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RELIS  作者: 孤独
”商業市場街”月本編
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管理人シフト


"商業市場街"月本はとんでもない数の管理人が常勤している。フォーワールドのクロネアのような、その世界の代表者としての管理人がいる構成でもなく、桂やポセイドン、ウェックルスなどのような1人で世界を回す構成でもない。また、モームストやチヨダとも違う管理体制。



「管理人の数は2万人くらいかな?そんなもん?」

「バカ野郎。その百倍だろ。正確な数まででねぇーよ」



超、超、超がつくほどの管理人の数。およそ200万人体制。故にトップの管理人を決めるのは難しく、櫛永が月本というトップであるのも仮でしかない。流通と商業が交わるからこそ、莫大な人数と精密な動作を求められる。少しでも間違えれば異世界の影響も計り知れない。



「右を見ても、左を見ても…………」

「管理人がいっぱいですね」



春藍とネセリアは色々な商品やら素材やらと一緒に、それらを運んでいたり売り込んでいる管理人の姿も見ていた。とても忙しく見える。必死にお客様(異世界の担当者達)に売り込みをしていた。



「人間の人口はおよそ10万人。主にセールス業として生命活動をしているんだ」

「う、売り込みですか…………僕はそーゆうのがダメなんだよな」

「色んな異世界で自慢にできる物品でもね、ちゃんと紹介しないと利益にはならないんだよ。商品をいかに上手に宣伝するかが大切か、この世界にいれば分かるよ」



ここでの取引は1円や10円が1億や10億のような値段に切り替わるほどである。一件の営業実績がどれだけ重要で、異世界に強く影響するか分かる。無論、売り込みというのはあくまで使ってもらう、食べてもらうといった段階に行かせるための手段である。そこから継続して使ってもらうには作り出した者達の力である。より良い物やサービスを作らなければ結局、商品は長続きしないのだ。



「フォーワールドの科学は最高級品、ブランド物だからね。商品価値は相当高く設定しているんだ」

「それを聞くとなんだか嬉しいですね。特別扱いって」

「ブランド物って私としては面倒なんだよ。価格の調整がミスすれば世界のバランスが崩れるから、……稀に不良品のクレームも来ると余計にね(他の異世界の科学のクレームは日常だけど)」

「頂点があっての商業じゃなく、底辺と中層派があっての商業だからな」



世界の回り方の一部を見れて知る事ができた4人。災害よりも日常と生活を支えているのはゆるぎなく、安定した経済であった。この経済というのはみんなの平等で動くことができず、不平等をいかに平等らしく振舞うというものである。フォーワールドの科学を大量に生産し、全世界に撒くことはできる。だが、それを行えばフォーワールドの価値が下がり、その他の世界で生産されている科学は全て廃れるのだ。完璧というのは日常には存在してはいけない。

設備を少しずつ改良させ、時には壊れるようにしなければ生産は消えてしまう。消費がなければ生産はただの飽和でしかない。



「あ、これって新しい冷凍食品ですか?」

「そうだよ。料理の異世界モームストとかは多くて週1で新メニューを発表してくれるんだ。冷凍物やインスタント物は重宝されるんだよねー」

「これってゴールゥンでも食べた物よね?」

「そうだよ、ライラ。手軽でボリュームのある物が多いから、忙しい人達には人気だよ」



食品売り場は完全に出来た物と、その価格、調理時間、調理器具、材料、などなど。細かな情報を提示している。シェフではなく、一般の営業者がエプロンとコック帽を被って調理と宣伝を同時に行っている。かなり大変な作業だ。

営業者もそれなりの腕があるが、あくまで一般レベルよりちょい上程度。一流シェフしか作れない料理は日常で毎日食べることはない。凡人レベルで美味しくいただける物を紹介するには良い手法であった。

レシピ一つをとっても価格が設定されるほどであり、これらを創作権という名目で売り込むこともできるのだ。無論、どこかの異世界ではこれと似た料理も存在するかもしれない。しかし、それを訴える事はありえない。人間同士の繫がりをしっかりと消しているからだ。



