"超人"の異世界で仲間を探そう
"月本"崩壊の影響によって、完全に復興するまでの間。異世界同士の商業や物流を行える異世界を設立しなければいけない。
"無限牢"最大の商業世界であったが、同じような異世界は確かにある。"月本"だけでは捌ききれないからだ。
「これから忙しくなりますよ、過労死するほどに。コタツが恋しいなぁ」
ガイゲルガー・フェルが死亡したため、彼の敗北の責任は櫛永が喰らうことになった。異世界の商業に支障が出ぬよう、バランスをとり続ける。人間達には知られてはいけない事なのだ。
そして、ポセイドンは200万人ほどの管理人が失ったことを受けて、量産型の管理人を製造する事に決める。人材が多く失われたことも痛い出来事だ。
最後に、
「買い物に行ったら、異世界を崩壊してしまいましたー…………って、笑えないし!!」
「俺がほぼやっちまったし…………」
ガイゲルガー・フェルの科学で暴走してしまったライラとラッシは傷心していた。多くの死者が発生した原因は管理人同士の対決であったが、建物を全壊させたのはライラとラッシにあった。そりゃ凹むに決まっている。操られてましたからでは済まない。
「反省会はここらへんでしましょう。ラッシは責任をとって、櫛永さんのお手伝いですよ」
「俺にあーゆうのは……」
「外見に似合わず、ラッシは経営とかが上手いんですよ。アレクさん」
「へー、意外だな」
アレクはクロネアから意外なラッシの特技を知った。ラッシにとっては特技ではあるが、嫌いな事でもあるってところなのだ。
「ライラも凹むのはそのへんにしとけ。とりあえず、今後と未来の話だ」
「…………そうね」
「"月本"崩壊によって、資源を集めたりするのは後にした方が良い」
「となると、先にもっと協力者が欲しいとこね……。"科学"は春藍、アレク、ネセリアだけじゃなく、フォーワールド全体が協力してくれるなら大丈夫として、"魔術"と"超人"の人材がもっといて欲しいわね」
と、ライラは言いながら周りを見てみると……
「そういえばあたし達に協力してくれそうな"超人"って桂だけかしら?」
「私とラッシは"魔術"だし、朴さんもね」
「人間だとライラしかいないな…………」
圧倒的に人数不足。そして、恐るべき偏り…………。
「ま、"魔術"の人材も探したいけど……まずは"超人"の人間が仲間に欲しいわね」
「なら、いくつか異世界をリストアップしてあげるよ。1時間くらい待ってくれ」
クロネアはすぐに"超人"が中心となっている異世界のリストアップを始め、部屋を出て行った。アーライアの"SDQ"を食い止めるには多くの人間達の協力が必要だった。
4人とフォーワールドだけで世界を救えたら苦労はない。……人間にとっては知られて欲しくないものであるが、それが解決の可能性を狭めている原因だと思う。ラッシとクロネアは管理人側であるが、かなり協力してくれるようだ。
ライラはメモを取りながら今後の編成を考えていた。
「アレク。あなたの力ならフォーワールドの優秀な"科学"使いをリストアップできるわよね?やっぱり研究を続けるチームと調査などを行うチームの2チームに分かれようと思っているの」
前でも考えていたが、再度確認。
研究を行うのはアレクも春藍、ネセリアもそうであるが、3人にはライラと一緒に異世界に行って調査や素材の入手の役目となってほしいところがあった。現場が分かる上に保有する"科学"も向いている、何より異世界での旅には相当慣れただろう。
「"月本"がない状況だと、しばらくは現地まで調達する事になると思うし。あなた達のように何度も旅している奴の方が向いていると思うのよね」
「俺も春藍も、ネセリアも。まずOKを出す。周りたいという気持ちもある。っつーと、そうか」
「アンタ並に"科学"ができて、フォーワールドを指揮できる人間を研究チームに入れないと困るのよ」
「確かに俺が異世界に行っただけでこの騒ぎだからな…………。俺がここにいないと研究がはかどらないか」
管理人ですら替えにならない。アレクがずっと研究チームを纏めるというのがライラにとっては良いとは思っているが……
「そーいったところはまた今度でも良いだろう。まだ本格的に動ける段階になれば俺がしっかりと後継者を選んでおく」
「そう…………」
「ところで先ほどお前は言っていたが、調査など…………の"など"には何が入るんだ?」
アレクの質問にライラは答えにくそうではなく、ラッシを軽く見てから
「"SDQ"は異世界にも侵食していく。もし、侵食されそうになる異世界があたし達で確認できるならその世界の人々を助けたいの。世界は守れないけど……命までは消したくない。それができる"超人"と"魔術"のチームが欲しい」
「…………………なるほどな。それなら、多くの人材がいるが…………」
ライラの気持ちが分かったアレクであったが、ラッシはまったく違う。
「止めとけ、ロクな事にならねぇーよ」
「……やっぱり言うわよね」
「奪われた土地、場所、金、食料、名誉……それらを失った人間達が他の異世界でやっていける環境が作れると思うか?救った人間達を受け入れる異世界は何処にある?俺達が聞きたいくらいだ」
管理人としては当然の発言だった。それがとても命は軽いと突きつけている言葉だ…………。そこを当たり前のように反論するのは今しか見ていない人だけだろう。ライラにはラッシの言い分がハッキリとまともと理解できているのだ。
理不尽だとはいえ、全てを失った人間の救済にはまた誰かが負担をしなければならない。ほぼ為りきっている死者を助けるというのは生き残った人達にどれだけ迷惑か分かるだろうか?
