シンクロ率が上がらないのか?」


「規定値には上がるんですけど、ADU自体がやりたがらないみたいな?」


ADU(アドゥ)使用者(ユーザー)に対して、無理をさせないよう、ADUとの同調を数値化し、一定に達しなければ出撃してはならない決まりがある。

そして、ADU使用者はADU自体の意思みたいなものを感じる時がある。

そう言ったこともあり、ADUがAIだと言われたり、ADUが使用者を選ぶなどと噂されたりするのだが、ADUの意思は使用者にしかわからず、言葉にも言い表せない感覚なのだ。


優一の奇妙な表現にも、篠塚は納得を示した。


「俺はとばりのサポートに付きますよ」


「ならば、高木君はこちらへ。東君は上のゲートでBIS(ビス)の登録を済ませてから出撃してくれ」


「じゃあ、ちょっくら行ってきます!」


とばりは駆け足でオペレーター室を出て行った。

ポッドの上層部は外側に開くようになっており、そこから使用者(ユーザー)が出撃する。

ゲートに入るには、バイオロジカル・インフォメーション・システム、通称BISを登録しなければならない。

これは、ADUと共に体内に埋め込まれる物で、使用者のリアルタイムな生体情報の把握と通信が行えるようになっている。


とばりが入り口に立つと、機械が首の後ろ側にあるBISの情報を読み取る。


『コードナンバー120117 アズマトバリ 第7地区 ポッド8ニ登録シマスカ』


「YESだ」


ポッドにBISを登録するかしないかは任意になるが、ポッドからの出撃は登録した使用者でなければならない。

これも、使用者を守るための規則ではあるが、使用者を縛ることにもなる。


ポッドにBISを登録すると、使用者の脈拍数や呼吸数、血圧などのバイタルに、ADUのシンクロ率、責任者の命令があれば視界を繋いで動画として見ることも出来る。つまり、プライバシーがなくなるのだ。

それを嫌って、1つのポッドにしか登録しない者も多い。

そんな使用者が登録したポッドから離れた場所で戦う場合、悪魔(デーモン)が出現した場所のポッドから使用者が登録しているポッドへ協力申請が出される。ポッド同士が連携して使用者のサポートに当たることとなる。


とばりのBISが登録され、ゲートが開く。

ゲートから見える空は夕闇に染まりつつあった。


「行くぜ、相棒」


とばりがそう呟くと、彼の体が変わり始めた。

目は金色に輝き、瞳孔は猫のように細長く、耳は鋭く尖り、腕と(すね)の部分には黒い鋼のようなものが(まと)い、背中には大きな飛膜の翼。

その出で立ちは正しく悪魔(あくま)

