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RELIS  作者: 孤独
災害編
604/634

廃忘


まだ決着はついていない。それでも


「私は待つだけ」


夜弧は言葉通り。

この状況の廃忘はいもうを、どれだけの人に行なえばいいのだろう。まぁ、逆だろうと思う。

何人しないで済むであろうか。



「記憶ってかなり複雑なだけに、1人にどれだけの時間がかかる?」

「大部分の記憶であるため、やってみないと分かりません。個人差があるし、なんとも言えないけど。完全とするなら3時間かな」

「じゃー、私達はまずされてないって事ね」

「失礼ですね、ライラ。してませんよ」



ライラの"アブソピサロ"は、恐ろしく強力で、単純に戦うってレベルは最高クラスに達する。

一方で夜弧の"トレパネーション"は、戦うというよりは搦め手としては、際立って有能。洗脳に記憶操作、一時的ながら肉体の変貌、再生など。"魔術"としては珍しい、接近のみ、1人のみというリスクではあるが、人に対しての応用範囲は相当なものである。



「完全って言ってたけど」

「記憶だけです。肉体に染み付いた経験まで除去できません」



説明は以上ってとこで、良いだろう。



「住民の人数は、143名。最短で突破するなら、1時間。5日ってところ」

「夜弧の消耗を考えれば、1週間?」



時間の話し。


そして、総意の話し。


「夜弧ちゃんの力を借りるわけだが、やはり時間が足りないのである。申し訳ないが、早急な判断を願いたい。覚悟を決めたものからやってもらいたいのである」


ヒュールの対応は迅速であった。誰もが反対していたわけではなく、また。数多く。

この場を忘れることを望む者は多くいた。リスクすら聞かず、この状況から逃げたい衝動もあった。

10人できれば、20人。30人と。


時間が足りないという言葉が響いて、記憶操作を受ける住民達は増えていく方だった。


しょぼい扇動行為であったが、十分なものだった。

確かに自ら動いたという事実は確固たるもの。



「楽にしていてください。記憶操作が終わった後は、4,5時間は眠っていますよ」



夜弧は1人ずつ。この状況の記憶操作を行なっている。

完全に3時間。1時間という査定は、記憶操作で誤魔化しきれる程度の時間稼ぎになること。


「記憶操作が終わった人に記憶の確認はいけませんよ?これ絶対に、守ってください」

「わ、分かりました」


一時的なショックと似ている。振り返るという行為をされたら、頭の中に無くなっていても、肉体に染み付いた記憶が逆流し、恐怖が脳に妄想を与えて、混乱を生んでしまう。

人々との協力が必要であった。



ズズズズズズズ



そして、始まる人類達への記憶操作。

決断だけでなく、夜弧の力も問われるところであった。



「……………」

「……………」



これほどの人数を継続して、難度の高い記憶の改竄をやること。

何かと戦うというものではなく、やり遂げる意味。それでも、夜弧に掛かった力の全ては途方もないこと。涼しい顔をしていても、それくらいは感じ取れるライラが傍にいること。


「1人で平気」

「ダーメッ。いざって時、あたしの魔力。吸収しなさい」

「……おっと、不注意でライラの記憶を弄っちゃうかも~」

「それは許さない」



でも、お互いなんだろうな。

夜弧はライラを少し羨んでいる形で言っていた。


「ライラは強い上に、強くなれたから良いよね」


最初に出会ったという意味では、途方もない差があったのは歴然としていた。

また出会った時。少しは近づいて、力にもなれたものがあった。でも、彼女はいくつもの死線を潜り抜けて、確かに人類の希望とも言える戦力に辿り着いたこと。


「私もみんなに追いつかなきゃいけない」


搦め手を基本とする能力であるが故、強さという点では、生き残る6人の中で一番脆いとされる。


「悪い?」

「いーや、夜弧もそーいう認識があるって事。あなたはどちらかというと、三矢みたいな感じだったから」

「あんなのと一緒にしないでください。向上心の欠片もない観測者と、ね」

「ネセリアだから、構わないって思う」

「……良くないんです。ネセリアの魂を引き継いでいる。でも、今は夜弧です」



死線や苦境を乗り越えた時、それは自分の進化に繫がる。

"魔術"の特性とも言えること。しかし、できなければ……


「死ぬ事はありません」


戦いってわけじゃないし、夜弧が失ってしまうことはない。ただ


「退く事もできません」



私の役目はただ、春藍様達を未来にお連れする事だけじゃありません。まだそれは序章に過ぎないこと。本当に、本当に……戦って救わねばならない人が、そこで待っている。

今の私ではやはり、足元にも及ばない。


藺様を救うために、まずは超えねばならない危機の一つ。私はやり遂げなければ、救えないこと。




ズズズズズズズ



心中を察する事などできない。それほどの決意をなぜ持つのか、ライラにも分からない。

分からない事だっていい事だ。ここにいる自分の力を与えてもらった者への、感謝のため。願いのためにある。



大勢にして、強力。藺兆紗の"黄金人海ゴールデン・カンパニー"という性能スペックは、夜弧の”トレパネーション”を大きく上回っている。ちょっとした差異を語れば、洗脳や服従だけでなく、記憶操作、改竄、肉体の遺伝子操作を可能とする"トレパネーション"。わずかながら精神操作の質が劣るものの、絶対的な量と範囲を誇る洗脳、服従、量産の”黄金人海”といったところか。

単純に戦うというやり方ならば、明らかに”黄金人海ゴールデン・カンパニー”が上回る。

さらにその能力を宿し、現在は裏切られたとはいえ、制御はできている藺兆紗の持つ。単純な魔力の総量。クォルヴァともタメを張るほどの、内包する量は絶大。

それでも、夜弧が藺兆紗をその時。上回るためには自分と、”トレパネーション”しかなかった。上を行かねばならないことだった。



「っ……」



存在そのものを消し去る事ができないけれど。

”SDQ”、藺様。あらゆる事が起き、人に生まれた不安のその全てを、私が記憶の上で消し去る。

全員全部を成せたその時、



あなたを救える、そんな気がします。藺様。




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