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RELIS  作者: 孤独
”遊園海底”マリンブルー編
61/634

競技のレート

毎週行われる競技大会には観客達による賭けが盛んであった。それはマリンブルー内だけではなく、異世界にも広がるほどの"人間が大人になった証拠の遊び"であるからだ。

この賭けも運営料金となり、人々の愉しみであった。

春藍達が出会い、話しかけた青年もその仲間だ。二日前から始まる選手発表と同時にレートも公開されるのだ。



「おおぉっ!!"サンタマリア総合船"が今回は参戦か!!」

「前週優勝の"海王連合"もいるぞ!!今回も良い人材を雇ったんじゃねぇか!!」

「"ラプラス一族"だって負けてねぇーぞ!!第一レースのグッドラッグボートはこいつ等の得意分野だぜ!!」

「えーーっ!今回"ダネッサ"の野郎は参戦しねぇのかよ!!深海の番人のプレイを期待したのによーーー!」




続々と紹介される優勝候補達にギャンブラー達は盛り上がった。ギャンブラーの姿をしたファンもややおり、グッズを買い込んで応援する人もいる。ほとんどの者達は手堅く、大企業と言ってもいい大スポンサーに張っている。

いくつもレースの種類があるのだが、その中の"グッドラックボート"は単純にゴールをすればクリアという競技であるため、生き残りさえすれば何でもいいのだ。そのため巨大な資金源と資材、レースに適した人材が揃っている大スポンサー達が強いのは当然だった。

レース内容によってはタイムの勝負だったり、魔物の撃墜数だったり、目標物の奪取だったりするため、レース内容に極端に搾った小さなチームや個人は稀に大スポンサー達を倒す事ができるのだ。



「今回は何チームまで生き残るかねー?それも賭け内容だしよ」

「グッドラックボートっつー競技は毎回10チームくらいは生き残るからな」

「200以上のチームが参加するけどな」



優勝候補と呼ばれるところは何チームかあるが、……今までどのチームも最終レースまで生き残った者達はいない。ギャンブラー達の言う優勝というのはあくまで第二レースまでの総合成績での優勝を決めているのだ。



「まぁー、三チームは残党だろ!」

「残りの6,7チームがどれかって話だ。前回のグッドラックボートの成績のチェックしないとな」



ギャンブラーはマリンブルーだけではない。

この競技大会は別の異世界にも繋がっていて、放送されていたりする。向こうの異世界のギャンブラー達も参加するからこそ、不純であるが関わりを持つ事ができる。多くの異世界で消費と娯楽、活性を生み出すのだ。

マリンブルーとは違い、ちゃんとした空気がありゆったりとしていて寛げる空間。大きくて王様のような赤い椅子に寝転んで、テーブルに置かれているリモコンを握って操作しながら、大型ディスプレイに映るギャンブラーというお客様達の様子を観察している者がいた。



「うん。中々良い感じに揃って来たね、MY、思い通り」

「支配人様。今回は一体どのようなレースになるのですか?」

「わかんないし、聞いてない。ME、波乱にさせてくれるとは思うだろうが」



支配人にして、多くの異世界を常に回っている"管理人"。

その名はガイゲルガー・フェル。管理人ナンバー:011の者であった。桂のように管理人の中でも特別な存在の1人であり、管理している世界はなく、異世界に存在している人間を視察し、良い人材と判断すれば適した環境がある異世界へと運ぶという。人間スカウトと呼ばれている管理人ともう一つの役目がある。

体中を機械化しており、顔すらも人間のような物になっていない。ただの□で構成されている顔や体付きをしており、取り付けられている機械もどこか品性と高性能感がなく、絵が下手な子供が描きそうな風貌をしている。

そして、ガイゲルガー・フェルは部下に10名ほどの管理人を付けており、彼の仕事を補助しているに等しい。全員が人間型の執事の恰好をしている。




アンタチャマン

管理人ナンバー:309212

スタイル:科学

スタイル名:人間磁石

磁石型の科学。指定した能力を持っている人間を吸い寄せる力がある。



進藤

管理人ナンバー:311298

スタイル:科学

スタイル名:早見歴史表

巻物型の科学。訪れた異世界で起こった出来事を瞬時に巻物に記される。ただし、その異世界の管理人がちゃんとした歴史データを残していないと正確には出ない。



シンエ・ナゥ

管理人ナンバー:343321

スタイル:科学

スタイル名:情報付箋

付箋型の科学。名前を書いた付箋を対象物、もしくは対象者に貼る。貼られている間、その物の情報を取得できる。



J_DAT

管理人ナンバー:321249

スタイル:科学

スタイル名:Kドライブ・メガストア

倉庫型の科学。倉庫の中は共通の空間でできており、その異世界で建てた倉庫に入れた物を別の異世界からでも建てた倉庫から取り出す事ができる。倉庫には容量が決まっており、容量がオーバーする物は容れることができない。




