紗良・零編 第1章
「お嬢様。」
貴方はいつもそう。どうして?私の名前を呼んでくれないの?言ってほしいの!私の名前を・・・。
「おい!起きろ!紗良!」
一人の少女の頭の上に教科書が叩かれる。
「うーん。。。何?星奈・・・。おかしな夢を見たな〜」
「また変なこと言って。授業終わっている。それでもお嬢様の資格はあるのか?」
少々怒り気味な少女の名は天宮 星奈。そして起こされた少女の名は小園 紗良。星奈の言う通りお嬢様で、二人は高校1年生である。
「別に家でやっているからいいじゃないー」
「それでこの成績はどういうことだよ…」
紗良の机の上にあった小テストを見て苦笑いする星奈。
それから数時間後_。
「ただいま帰りました」
紗良は家の扉を閉める。顔をあげると一人の青年がいた。
川端 零。この家に仕える執事である。
「お帰りなさいませ、お嬢様。カバンをお持ちします」
いつも通りの丁寧な口調で対応する。
「あー、お願い」
紗良はカバンを渡すと零と一緒に自室へ向かう。
「お嬢様、では夕食になったら…」
「お呼びいたします。」と言おうとした瞬間、紗良の
「ねえ、零」
という言葉でかき消された。
「何でしょう、お嬢様?」
震える口調で紗良は続けた。
「何故名前で呼んでくれないの?」