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RELIS  作者: 孤独
”遊園海底”マリンブルー編
64/634

グッドラックボート③

障害物や魔物、そして選手同士の争い。

200以上いたチームは今、たった30分で40にも満たなくなった。

レート10位以上で生き残っているのは2チーム。"サンタマリア総合船"と"ラプラス一族"。一番レートが低かったのは春藍達の"ピーチパラソル"であった。



「そろそろこれは"置き"にみなさんは行きますかね?」

「でしょうね。ある程度、上位のチームが搾れて来ましたから」



現在、先頭集団を走っているのは5チーム。その内の1チームが"ピーチパラソル"。その2キロほど後方に"サンタマリア総合船"、さらに3キロ離れたところに"ラプラス一族"がいた。

残りのチームは今、"インキィー・モーニィー"の手によって食い尽くされようとしたり、障害物によって足止めされていた。

実質7チームがここからは走破するように動きを見せたのは当然だ。(これを"置き"という)



「ゴールする人数が少ない方がもらえる賞金がデカイみたいね」

「へー」

「だから、私達は襲われないんですね」



前半は大きくリスクを払うが、後半は極めて慎重になるのがこのレースの特徴だ。ここで争い万が一敗れたら、せっかく生き延びた苦労がパー。それに終盤は障害物や魔物が同時に襲い掛かる事が多く、選手を攻撃する暇なんてくれない。

おそらく、最後の関門だ。ネセリアは前方を海中眼鏡で確認し、何かを発見した。



「あ、何かが見えてきますよ……なんでしょうか。…………クラゲかな?」



魔物の一種。"ARRAY_C"

"インキィー・モーニィー"ほどの強さはないが、とにかく大きな魔物である。透明な緑色の頭巾に何百本とある毒付きであり力のある触手。

そして、魔物と同時に襲い掛かる恐ろしい自然の恐怖。



「おや!ここの海域は確か!」

「はい、そうです。渦潮が頻繁に発生する地帯です。船の機動力が落ちます。最大速度で切り抜ければ危うい地帯であるが、前方には魔物もおりますので危険ですね」



淡白な解説で最後の危険地帯を教えてくれる解説者。ARRAY_Cはその大きさからか触手以外は動く事はあまりない。だが、ゴールに向かうにはこいつをどうにか突破しなければいけない。



「春藍、ネセリア。あたし達は待つわよ」

「う、うん」



ここでギャンブルをしているチームと、していないチームの差が出た。春藍達は渦潮に巻き込まれる直前で止まり、残りの四チームは少しでも速くクリアして、もらえる賞金をもっと増やそうと考えていた。いずれはゴールしなければいけない。この危険はやっぱり払わなければいけないのだから、躊躇せずに四チームは渦潮に足をとられないようにARRAY_Cに向かっていった。

春藍達はその様子を見届ける。四チームが同時に入っていき、渦潮に巻き込まれないように通る場所を正確に見抜くチームもいれば、いないチームもあった。


「あ、あ、あ、うわああぁぁぁ」

「吸い込まれるぞ!!」


機動力が衰えた船を見つけたARRAY_Cはゆっくりと数本の触手を向けて船を襲った。グシャリと船を潰してから口へ船ごと運んでしまう。トローイ動きであり、食事中は比較的大人しいため、この機会で一気に残った3チームは先へと進んだ。

が、ARRAY_Cがそこでまさかの追撃をし、もう1チームが触手に叩かれてまた沈没。コイツといい、"インキィー・モーニィー"といい出場者は魔物を倒すことができない状況だ。先ほど四チームがやったのはこのレースでのギャンブルらしい部分だろう。



「一位!!"トロワトル"!!二位!!"牧野水族館一同"!!」

「誰がこの展開を予想したかーーーー!!?」

「どちらもレートが100位前後ですね。極めて珍しい結果です」



1位と2位が決まった後。優勝候補大本命がようやくこの地点に辿り着く。"サンタマリア総合船"が止まっている"ピーチパラソル"を抜いて、ARRAY_Cと向かい合う。1位、2位は中小規模の船であるため上手くすり抜けられたが、大型船はどう考えても無理だろう。

元々すり抜けるというのは考えておらず、強力な"波動砲"で邪魔者を倒すのがやり方か。動きのノロいARRAY_Cにぶちかます主砲。




ゴウウウウゥゥゥゥゥゥゥンンッ



海域全体を大きく揺らす波動砲でARRAY_Cをさらに下へと打ち落として進んでいく。春藍達はそれを確認し、ついていくようにして進んでいく。下手なリスクも体力も削らずに走破。



「三位!!"サンタマリア総合船"!!四位!!"ピーチパラソル"!!」

「これで四チームが第二レースに参加ですか…………」



そして、最後の一隻となった"ラプラス一族"であったが。ゴール直前に立ちはだかった魔物。


【がうううぅっ】

「うあああぁぁっ、追いついてきたああぁぁっ」

「速く!!速くゴールするんだああぁ!!」


追いかけて来た"インキィー・モーニィー"の手によって船は無残にも壊され、人間達もバクバクと食われていった。この魔物の圧倒的な恐怖のパフォーマンスにギャンブラーのみならず、狂気的な面を持つファンも大興奮してしまった。