ヒトのDNAを嘲笑(あざわら)うかのように、体の作りを変え、ヒトが持ち得ない力を作り出す、それがADUであった。


とばりは翼をはためかせ、空へと躍りでる。


「ひゃっほー!!」


ビルに沿って滑降(かっこう)するのが、とばりは大好きであった。

かなりのスピードで落ちているのだが、ADUが発動していると空気抵抗を感じないのだ。

ただ、ビルのすれすれを落ちる時のスリリングが、これから戦うためのテンションを上げるのに丁度いい。


『とばり、シンクロ率あまり伸びてないんだから無茶すんなよ』


優一が諌めるのも気にしない。

自分のADUのことは自分がよく知っている。


「これから上がるから心配すんなって」


とばりのADUは実戦で力を発揮するタイプだった。

そのせいで、学校での訓練ではいつもシンクロ率はギリギリしか出ず、成績もあまりよろしくないのだが。


ダイブアンドズームの要領で、地面にぶつかる手前で急上昇してから、悪魔(デーモン)の気配がする方向に転換する。


池袋に入ると、異様なざわめきを感じ取れた。

廃墟と化した街に翼が羽ばたく音が無数に重なり、まるで一昔前(ひとむかしまえ)のホラー映画のようだ。


「いたいた」


音のする方へ向かうと、とばりと同じような格好のADU(アドゥ)使用者(ユーザー)が群となり、悪魔(デーモン)を追いかけていた。

翼と翼が接触しないギリギリの間隔で飛び、執拗に追いかけているその光景は正しく鳥の群だった。

ADU使用者を振り切ろうと、はちゃめちゃな飛び方をする悪魔を飲み込まんとするそれは一つの生命体のようでもあった。


「稲葉先輩の支配力、マジすげぇな!」


稲葉という上級(ハイクラス)使用者(ユーザー)が精密にコントロールしているからこそ、人形たちが鳥の群になれる。


『感心してないで、まず稲葉先輩と合流したら?』


「そうだった」


優一の声で、人形(マリオネット)たちに魅入っていたとばりが我に返る。


その時、追いかけられていた悪魔(デーモン)が急に方向を大きく変えた。

窓ガラスが割れ、フロアが吹きさらしになっている高層ビルに逃げ込むようだ。


「あー、マズい。あそこじゃハネには不利だ」


とばりはボヤきながらも、悪魔を追いかけることにした。

挟み撃ちに出来れば、高層ビルではなく、地上近くに逃げるのではと思ったからだ。


「優一、まだアシこねぇの?」


ハネとは汎用有翼型の通称で、汎用地上型のことはアシと呼ぶ。


『もうちょっとで現着するよ』


「じゃあ、時間稼ぎしてくるわ」


悪魔(デーモン)を地上近くに追いやっても、アシがいれば対処が出来る。

空と地上からの挟み撃ちだ。

それが建物内に逃げられては、戦力が分散し、ましてやハネの機動力が活かされないのでアシにも負担が大きい。


「おっと、ここから先はご遠慮願おうか」


辛うじて先回り出来たとばりは、悪魔の前に立ちふさがる。

悪魔も一瞬顔つきを変えたものの、とばりが一人だとわかるととばりを見下すように笑った。


とばりは身構え、右腕に力を込める。

自分のことを格下だと判断した悪魔なら、強行突破してくるだろう。

ならば、刺し違える形で、奴の翼をへし折ってやる。

悪魔を睨みつけながら、とばりは次の動きを待った。

しかし、これが間違いであった。


悪魔は攻撃ではなく、とばりを拘束したのだ。

目にも留まらぬ速さと言うが、突如目の前に現れたと感じるほどのスピード。

真正面からとばりの両肩を掴み、悪魔は恐怖を煽るかのようにゆっくりと口を開ける。


(マズい…)


悪魔(デーモン)の口の中に圧倒的な力が集まっているのがわかる。

とばりのADUが煩いくらいに警告しているし、本能も逃げろと叫んでいた。

しかし、とばりは力に飲み込まれたのか動くことが出来ない。

瞬きも忘れて、悪魔の金色の瞳を見つめていた。


次の瞬間、辺りを雷が落ちた時のような光と轟音が襲った。


悪魔は己の残虐さを見せつけるごとく醜い声で笑った。

だが、それは続かなかった。


顔を背けることで、悪魔の口から出た光線に似た攻撃を避けたのだ。

ただ、顔面直撃を免れただけであって、光線自体はとばりの右肩をかすめていた。

かすめただけでも、肩の一部を持っていかれた。


「あっぶねぇな」


とばりが生きていると気づいた悪魔(デーモン)は、恐怖を感じた。

これは先程のモノじゃない。

いや、どうしてここにいるのか。

悪魔は混乱する。そして、自分がしてしまったことに気づき、死を、いや、消滅を覚悟した。


「お前、消えるか?」


ソレはとばりであって、とばりではなかった。


金色だった瞳は赤くなり、逆に髪が金色になった。飛膜の翼が闇よりなお黒い羽の翼となった。

そして、(えぐ)れた右肩はあっという間に復元(・・)した。


ソレは悪魔(デーモン)の頭を鷲掴みにすると、高層ビルに叩きつけた。


「まぁ、簡単には消さねぇけど。その魂を恐怖に染めきって食ってやるからさ」


それからは、一方的な暴力があるだけであった。

悪魔(デーモン)の顎は砕かれ、翼は両方とも毟り取られ、右腕は再生不可能なまでに痛めつけられていた。


「さて、いい感じに染まってきたじゃねーか」


とばりであったものが、悪魔に(とど)めを刺そうとした時。

間に入った者がいた。


「これ以上は止めてもらおうか、未確認ADU使用者君。この個体は世界ADU運用機関が管理することとなる。それと、今すぐ君の身元が判明しなければ、君も捕まえることになるが?」


