凡才の天才 VS 弱者である最強 (裏)
春藍はヘッドフォンを掛けているが、流れてくる曲は一切聞こえていなかった。目を向けてやれないが、二人の。いや、一人の人間と管理人の戦いと持論は壮絶な物だったからだ。
仲間ではない。敵でもない。
だけれど、言える事はそんなカンケーない人だってこれから歩む人生に影響を与えるんだなって分かる。生き物ってのはそーゆうものだった。
「テメェみてーなのはぶっ殺してーんだ!!!」
「ぐおおぉっ」
「自分の!!!存在意義!!精神の維持に!!!他者を陥れ!!自分を満足させる!!!」
「熱いぃぃっ、止めろおぉぉっ!!!」
「人を売り物とし!!人生を捨てさせ!!命を止めさせる道を歩ませる!!不幸を笑うことよりもオゾマシイ事だ!!命は……人生はな!!心臓でも、お前の欲求に生きる事でもない!!!」
ブズズズズウウゥゥッ
ザラマの熱は精神の高まりによってさらに熱くなった。そして、ガイゲルガー・フェルの苦しみは熱以外にもあった。とても辛いところを責められている。
「弱者だぜ、テメェは!!!マジモンの弱者!!!弱いことは責めやしねぇ!!だが、弱いままでいることに問題があんだよぉぉっ!!」
「!!!ッッ!!」
それがガイゲルガー・フェルにとっては安全なリミッターが、解除したきっかけなんだろう。彼の問題がとても浮き彫りになる衝動だった。
「ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「!!」
「生きるんだ生きるんだ生きるんだ生きるんだ生きるんだ生きるんだ生きるんだ、生きるんだよおおおおおおぉぉぉぉっ!!!弱くても生きれることを、生きることを生きることを生きることを生きることを生きることを生きることを!!!生きて欲しいことを知れ!!」
熱で身体が溶かされていることが痛みじゃない。そーゆうもがき方だった。彼はザラマに反論した、その様はまるでウェックルスに対して強く言ってのけた春藍に似ていた。
「お前には分からない!!!お前等には分からない!!!本当の弱者はぁっ……弱者は!!何もできない!!腕をどう動かせば良いか分からず、前へ出す足すらも分からない!!そんな苦しみを!!弱いままだと、!!!言っている奴は弱者じゃない!!I、違うんだ!!!違う!!!」
「弱いまま生きる幸せだと!!?笑わせんな!!」
「笑うんじゃない!!!ホントの弱者を笑うんじゃない!!!弱者になってみろ!!生きてみろ!!生きて言え!!!なぜ、這ってでも生きるか考えろ!!生きることには意味があるんだ!!命は喜びのためにあるはずだ!!!」
賭けにのめり込む事、快楽に飲まれるドラッグに包まれること。生まれつき何も持たない者、詰められない脳を持つ者、腕がない者、足がない者…………
「人を売り、捨てている奴が言える事じゃないだろ!!!」
「強者の落ちぶれる様だけに!!弱者は癒されることを知らないのか!!?弱者の気持ちを知れ!!!それしか見つからない!!理解できない!!」
「デタラメだ!!貴様はデタラメだ!!!デタラメの塊!!!」
「びぅうぅ、聞きたくない!!喋るなあぁぁ!!」
「お前の喜びってのは他人の不幸なのか!!自分を磨くことができないのか!!?」
「ぐぐうぐうぅぅぅっ」
短所、欠点は確かに存在する。何もできないというのも魅力かもしれない。
「その平凡や劣等を、跳ね除けようとする気持ちがないのなら!!!生きる意味はねぇっと、30年以上に続いた貴様、ガイゲルガー・フェルへの復讐を描いた俺が、早川仁治が言える!!間違っている!!生きることには意味はない!!!生きた中に意味がある!!」
「い、生きた中…………?」
ガイゲルガー・フェルには多くの矛盾が存在する。だけれど、ただ一筋に折れない物が折れかけようとした。
「弱いまま生きる事は大罪だ。死ぬ前に覚えとけ」
ザラマの言葉がやけに胸に届いた。おそらく、最後に出会う人間だからか。予感はしていたのだ。
「I、……今まで生きた」
生きて生きて生きて生きて生きて。多くの人間も生きて生きて生きて生きて生きて生きて。生きて…………。何かを残すような者がいたか?いや、それほどはいなかったはず。
そもそも。あれだ。生きることを続けて何がある?
グイイィッ
「!?な、なにをするんだ!小僧!!」
「もう、……もう大丈夫なんです。えっと……ザラマさん?」
殺す事に熱中していたザラマには気付かなかったため、春藍が彼を止めた。これはもう春藍でも修復ができないほどの状態だ。ネセリアもひとまず無事なところまで修復した。ガイゲルガー・フェルを修復するなんてしない。けれど、春藍は
「もう魔術を解いてください……もう彼は死にます…………」
「!………………」
「死ぬ……か?I、……………死ぬか」
ザラマは魔術を解いた。冷静になればもうこれは助からないと理解できたし、もう使えるほどの魔力は残っていない。
春藍はガイゲルガー・フェルに尋ねた………。
「あなたが、……マリンブルーにあったレースの主催者だったんですね」
「?…………マリンブルーの………、ああ、あれ……か」
「僕にもザラマさんにも理解はできない。きっと、あなたも理解や確固たる信念はないはず」
春藍は弱いからちょっとだけ、真実かどうか分からないけれどガイゲルガー・フェルの物語の結末を尋ねた。
「最初は弱者が変わるところを見たかったんじゃないですか?敗者がいなければ勝者はいません。死ぬ人も……います…………。だけど、弱い人に希望を与えたい!オカシな事だけど!その、今。ザラマさんがあなたの前に現れた事は、あなたの望みだったのかもしれません!!」
ガイゲルガー・フェルの心の深層。気の狂っている管理人ともめされているわけだが……。
「ME、…………殺す奴を、I、……望んでいた?………………分からん。分からん」
「うっ…………た、確かに変です」
「ただ……」
身に降りかかる不幸は笑えないな。つくづく、…………人間達も同じだったか。弱者のことをまだI、理解できなかった。なにか自分ができたことがない………。
「名は?」
「え?」
「名前を…………教えてくれ」
「は、春藍。……春藍慶介……です」
「……………」
弱くても生きられる世界を…………。悲しい運命に会う者達が少しでも、生きたいと思える。そんな世界があればと思っていた。
「優しいことが良ければな」
「!」
「全てが報われる気がしたんだ……」
最後の最後で。自分が弱者の狂気から解放させる人物に出会えたこと。
「I………人間に……………教えられるなんて、思わなかったぁ…………」
弱いまま、終わった命。不幸だと、本心はもっと生きたいと思っていた。だけど、そんなのが。こんなのが。続いても不幸なのだ。
弱くても、精一杯。たった一度しかない命は幸福に導こうとするべきだ。
「……死んだ…………みてぇだな」
「…………そうですね」
ガイゲルガー・フェル
管理人ナンバー:011
商業市場街"月本"にて、ザラマとの一騎打ちの末。敗北。そして、死亡。
そして、彼が用いた科学、"THE・BRAVEⅡ・DLD"によって管理人の死者数は199万人以上。生存は1%にも満たなかった。
多くの異世界と関わりを持ち、バランスを保っていた商業市場街"月本"は壊滅、及び異世界の運営を停止する始末となった。
今までの"黒リリスの一団"の被害報告の中でもっとも大きい事件となる。
多くの異世界は大きく変わり始める。