そこがどうヤバイか
ポセイドンと色々と話し、ライラはこの世界の歴史を知れて少し嬉しそうになり、春藍は少しだけ自分が負けたように思い、ネセリアは珍しい異世界の話に感嘆としていた。最後にアレクは力仕事に少しイラついていてタバコを思いっきり吸っていた。どうやら、アーライアという世界もタバコを吸えるような世界ではないらしい。
「アレクくん、タバコを吸いすぎではないか?」
「関係ねぇーな。アーライアがそーゆう世界と知ったからにはな、この館でたっぷり吸わせてもらうぜ。二連続でタバコが吸えないとか聞いてないぜ」
「我は君とも話したかったが。……済まないね」
「気にすんな。また戻ってきた時には好きに話そうぜ。特にマリンブルー全体があんたの科学だというのには驚かされたからな」
もう準備は終わった。
移動した瞬間にはおそらく大変な騒ぎなるだろうと、ポセイドンは言う。一番活動時間が薄い時に移動する予定であり、春藍達は先に休んでいた。アレクだけはやっぱりタバコを、そして、ポセイドンは。
「ワインを飲むかね?」
「もらおうか……最後の一杯が」
トクトクトク
「管理人最高責任者のポセイドン様から注がれたもんだったら、自慢できそうだ。そうできねぇ」
「ふっ、だろうな……。君には期待しているよ」
「?」
「ライラには意志があり、君には彼女のない力を持っている。我も何度もアーライアの問題に務めたが、その内に諦めたのはやはり限度を悟ったからだ」
キーンッ
ポセイドンも何か溜めた物をアレクに吐いた。
「管理人は人間を管理するだけ。それだけよ。これから先は人間が歩くのだ。なぁ、アレクくんよ」
「………………………」
何を言っているかは分からないとは思わないアレク。そして、アレクもポセイドンも休みに入る。こうしてゆっくりできたのは、特別じゃないと思っていたのは今までだけだろう。
ただ眠るだけのことだった。
明日は何が起こるだろうか。いつもみたいな出来事なのかな?それとも普段行き慣れない場所に行く事になるのだろうか?
誰もが緊張とは無縁の眠りだった。幸せと感じる、休憩だった。
チュンチュンッ
少し朝と言うのには無理がある時間帯にみんなで起きて、簡単に寝汗を拭いたり歯を磨いたり、アレクはタバコを吸ってから、部屋に移動してポセイドンが用意したアーライア専用のスーツを着込んだ。スーツというよりもロボットスーツじゃんってネセリアがたまげてしまう。卵に足と腕が生えたようなちょっとダサいセンスだが、凄い安全性も感じる。四人はそれに乗り込んでみた。
「操作の方はアレクくんに一任している。複雑な科学で彼しか操作できない。ライラ達のは自動でアレクくんについていくように設定した」
アレクは昨日のうちに細かい操作までしっかりと覚えていた。春藍やネセリアでも操作できないほど、中はとんでもないセキュリティや見た事もない素材まで使われている事が分かる。
「アレクくん。昨日も言ったが、まずは"アーライア"の管理人の朴に会う事だ。奴に出会えれば少しは安全に過ごせるはずだ。我が作った装備とはいえ、そう長くは持たん」
「分かった」
この部屋は吉原と同じだ。まるごと、指定した世界へと移動できるようになっている。
「ようやく…………行ける」
ライラは小声で呟いた。どんなに、どんなに恐ろしくても行って、……終わりそうな物を止めたい。
「健闘を祈る」
ガチャアァァンッ
動き始め…………。最初の目的地へとようやく、辿り着く。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ガダアアァァァンンンッ
ここが"滅びた大地"、アーライア。"無限牢"の中にある最大級の異世界である。ただし、それはアーライアの世界が侵食のように他の世界に広がったからであり、本来は中規模程度の大きさなのだ。
見るからに毒々しい感じを放ちつつ色は雪のようになっていた。春藍達全員が軽く包まれていた。
ガジャアァァンッ
ロボットの足音であるため、非常に重たいを音を出す。どうやら大地はちゃんとしているようである。
「ここがアーライア…………」
「着いたんだ」
ライラ達は初めて緊張しながらその景色を見た。白い雪のような物が常に降ったり舞ったりする。それはもう埃のようであり、自分達はどうやらイビリィアのような森のような場所に転がり込んだようだ。
「あれは……木なのかな?」
「なんだろうな」
木に積もっている白いそれは……形をそのままに木をボロボロにしていった。葉も実もないのは分かるが、小枝すらもなく、積もって木が白く見えるんじゃなく。本当に白い色をした木だ。空も一面白世界。最悪の惨状と呼ばれる世界は一瞬、綺麗なところと錯覚する清潔な白色だらけだった。
「…………行くぞ」
「は、はい!」
アレクが先頭となって、アーライアの大地を歩いていく……。春藍もネセリアも、アレクも、もちろんライラも。静かにこの状況を目に焼き付けていた。
こんなにも何もかも白い世界に、全てが染まろうとしているのだろうか?