「ラッシ。何を見ているんだ?」

「クロネアに土産を買って来いって言われてるんだよ、あのヤローは日本酒が好きなんだよ。良いのを薦めろ、櫛永」

「買い物でもおっぱじめるんですか?」

「今はやんねぇーよ!!あとでだ!!せっかく酒のコーナーに来たんだからよ!!」



商業市場街"月本"は管理人の数もさることながら、それらをちゃんと宣伝できるだけの施設の広さがある。大まかに12つの巨大なジャンルで別れている。


"食"、"職"、"遊"、"創"、"活"、"素"、"器"、"建"、"知"、"財"、"金"、"人"の12つのジャンル。


"食"とは、食品や食材の売り場である。(モームストなどはここに出店中)

"職"とは、新事業などを披露している場である。

"遊"とは、新しい遊具や最新の遊戯を作り出している場である。

"創"とは、音楽や小説、絵画などを出品している場である。(ゴールゥンなどはここに出店中)

"活"とは、生活用品などを提供している場である。(フォーワールドなどはここに出店中)

"素"とは、魔物や資源などを提供している場である。(チヨダなどはここに出店中)

"器"とは、人間などが備える武器や兵器の数々が並ぶ場である。

"建"とは、建物の建築などを売っている場である。

"知"とは、知識や技術を提供する場である。

"財"とは、歴史的にも貴重なデータや物を売っている場である。

"金"とは、文字通りでしかないが世界中の金の価値を調整している場所。(売り場ではない)

"人"とは、人材を売り捌いている場である。



春藍達がいる場所は"食"のジャンルのコーナーである。この大まかな場所でも、飲み物、お菓子、麺類、パン類などなど。細かに分類されている。



「次はどこに行ってみる?」

「"素"という場所が良いな」

「っていうか、なんで"食"に来たのよ…………ったく」



櫛永に案内され、資源が売られている"素"のコーナーへと向かう。移動手段は徒歩と運搬用トラックORバスとなっている。空間移動の類の設備もあるにはあるが、生命体の使用は禁止されており、重量にも制限がかけられているからだ。移動時間はおよそ2,3時間となっている。



「こーいったインフラはまだまだだな」

「インフラ?……ってなんですか?ライラ」


ラッシが言っているのを聞いたネセリアは、ラッシではなくライラに尋ねる。話が進みにくい。


「社会生活を支えるための整備や基盤づくりといったところよ、ちゃんとした道路じゃないと誰も通れないでしょう?」

「なーるほど」

「でー、インフラは上手くいかねぇーのか?」

「これでも快適になっている方だよ。あまりにも物流が多いもんだから、移動は大変なもんだよ」



渋滞が当たり前の状態が続いている。何よりも優先されるのも早さよりも、製品の保存状態である。爆破物の流通も当たり前に行われている。そんなもんがドカンっといってしまえば全滅である。最大級の商業世界は最大の火薬庫とも言えるのだ。

思った以上の時間が掛かり、4時間もバスに缶詰にされて辿り着いた"素"のコーナー。科学の材料となる資源もあれば、貴重な魔物の皮膚なども売られている。



「はいはーい!!今回は珍しい魔物の一頭、"叫竜"の鱗だぞーー!!」

「"ルイネス"の瞳も大量入荷しましたー!!魔法薬にどうですかーー!!」

「"P_rロトム"と"ソールド・アッシュ"を大量採掘保障!!3年契約でお願いします!!」



春藍達も旅の間にどこかで聞いたような魔物や資源の名前が飛び交っていた。



「ここはどこでもそうだが契約方式が当然だ。単品注文は高くつくよ」

「世界一つに影響がでるわけだしね……………狩人達の生計もここがあってこそね」



契約できた以上、狩人達はそれを知るか知らないに関わらず、ちゃんと魔物などを取らなければいけない。それが仕事となり、金や価値を生み出すのだ。

チヨダのように資源のレートを調整することで管理人達は上手に収集などができる。



「上手いこと回しているんだよ。経済ってのは深すぎる」



櫛永は冗談っぽい声で真実を言っていた。

彼はここでは管理人1人扱いであり、月本をしっかりと運営する存在。コタツに入っているだけに思われるが、しっかりとデータをとって上手にバランスを作っている者。ここに勤務する200万人以上の管理人を纏め、把握に務める1人であるのだから。




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