「くっくっくっ。おもしれぇ。とばりが気に入っている奴がお前だったとはね。アスタロト、早く目を覚ますんだな」


「…とばり君?アスタロト?一体何を言っている!」


割り込んで来た人物、稲葉(いなば)(まこと)。今回の出撃の上級(ハイクラス)使用者(ユーザー)だ。

彼はとばりであったものを敵と認識したのか、攻撃態勢に入る。

彼の周りには人形(マリオネット)たちが囲むように待機している。


「そうカリカリすんなって。詳しい話はとばりから聞け。そいつの魂が食えねぇんだったら、いつまでもいる意味ねぇしな。またな、アスタロト」


とばりだったものが目を閉じると、とばりに戻った。

とばりには意識がなく、崩れ落ちる彼を稲葉は慌てて支えた。


「一体、どうなっているんだ…」




暗闇の中、とばりは目を開いた。

何にもない、ただ暗闇が広がるその中で、自分だけが認識出来る不思議な空間。


「…ここは?オレ、死んだのか?」


「死んじゃいねーよ」


とばりの呟きに応える者がいた。


「お前は?」


「オレはお前だ。相棒」


「…相棒?」


その者は光を発しているような金色の髪に血のように赤い目。暗闇にあって尚黒い羽の翼を持つ青年であった。


「まさか、オレのADU?」


「あぁ。お前らがADUと呼んでいるものだ。いいか、とばり。これからオレの知りうること全てをお前に教える。そして、オレと共に戦って欲しい」


「戦うって悪魔(デーモン)とか?」


「いや、神とだ」



とばりに流し込まれたのは、膨大な歴史の波にも似たもの。

とばりのADU、いや、その昔ルシフェルと呼ばれていた者。

彼がとばりに与えたものは、彼らと神との因縁めいた宿命であった。


それは世界の終末、黙示録に由来する。

ルシフェルは元は天使だった。しかし、神のやり方についていけず、堕天する。

天界と対なす魔界を創ると、人間の負の感情を糧にする悪魔(デーモン)が生まれた。

ルシフェルは志を同じくする仲間と共に、魔界を治めた。

それを良しとしなかったのが神だ。神が創り出した人間の本質は善。神を信じない人間たちが悪に堕ちて行くのだ。そして、一番の楽しみを奪われたのだ。怒り狂った神は全てを荒らした。天界も人界も魔界も。

そこでルシフェルは神とある約束をした。

人間が神を裏切った時に全てを滅ぼせばいい。我々は手を出さない。その代わり、滅ぼした人間の魂を我々が貰い受けると。

その他、神の我儘により、色々と制約も付いたりしたが、両者とも納得した上での誓いだった。

神は、自分が長く楽しめるよう、それらを人間にもお告げとして伝えた。

長い間、両者は関わることなく、人間を見守り続けた。

だがしかし、ある日突然、悪魔たちが人界へと糧を求めて出て行ったのだ。

明らかな違反だ。

魔界の者は終末の合図(ラッパ)がなるまでは人界に出てはならない。

終末が来たとしても、悪魔はただ必要悪(ヒール)としての存在でしかない。

ルシフェルは気づくことが出来なかった。神の手が魔界にまで及んでいたことに。


神は言った。


ーー飽きたーー


その心無い一言で、魔界生まれ魔界育ちの弱い悪魔たちは神の駒として扱われた。

人間で遊ぶための玩具(おもちゃ)にされたのだ。


ルシフェルは王として魔界を治めていたにも関わらず、気づけなかった己を悔やんだ。

そして、仲間に誓った。

そんなに人間が好きならば、その人間に神を殺させよう。


ルシフェルたちは人間を(そそのか)し、悪魔の魂が人間に入り、力をふるえるような物を作らせた。

それが人工悪魔ユニット(ADU)。


魔界の上級悪魔たちは、肉体を離れ、魂をADUに移し、相性のいい人間が現れるのを待つ。

上級悪魔に従う下級悪魔たちも習い、魔界の半数以上がADUへと魂を移した。

それにより、人間を挟んだ、神と悪魔の戦いが始まったのだ。


「どうして神様がそんなことを…」


「娯楽だろうな。善である人間が些細なことで驕り、悪に染まる。アダムとイブにしても被害者だ。エデンの園に何故悪が立ち入れたのか。神が人間を弄んでいるからだ」


「そもそも、神様は殺せるのか?」


「やれないことはない。確実とは言えないがな」


「神様を殺さなければどうなる?」


「ノアの箱船の再現が起こるだろうな。神の奴が気に入った人間だけを残し、全てを滅ぼした後、また創り直す」


「聖書のまんまってことか…。わかった。相棒、これからもよろしくな」


とばりはすぐに答えを出した。

世界のため、人間のためではなく、自分のために戦うことを決めた。

この世界自体が神にとっては玩具なんだろう。

だが、人間は自分たちが玩具のままでいるほど善ではないのだ。

それこそ、誰かさんが弄んでくれたお陰で、悪知恵だけは働くからだ。


「神様は人間に何を語ってくれるかな」


とばりは楽しそうに笑った。

最早、人間は神の手を離れていると感じたルシフェル。

もしかしたら、人間は神をも超える存在になるかもしれない。





私が夢を見たのは、主人公がビルから飛び降りるシーンから、ルシフェルが表に出てきて、悪魔を吹き飛ばす辺りまでです。


色々と盛りに盛ってみたら、何か壮大な話になってしまいました(笑)

別に宗教的な要素とかなかったはずなのに、どうしてこうなっちゃったのか、未だに謎です。

ジャンルも悩みました。SFなのかファンタジーなのか。

一応、SFにしましたが、どっちがいいですかね?

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