200チーム以上が参加し、走破できたのはわずか4チーム。人数はなんと58名。うち40名以上が"サンタマリア総合船"である。そして、走破できなかった者達の多くは魔物達に食い殺されたり、障害物で事故死になったり。生き残った者はわずかに12名。1割にも満たない数であった。




「いやったあああぁぁっ!!"ピーチパラソル"が走破してくれたーーー!!」

「いやぁ、思った以上の成績だ。とんでもないお金になった」



"ピーチパラソル"の偉い人達や"第三鬼丸造船所"の女提督などはスポンサーの役割でもあるため、春藍達が走破しただけで一生を暮らせる以上のお金を手にしてしまった。

これほど危険なレースになるとは思ってもみなかった。誰も予想していなかったのが、"サンタマリア総合船"と"ラプラス一族"が中盤で戦いを起こしたのがそもそもの原因か。



「ふーーぅ」

「なんとか、第一レースを突破だね」



ルール上では走破すればいいと書いてありながら、最下位でゴールした春藍達のタイムはなんと50分だ。1時間もないのだ。初参加者で死亡した者達に1時間ぐらいでゴールをしなければ殺されるというのをルールに示すべきだと思う。

この狂気染みているレースは優勝候補が鉄板とされるが、こんな大波乱だってあり、何よりも危険な一面を安全地帯から賭け事できるのは人間にとっては忘れられた本性をさらすには良い環境だ。

春藍達は30分の休憩をとってからすぐに第二レースの会場へと案内される。

その間にこのレースの大波乱っぷりが異世界中で混乱を起こしていた。優勝候補がたったの1チーム、それも3位という結果。大スポンサーには凄まじい罵声がその場で起こった。

万馬券に等しいこのレースの結末。当てた者は5人といないだろう。



「人間の暴動が起こっているようです、支配人…………」

「自分でやれっちゅーの。この明らかに度を越えているレース、自分で勝てるように工夫しなきゃ」

「しかし、支配人。結果としては少々…………」

「うん。I、KNOW。こちらも賭けに負けちゃってちょっと悔しいかな。ふふふ、勝ちは勝ちでも内容ではボロ負けだ、これ換金しといて」



ガイゲルガー・フェルはノミラスに買った券を金に変えるように指示してから


「心配はない。管理人にとってお金なんてなーんも価値はない。人を遊ぶためにある物なんだ。ME TOO、人で遊ぶためにやっている」



えげつない性格を持つガイゲルガー・フェル。一般的な管理とも違うし、ウェックルスのような支配を意識したモノとも違う。人間に娯楽を与え、死を与え、狂気を与え、金をばら撒き、活力を与え、絶望も送る。それらのど派手な行動を遊びと、まとめてしまうのは"管理人"の職務放棄に等しい。

だが、ほとんどの人間は彼に這い蹲る。

地面を舐めても良いくらいだ。大スポンサー達も彼を頼っている。



なぜなら、金という存在を大量に持っているからだ。



「さて、第二レースだ。ねぇ?」

「そうですね」




そして、第二レースである"アビスポロ・スライダー"が開催しようとしていた。とんでもない戦場が終わった後だというのに、ゆっくりしていられない。


「それでは第二レース"アビスポロ・スライダー"の競技に移ります!!」

「勝ち上がった4チームにはあと二回、頑張ってもらいたいですね!!では、ルールの方を」

「はい。"アビスポロ・スライダー"のルールです」



"アビスポロ・スライダー":

4つのウォータースライダーがあり、全てがさらに下にあるゴールに繋がっている。4つのスライダーはそれぞれ道が分かれているが、最終的に辿り着くゴールは同じである。この中でタイムが上位10チームの者達が次のレースの参加資格が与えられる。チーム参加の場合、このレースで一番最速を叩きだした者を基準とする。


:補足:

1.全チーム、全ての選手がゴールしなければいけない。1人でもゴールできなかったら例えレースの最速がチーム内にいても敗退である。

2.順番や選ぶ道などは自由で構わない。参加しているチームで決めてよし。ただし、制限時間は30分。ウォータースライダーに乗ったらおよそ5分でゴールにつく。(何も起きなければ)

3.ゴール地点の映像とスタート地点の映像はそれぞれの地点で見れるようになっている。




「以上ですね。この競技はシンプルそうで難しい競技なんですよ」

「ウォータースライダーに乗るだけの競技じゃないんですか?」

「いえいえ、それは違います。楽しそうに思えたら死ぬ思いをします。今回は四チームとはいえ、"サンタマリア総合船"の人数が多すぎますからね」

「おっと、そうこう言っているうちに始まります!!」



第二レース:"アビスポロ・スライダー"開始!!



全員が深海の洞窟に案内され、閉じ込められる状態になった4チーム。

スタート地点からゴール地点の映像が見える。そして、このゲームの目玉であるウォータースライダーが四つ、それぞれ確認できる。この洞窟内に58名の水着を着ている人間がおり、チームでそれぞれ固まっていた。



"ピーチパラソル"、春藍達、4名

"トロワトル"、6名

"牧野水族館一同"、6名

"サンタマリア総合船"、42名



「この競技はどうすればクリアできるんだろう…………」



春藍は疑問に思っていた。一見簡単そうな競技であるのだが。


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