これは俺が俺であるため、ザラマがザラマになるためだ
カキリィッ…………カキリィッ…………
錘をつけられながらも、ここでは歩くことをしなければ生存できない。そう理解した少年と少女の記憶は鮮明に残る。おぞましいほど、憎らしいほどに。強烈なバックボーンを造り出し、大人から怪物になる機会を生み出す。そんな確率はおよそ万分の一、億分の一ほどかもしれない。人はそれを才能なり、運命なども位置づける。
カキリィッ…………カキリィッ…………
この世界がそうなっているのも、この生まれた瞬間がそうなっているのも。
誰もが理解できることだが、生まれるとはすでにそこで不平等が発生している事なのだ。早川仁治はそれを分かっていた。だが、分かっていただけだった。
ガジャアァァンッ
「数はこれで全部か?」
「支配人、その通りでございます」
「競走人間は全て取り揃えました。良質な人間から、不健康な人間まで幅広くまで完璧です」
「ふむ…………それはまた楽しみになるね」
一つの異世界のおよそ5分の1の人口がサンタさんのプレゼントのように配られることになった。この世界は人口が多く、……。職も、食品も、金も、何もかも足りなかった。増えすぎた人口に対応できずにとったここの管理人の案が、別の異世界への人口を移動させることであった。だが、その移動とは甘い言い方であり、本質的には売られるであった。
「おー……これはこれは。死にかけそうな者もいれば、はしゃげるガキも揃っているなんて気の利く良い世界だったのか。I、凄いとここの管理人を褒めるよ」
奴の表情は笑いもせず、泣きもせず。間抜けみたいな表情に加え、バカにしているかとも思える風体。従える人間の方がマシに思える。だが、そいつがリーダーであり、管理人であった事に早川仁治だけが気付けた。
囚われた檻を握り締めながら、目で殺してやると向けていた。だが、それにそいつは気付きもしない。人間など物のように考えていたのだろう。こいつから感じる、悪には
「殺してやる…………絶対に貴様を殺してやる…………」
歯をかみ締め、まだ弱い熱を周りに発生させた。
「ガイゲルガー・フェル…………貴様は俺が焼き殺す」
早川仁治。当時8歳。
スタイル:魔術
スタイル名:"リアルヒート"
すでに管理人対する憎悪は生まれる前からあった。生き伸びた延長上でも自分は恨みを抱く出来事に巻き込まれた。
売られた異世界に辿り着く前に家族とは散り散りにされ、早川仁治が辿り着いた世界では賭け事として扱われる者として10年以上も燻っていた。だが、管理人達への恨みと復讐の野心が凡才に等しい魂と肉体を良質に昇華させた。己の実力で辿り着いた世界で組織を作り出し、管理人に歯向かい戦う活動をまた10年以上も続ける。だが、管理人達にとっては小火と思っていたのだろう。大物はいつまで経っても現れることはなかった。自身の全盛期を過ぎて、早川仁治の復讐は終わってしまうのではないかと思われた矢先。
パイスーと再会し、若と出会う事ができた。
早川仁治。つまり、ザラマの命と行動は仲間に届いたメッセージとしてなり、復讐のチャンスをまだ残してくれた。
40を過ぎての復讐劇はついに……………
やってくるのである。人間の復讐が、ここから始まる。