7番

管理人ナンバー:354216

スタイル:科学

スタイル名:X==7

シミュレーターを行う事ができる科学。対象者にある七番目の才覚を知ることができる。それだけのためなのに科学の形はゴツイ蛹のようなカプセルをしている。Kドライブ・メガストアに入れられている。




アラム・マァード

管理人ナンバー:363812

スタイル:科学

スタイル名:ナンデスッテ

彼が作り出すパンが科学。食べた者はその味に驚かされる。メンバーの食事係を担当。生まれてからパンを作って、ずっと食べている。マーガリンはありだが、ジャムは邪道。



フレーフレー&アゲイン

管理人ナンバー:367281 +367282

スタイル:科学

スタイル名:ライフDAYS(2人のバンド名でもある)

2人は繋がれている管理人である。お互いに自我を持っている。ちなみに兄弟。マイクとギターの科学を同時に使用し、彼等が歌う曲を聴いた者は強く励まされる。ただし、どうしようもない場合では激しく気落ちしてしまう。




ノミラス

管理人ナンバー:333543

スタイル:科学

スタイル名:リサイクルパーツ

体と科学が一体化している型。自分の体の一部を犠牲にし、対象者はノミラスが犠牲にした同じ部分を補う事ができる。ただし、対象者が持っていた身体能力や性能までは再現されない。あくまで応急処置である。



環遠

管理人ナンバー:358213

スタイル:科学

スタイル名:人材難民センター

役所型の科学。利用できるのは管理人達だけである。必要な人材を早急にリストアップする事ができる科学。この科学は月本にあり、普段の環遠は何の能力も持たない。




「今回もより良いレースを繰り広げて欲しい」


ガイゲルガー・フェルは"お主様"ではない。

だが、このマリンブルーなどの賭博場を運営している最大の責任者でもある。人間と魔物、資源、そして、お金、最後に時間。

管理人は人間ではないし、さらに人型の姿とも動物の姿もしていないガイゲルガー・フェルには何もかもどうでも良いような態度。ソファに横たわって今回のレース前の盛り上がりを淡々と見ている。


「生命とは面倒だなー。こうやって消費を与えんと何も生めんのだ」


どんな存在であれ、労働源や頭数とか。まともじゃないような言葉すらガイゲルガー・フェルにはない。こいつにとっては生き物がゴミに見えてしょうがない。

事実、人間などはその愚かさ故に滅亡の危機になった事を知っているために、こんな生物を管理してなんの得があるのやら。世界という歯車というのも、管理人が作ったようで人間が作っているとも思える。


世界は雑魚(人間)に興味はないと思う。ガイゲルガー・フェルの胸中である。


「支配人はどのチームにお賭けなさったのです?」

「"サンタマリア総合船"I、投資したチームだ。今回も良き船員を送ったんだ。借金に困っている人だからこそ、土壇場には強いだろう」


ただし、世界は勇気(人間)に興味がある。ガイゲルガー・フェルの胸中である。


その勇気はどのようにして見られるか?生と死、夢と現実。強烈な対義語があってこそ、起こり得る現象だけがガイゲルガー・フェルの管理意欲を増させ、勇気の風を感じる。

人間の努力が見たいんじゃない。人間が無謀に突撃するという結果だけを見たい。全てを投げ捨てて向かう顔、事情、応援する者達。最高じゃん。最高に良いじゃないか。

そして、ダメでも良いじゃないと言ってやりたい。(ゲス顔)

ガイゲルガー・フェルはこのような理不尽極まりない賭け事が大好きなのだ。正確には見ている方が好きだ。だが、自分もやる。その賭け事に適した人材を紹介する彼だって、ギャンブラーの一種であるのだ。活躍すると期待を込めて紹介する新聞記者のような心境だ。



「187世界と通信が完了しました」

「380万人以上のギャンブラーがチップ(賭け金)を投入しております!」

「よしよし」

「2日後には1000万人を超える規模が予想されます」



ギャンブラーはこの命懸けのレースに出ている選手達にお金や権力、人材を投資していた。異世界で起こっている出来事、ガイゲルガー・フェルでも完全な勝者を出すことができないレースだ。前評判だけでなく、戦歴や出場選手もしっかりと把握してようやく当てられる賭けだ。

選手達は知らないし、多くのギャンブラーもこれほどとは知らないだろう。毎回、多くの異世界を巻き込んでいるほどの賭け事だったとは。



"グッドラックレース"のレート


1位、"サンタマリア総合船" 389万ポイント

2位、"ラプラス一族" 201万ポイント

3位、"海王連合" 187万ポイント

179位、"ピーチパラソル" 102ポイント (同順3チーム)