ラッシの考えは人間を管理する上での意見であったが、ライラの反論はこうであった。
「"SDQ"の怖さを知った人の方が協力すると思わない?自分が辛い目にあったから、周囲の人々にはなって欲しくはない。そーゆう意志があるならきっと良いわ」
「…………意志だけなら誰だってな」
「分かってる。とにかく分かってる…………。その辺も少しできるようになってからよ」
研究者とさせても、どう考えてもフォーワールドにいる人材の方が優秀だ。そーいった調整はライラも言うようにできてから。一つの理想ができてから、二つ目の理想へ向かうことだ。ライラは落ち着いていなきゃいけない。
「春藍とネセリアも呼ぼう。次の行き先はみんなで決めよ」
「そうだな」
「先に言っておくが、俺とクロネアは忙しいからな。向こうの異世界で暴れんじゃねぇーよ。今回はガイゲルガー・フェルのおかげで罪状がなかったがな!」
ヨッシャ、邪魔そうな2人がいないとはラッキーだ。
「アレク!テメェ今、いねぇーことに喜んだだろう!!?」
「さぁな?」
ライラとアレクは手分けして春藍とネセリアを探しに行った。2人は今、仕事中であった。今日は軽作業を任されているだけではなく、アレクから直々に呼ばれたら仕事を置いていいという命令ももらっている。
それでも切りの良いところまで仕事をやってから、管理人の部屋へと向かった春藍とネセリア。ライラもアレクも待ちながら、クロネアが作ってきた"超人"の異世界の一覧表を見ていた。その数は54世界。全部ではないが、優秀な"超人"を輩出している世界ばかり並べていた。
"博打科学"、パチスロチュードク。
"生命五感調査機関"、センスオーン。
"命削り"、バドルロード。
"残酷な昆虫祭"、インセクトプロミネンス。
"ガキの一生"、ミニマムタイム。
"農・漁業人間"、ザ・エリフウォーク。
"毎年受験生"、トーキョーラッシュ。
"社蓄養生場"、ファックカンパニー。
"生命可能性城"、バイオハザード。
"氷遊戯"、アイスランド。
"虹走る時々嵐"、デェイ・アフター・イェスタディ。
"超長寿"、ローライフ。
"蹴球国"、ワルドカッパー。
"RUN&RUN"、ヒッシデモウダッシュデス。
"陸上王養成社"、キングヒューマン。
"芦湖"、レックコー。
"空の世界"、ホークバード。
"土方暮し"、ダグリオン。
"怪物妖精"、デッドモルモンスター。
"廃棄食品コーナー"、パクパクパク。
"充電自転車屋敷"、ペダリオルン。
"GIM&MASSL"、キンニクマーン。
"お寺村"、アンサント・テル。
"買い物散歩道"、ワイズマルト。
"闘技島"、タドマール。
"工場人間ショー"、グレイトジジィ。
"図書室の人々"、ヨミギライ。
"生誕実験"、××××。
"人間&魔物交遊会"、モンスターズペット。
"イケメンと美女作り"、タネウマ。
"画家帝国"、マッツーソウ。
"物語企画日常"、クドーフレンズ。
"交差点十字路"、ミギヒダリマエエ。
"極寒の雪世界"、ハナタレル。
"母の行動習慣"、マザーパターン。
"木々迷宮"、ジャングルジム。
"終わらない仕事量"、バッドヒューマンロス。
"画面遊戯研究"、ゲーマザクレイジー。
"重・制限街"、ストックヘイブン。
"医療大病棟"、キューケー。
"声は命"、イコールツー。
"運転教習"、オールパシフィック。
"居合伝承伝"、マサムーネ。
"戦隊集団会"、ショタキュアー。
"人体可能性同好会"、キメェラ。
"礼儀作法堂"、パーフェクトモラル。
"障害群"、エクシィード。
"罪滅ぼし"、ネクストステッパー。
"十八歳未満閲覧店"、オタクハアウト。
"▲▽△▼▲▽△▼"、ヘーコーシヘンケイ。
"復刻再現店"、ルネルサンズ。
"戦国の野望・統率"、ノブナガ。
"風紀委員会"、ケーサッ。
"熱血応援世界"、ダイチォー。
「結構出しすぎた?」
「………………………」
ライラはこの一覧表を見た時、小声で何かを言ったが。誰もそれは聴こえなかった。うん、聞かなかったんだ。そんなことは舞台裏で言ってくれ。
「ともかくどーゆう"超人"が必要か、考えてはあるんだろう?」
「当然。とにかく、必要なのは戦いに強い奴でしょ。あたし達並に強い奴」
「となると、ここからさらに搾れるね」
そんなこんなで行く世界を搾っていったところで、春藍とネセリアが仕事を終えてやってきた。
「お待たせしました」
「次に行く世界を決めているんですよね」
ちょっとワクワクした顔を見せている二人。4人の中に入って、搾られた異世界の表を見た。
「仲間を探すんですよね?」
「そうよ、ネセリア。良い人達を仲間にしたいわね」
「残っている異世界は………12つですか…………」
春藍はその一覧の中に一つの異世界に目が行ってしまった。ライラ達にはまだ言っていない。けど、気になったから声を出してしまった。
「"闘技島"、タドマール。……ここに行ってみたいです!」
ザラマは言っていた。ここにパイスーが向かっていると…………。もしかすると、まだ彼はここにいるかもしれない。