この二日前のレートは当日までおそらく変わらないと言われる。当日出場というのもあるのだが、大抵そのような連中は即死であるからだ。だが、稀にレースで好記録を叩きだしていたチームが参戦するとなれば多少、順位がずれる。

超大物参加が遅れると、彼等は瞬く間に大穴かつ大本命にまで登りつめるため、選手側にとっては一攫千金だったりする。とはいえ、今回はガイゲルガー・フェルが推すほどの大スポンサーのチーム。"サンタマリア総合船"が参加するためにまだ参加を決めていない大物チームはいないと予想されていた。レートでも分かる通り、抜きん出ているチームなのだ。

そのレートが発表されている会場にアレクは足を運んでいた。



「分かりやすくて良いな」



このレートは初めてレースに参加する者達や賭けを行う者達にも分かりやすい。アレクのやっている事をマネする者も多くいることだろう。期待を寄せる優勝候補達をいきなり潰しに行くチーム。

レートは大きく下げられており、ただでさえゴールすれば一攫千金。その上。優勝候補がいないままゴールしてしまえば一攫千金どころの騒ぎではなくなる。それに賭けているギャンブラーもそうだ。

アレクはしっかりとレートの高い者達を記録していた。

ゴールするのが目的とはいえ、相手をゴールさせない事もこの競技の醍醐味なのだ。優勝候補だって周りの雑魚を蹴散らし、第2レースで有利な展開に持ち込みたいところである。





一方、春藍とネセリアは"ピーチパラソル"の裏庭で作業を行っていた。


「アレクさんやライラがこの海中じゃ力を発揮できないんだよね」

「うん」


アレクに頼っていた自分達だ。とても不思議な気分である。それでも、いつも後ろでしっかりと支えてくれるアレクと共にいるのだ。そして、ライラだって付いている。2人同時に大きな期待をされた春藍とネセリア。特にネセリアはかなり緊張していた。


「ふ、2人の期待に応えられるかな?」

「やれるだけやってみるんだよ」


まずはネセリアの"掃除媒体"を修繕する。

海中でもちゃんと使用可能になれば、やりにくい海中ではない"掃除媒体"の中で改造を行うことができる。春藍の"創意工夫"と義足を海中でもちゃんと動作するようにし、それから波動砲などの武器を中心に改造する。

そして、マリンブルーの船道と呼ばれる、船を走らせるところを女提督と一緒に操作を覚えるライラ。これの操作は誰でもできるが、レース中はとにかく何が起きるか分からない。操作ができるとはいえ、いかにちゃんと対応ができるかが問われる。春藍やネセリアにはまだ状況を読み取って選択するまでの対応はできないだろう。

操作は苦手が、適切な行動をとれるライラが船の操縦士という役目になった。



「それ!」



水中を進む船(潜水艦ではない)はライラにとっては初めて乗る物。感覚がおかしくなりそうだ。緊急回避用のボタンを押して、スクリューが強回転を起こし、後方につけられている加速用の波動砲も発射され一気に加速していく。



「レースには魔物や同じ競技相手からの攻撃が頻繁に向けられるからね。"鬼女丸"の耐久力はかなりの物だけど、エンジンやスクリューを潰されたらまずレースは終わり」

「春藍やアレクならレース中に直せそうなんだけどねー」

「動きが止まった船は一網打尽にされるんだよ!波動砲は極力避けなさい!!」

「分かったわ!!」



まずは第一レース。ただ走破すれば良い、グッドラックボートの攻略をひたすらに練習なり、作戦なり、"科学"の強化を練っている四人であるが。

"お主様"に会うには第二レースの"アビスポロ・スライダー"と最終レースの種目不明をクリアしなきゃいけない。ライラとしたら2番目の競技はルールこそ分かるが、もっと詳しく知りたい。最終レースについてもできるだけ情報が欲しかった。

この競技には気がかりもあるからだ。



そして四人は、"ピーチパラソル"など3つのスポンサーと共に二日間。対策と特訓を行った。たった二日であるが、第一レースについては四人共できる範囲の万全は整った。



第一レース:グッドラックボート。

チーム名:ピーチパラソル

参加者:春藍慶介、ライラ・ドロシー、アレク・サンドリュー、伊達・ネセリア・ヒルマン

使用するボート:鬼女丸

四人が使用や操作ができる科学とか武器:

春藍、"創意工夫"。ネセリア、"掃除媒体"。ネセリア、"リアからもらった拳銃。改造済み"。全員、"春藍作、波動砲"。全員、"鬼女丸"。全員、"ネセリア作、海中眼鏡"




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